第6話 現在の父親との関係

「とりあえず二人とも座りなさい」

「はい」

「ああ」

 俺達は席に座る。


「先ずは何か頼もうか。雪ちゃんも好きな物を頼んでね。」

「ありがとうございます。お父さん」

「おい」

 そこで俺は親父に声をかける。


「どうした?正樹、お前も頼むなら頼め。自腹だが」

「俺とゆきの扱いに差がありすぎだろ!」

 親父は俺に好きな物を頼め何て言わない。しかも俺には奢らない。

 だが、ゆきには奢る。ゆきには1番高いケーキやパフェでも喜んで奢る。俺にはジュース1杯も奢らないのに。


「それがどうした?可愛い娘と可愛くない不良息子なら可愛い娘を優先するだろ?」

「畜生…否定できねぇ…」

「あはは…」

 親父はさも当然だろって顔で言い、ゆきは苦笑いをしていた。

 ああ、俺も親父の立場ならそうするよ。生意気な息子よりも関わりが薄くても父と呼ぶ可愛い娘を贔屓するよ。


「…冗談だよ。正樹、お前も好きな物を頼め。今日は私が奢るよ。」

「マジ?サンキュー」

「切り替え早いな…お前が頼まないと雪ちゃんが遠慮するだろ?仕方ないから奢ってやる」

「デスヨネー」

 いや、知ってたけど。


「よし。ゆき、季節の限定デラックスパフェを頼め。俺は季節の果物のロイヤルタルトを頼む。」

「え、でも…」

 ここぞとばかりに高い物を頼む。ゆきよ…お前が先ほどからそのパフェの写真をチラチラ見ていたのは知っているんだぞ。


「おい、お前は遠慮って言葉を知らないのか?」


「まさか男に二言はないよな?親父?」

「ぐっ…」

 それに遠慮しているがゆきの目が頼んでいいの?と訴えている。


「こんな高いもん俺達にはこんな機会じゃないと食えないからな。」

「はぁ…わかったよ。頼んで良いぞ。」

「よし!」

 ゆき1人が高いパフェを頼むと遠慮するだろうからな。俺も高い物を頼めばゆきも遠慮無く頼めるだろう。





 こんな感じで俺達の関係は悪く無い。母さんは許したが、親父がけじめだと言って別居している。


「正樹これが来月分だ。確かに渡したぞ?」

「ああ、確かに」

 俺は親父から来月分の生活費を貰う。本来なら振り込めば済む話しなのだが…まぁ親父と会う口実だ。親父も俺達に会う為の口実にしている。


「さつきさんは元気かい?」

「ああ、昨日もゆきと楽しそうにご飯作ってたぞ?テレビ電話を掛けて来た癖に俺を放置して。」

「はは、うん。それなら良かったよ。」

 母さんはゆきがウチに来てとても喜んでいた。やはり娘が欲しかったのかゆきを自分の子供(俺)以上に可愛いがっている。


「いい加減母さんに会えば良いのに…」

「…それはまだ出来ない。私のけじめだ。さつきさんが許しても私自身が許してない。だから…まだ暫くは会うつもりは無い。」

 は…か。


「相変わらず自分勝手だな。」

「ああ。すまないな。」



 そうして月に1度の親父とのやりとりは終わった。




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