第7話 男の1人暮らしってこんなもんだろ?

 親父と別れ、帰路につく。

「ゆきはこのまま帰るか?」

「1度お兄ちゃんの家に行っていいかな?」

「ん?良いぞ…散らかってるけど」

 そうしてゆきと2人で俺のボロ屋(失礼)に向かう。


「だと思った。お母さんがどうせ散らかってるだろうし、インスタントばかりだろうから見てきてって。」

「全く以てその通りです。」

 バレてーら。


「なら、買い物して行くか?」

「うん」





 ゆきと一緒に近くのスーパーに買い物に行く。


「ゆき、これを…」

「駄目」

「…これ…」

「駄目」

「こ「駄目」」

「……はい」

 カップ麺、スナック菓子、弁当…等々を悉く断られる。


「お兄ちゃん…?」

 ゆきがジト目で見てくる。我が妹ながらそんな表情も可愛いな。


「はぁ…駄目だよ?インスタントやお菓子ばかり食べてたら」

「すまん」

 男が1人暮らしすると、注意する人が居ないから好き勝手飲み食いするんだよな。俺だけ?


「ちゃんと野菜も食べなさい」

「野菜ジュースは常備してるぞ?」

「置いとくだけで飲まなきゃ意味ないよ?」

「ですよねー」


「全く…お兄ちゃんは…よくお母さんお兄ちゃんが1人暮らしするの許可したね」

「俺も不思議だよ」

 いくら年頃とはいえ、部屋だって別でちゃんとプライベートは確保してる。母さんが駄目と言えば俺は1人暮らしは出来なかっただろう。


『1人暮らし?別にいいわよ?』

 と、あっさり許可された。まぁ近場でという条件は合ったが。

 


 いや、母さんの事だ、家にゆきが居るから別にお前は居なくて良いぞって…いや、流石に無いよな?



 …あれ?否定出来ない?うん、この考えはもう止めよう。これ以上は目から汗が…



 実際は正樹なら1人暮らしでも大丈夫という信頼があると同時に絶対に不摂生な生活をするだろうという確信があった為、近場を条件にし、さつきと雪が頻繁に様子を見に行っているのだ。

 信頼はされているが信用(生活面)はされていない正樹であった。




「そういえば、冷蔵庫の中は?冷凍は残ってる?」

「空だ。だからインスタントを…「お・に・い・ちゃ・ん?」…ごめんなさい。」


 ゆきが…笑顔なのに怖いです。目が笑ってません。


「はぁ…仕方ないなぁ」

 そうしてゆきは必要な物をカゴに入れていく。本当、ゆきには頭が上がらないよ。



「とりあえず今日は手軽な物にするから」

「はい。お任せします。」





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