第9話 完璧では無いんです。

 目覚ましの音が鳴る、目覚ましを止める。寝る。



「…っは!?今何時だ!?」

 時刻を確認する。7時33分

「……ギリセーフ」

 今から支度すれば十分間に合うな。1人暮らしだとこの辺が油断出来ないよな。


「朝飯は…うん。流石ゆき。ありがたや」

 ちゃんと冷蔵庫に入ってました。


 

 そして少し余裕を持って登校する。たまにはギリギリじゃないのも良いよな。そうして俺は珍しく早めに教室に着いたのだ。


「……」

「……」

「……」

 ゆきと高瀬が珍獣でも見る様な目で見てくる。お兄ちゃん泣いちゃうよ?


「あ、まさ君。おはよう。今日は珍しく早いね」

「はよ~す。マジで珍しいね。今日は雪が降るかな?」

「おはよう。ゆき、高瀬。俺だってたまには早く来るさ。後今は春だ。せめて雨にしろ」


 そうして俺は自分の席に向かう。そしてしばらくして、


「おはよ~う。ってマサが俺より早く来てる!?」

「うるせぇ」

 司が教室に入るなり、俺を見つけ驚く。あと、時計を確認すんな。壊れてねぇよ。



「二度寝、三度寝、四度寝が当たり前のマサが…」

「たまには俺だって三度寝しないで起きるさ。」

「二度寝はしたんだな?」

「…」

 ノーコメントで。




 そして俺が既に自分の席に座っていると、いつも俺の席を占領する司ハーレム供が俺の場所を使えない。うん、平和だ。






 そんなこんなで体育の授業です。サッカーです。司がボールを持つ度にキャーキャー黄色い声援がうるさいです。

 司は運動神経も良いからな。サッカー部の奴より上手いし。


 そして司のワンマンプレーになりがちだ。チームも司と組めば勝ち確だと言われている。

 司は相手をごぼう抜きし、敵ゴールまで迫る、そして更に増す黄色い声援。


「ノリ…左だ。」

 俺はキーパーに指示をだす。


「おう。」

 ノリと呼ばれた体格のふくよかな男。渡辺成安わたなべのりやすが返事をする。その直後、司の放ったシュートはゴールの左側に来て、ノリが弾く。

 来る場所が解っているなら弾く事は出来る。



「だぁー正面かよ!?」

 司は悔しそうにし、女子達の露骨なため息が聞こえる。


「正樹の言った場所にマジで来るんだな。」

「ああ、それはタカが右を潰して、俺が右を意識してる動きをしたからな。なら司は反対の左を狙うって訳だ。」

 タカこと早川孝之はやかわたかゆきは背が小さいがすばしっこい奴だ


「さて、司ばかりキャーキャー言われてるのも何かムカつくからあいつの活躍を潰すか。」

「「おう」」

 勝ち負けよりも司の活躍を阻止する3人。




 そして司がまたボールを持ち突っ込んでくるが、

「はい、ご苦労さん」

「な!?」

 司はあっさりと俺にボールを奪われる。そして俺はボールを蹴りあげ、一気に相手のコート迄行く。

 

「ボールを寄越せ!!」

「おう!」

 チームメイトからボールを受け取り、俺はそのまま相手をごぼう抜きし、ゴール前まで行き、シュートを決めにいく。




 ボールはゴールネットの遥か上を飛んで行った。



「……」

「「「「「…………」」」」」



「「パチパチ」」

 ゆきと高瀬の拍手がやたら大きく聞こえた…



「正樹…お前はDFをやってろ」

「…おう」

 俺はトボトボとゴール前まで帰っていく。



 その後も

「はい、どうも」

「あざーす」

「ほいさ」

 と、悉く司からボールを奪う。




「「「「やっぱりあいつすげな。シュートはクソだけど」」」」

 

 うるせぇやい!!だが、司の活躍は悉く俺が潰したぞ!



まさきくんは【ノーコンのマサ】のあだ名を獲得した。


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