大峰山の修験者

 幼少期、大峰山に登ったことがある、らしい。

 正直3歳頃の話なので記憶が曖昧だ。

 家族と、仲の良い親戚の二家族で行ったらしいが、大峰山は初心者が気軽に登れるような山ではない。

 役行者が開山した、古くからの修験道だ。

 しっかりと大峰山脈を踏破しようと思えばかなり大変で、幼児を含むような家族で気軽にハイキングという山ではない。

 なので三家族の内の大半は麓の洞川温泉でゆっくりし、成人男性と希望した子供だけが、稲村ヶ岳まで行くことになりました。

 ……のはずが、なぜか3歳の私も父の背中に負われて登山しました。

 どんな経緯があったのかは今となっては誰も記憶してません。

 私のかすかな記憶に残っているのも、父と背中合わせになるように背負子に座らされて見た、山が延々と連なっている様子くらいです。

 山の光景が3歳の脳に刻まれているだけでもすごいと思うのですが、ちょっと気になることもあります。

 父たちが黙々と登山している中、背中の私が何度か、誰かに向かって挨拶をし、手を振っていたことがあった、と。

 あまり人見知りをしない私は初対面の人にも元気に挨拶のできる良い子だったのですが、父たちが言うには、あの日、登山道ですれ違った人は数人で、私の挨拶はその倍以上だったそうです。

 父の後ろについていた従兄弟が、一度、私が誰もいない方向に手を振っているのを見て、誰に手を振っているのかと尋ねると

「白いおじちゃん」

と答えたといいます。

 私の記憶にない白いおじちゃんは正確にはどんな姿をしていたのか。

 大峰山脈という土地柄、おそらくはかつて修験道で修行していた方達が今も修行されていたり?と推察するのですが、私の残念な脳みそでは思い出せそうにありません。



■吉野郡 大峰山(稲村ヶ岳)

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