#265 装備の検証
「そうきたかぁ……!!」
【星穿弓オリオン】の武器詳細を見て、思わず頭を抱える。
この事態を想定していなかった訳じゃ無い。
元より俺達が挑んでいた【二つ名レイド】はエンドコンテンツ。言わばこのゲームを極めた末の最終到達点な訳であって。
そのコンテンツの攻略報酬ともなれば、そりゃあクリア出来るレベルでないと装備出来ない物が貰えるのが当然な訳で。
頭の中で整理を付けて冷静になると、背負うクリスタライズに向けて喋りかける。
「良かったなリヴァイア、お前の倉庫番は当分先みたいだぞ」
『だから我はもうリヴァイアでは無いと言っておろう。既に魂は星の海へと還り、新しく転生した魂がこの武器の記憶と混ざり合ってからこの武器に宿ったのであって……というか倉庫番とはなんだ!?』
「おお、ナイスノリツッコミ。意外とそういうノリも行けるんだなお前。いやさ、いずれはお前も乗り換えられる定めって訳よ」
『抜かせ、それはまだ我が主が我を扱いきれていない証拠でもあろう。【
「ソウ……なんて?」
おいおい、なんかまた新しい単語が出てきたぞ。
武器の成長進化──【
『貴様が相対した彼奴……アルバートが振るっていた武器も、元を正せばただの鉄の大剣であった。だが、あれも『真紅の巨獣』と呼ばれた獣を斬り伏せた際に、その魂を刃が取り込んだ結果【
「ほーん……つまり、いずれはお前もオリオンを超える武器になるかもしれないって事か?」
『我が主の成長次第ではあるがな』
へぇ、言ってくれるじゃねえか。まあディアライズ時代からの相棒な訳だし、そう簡単に手放すつもりは無かったんだがな。
『そも、我が主が扱えず悩んでいるその武器も、そもそもの扱い方が特殊ではあるがな』
「特殊?」
『一度出してみろ、それですぐに分かる事だ』
リヴァイアに言われた通り、ウインドウを操作して【星穿弓オリオン】を物質化してみる。
すると────。
ドズゥン!!!
「うおっ!?」
慌てて後ろを見ると、
それを見て思わず顔を引き攣らせると、クリスタライズに問いかける。
「………………弓?」
『そうだぞ?』
「………………これ、どうやって射撃するんだ?」
『だから言っておろう、
特殊にも程があるんじゃねえかな。もしかしてあれか? STRとかVITとか上げると身体が巨大化でもするのか? そうじゃないと矢すら放てないだろこれ……。
「あ、使えるようになったら武器そのもののサイズが縮んだりするのか!」
『そんな訳なかろう』
いやますます使い方が分からなくなってきたんだが……? サイズが変わらないって事は、もしかして射撃するんじゃなくて武器そのものでぶん殴るのが正解って事か? やはり鏃を持って敵をぶん殴る事こそが正義だった訳だった訳ね……完全に理解した。
『何やらくだらない事を考えているようだが……その時が来れば使い方も分かろう』
「くだらない言うな」
まあいい。どうせ今は【星穿弓オリオン】を装備出来ないんだし、今悩む必要は無いか。
取り敢えず武器は装備不可、もしかしたら防具とかも装備出来ないかもしれないけど、一応確認だけしておこうか……お?
「ん? あれ? もしかして防具とかアクセサリーは装備出来る感じ?」
ずっこける準備は出来ていたのだが、俺の予想に反して手に入れた防具やアクセサリーは普通に装備する事が出来るようだ。そう言う事なら、取り敢えず一つずつ確認していくか。
───
【星屑の指輪】耐久度∞
星海から零れ落ちた星屑が、数多の旅路を経て惑星へと流れ着く際に、自然形成された指輪。その輝きは身に着けた者に途方もない幸運を齎し、絶えず活力を与え続けるとされている。
LUC+200 【自動MP継続回復(夜間限定)】【自動HP継続回復(昼間限定)】【戦闘中、一度のみド根性確定発動】
───
「ぶっっっ!?」
ぶっ壊れじゃねーか!? なんだこのトンデモアクセサリー!? 昼間でも夜間でも腐らない性能してるし、果てにはド根性確定発動!? おいおいおい、これは流石にやってるだろ……!(褒め言葉)
「PVP・PVE両方共最強クラスの性能じゃないかこのアクセサリー……ん、でも確かこのアクセって……」
あの【二つ名レイド】参加メンバー全員にこのアクセが配られていたような。……うん、忘れておこう、今度の大会であいつら全員がこのアクセサリーを装備しているってのは考えたくないな……。
「ただでさえタフなのに一発で仕留めきれないのはなぁ……ド根性貫通スキルでも作ってみるか?」
このアクセ程じゃないにしろ、ド根性をある程度の確率で発動出来るようにするスキルとか作っているプレイヤーもそれなりの数居そうだしな。作っておいて損じゃないだろう。
取り敢えずスキル作成は今度やるとして、もう一つのアクセサリーの方も確認するか。
───
【
【双壁】の外殻から形成された、無骨な腕輪。装飾品となった後もその力は健在であり、着用した者に瞬く間に移動する事を可能にする力を秘めている。
DEF+100 MGI+100 【
───
「【
えーと、確か瞬きする程短い時間の事を転瞬って言うんだったか。さっきの星屑の指輪は分かりやすく壊れてる性能だったけど、これは着けて検証してみないと分からないな。
「えーと、装備して、と」
装備欄を操作して、【
特に変わった様子は無いが……取り敢えず走ってみるか?
『我が主よ。一旦、我を地面に置いておいてはくれぬか?』
「どうした急に? まあ良いけど」
リヴァイアに言われるがまま、クリスタライズを地面に置いてみる。
その後、【
「……? これどうやって使うんだ?」
普通に走り回ってみる分には特に効果を発揮せず、ただ普通のランニングになってしまった。
武器のフレーバーテキストには瞬く間に移動する事を可能にするって書いてあったが……スキル名を叫ばなければ使えないのか?
『我が主よ、
「ん? 空中を歩くようなつもりで飛ぶ?」
クリスタライズから声が聞こえてきたので、言われた通りに試してみる。
すると──。
「うおッ!?」
空中に飛んでから、もう一段ジャンプしようと足を踏みしめる仕草をした瞬間。
視界が一瞬で引き延ばされたかと思えば、すぐさま
「──だッ!?」
顔面を強打し、そのまま地面へと墜落する。
派手な不時着音を響かせ、周囲の木々に止まっていた小鳥達が慌てた様子で羽ばたいていった。
その光景を見て、クリスタライズから愉快そうな声が聞こえてくる。
『クク、今のは見物であったぞ。我が主よ?』
「てめっ、知ってたなら最初から……!!」
『ククク、何事も失敗せねば学ばない物だぞ。成功だけし続けて自尊心を肥大化して貰っても困るのでな』
クソ、確かにその通りだから反論のしようがねえ。
まあ確かに今のは良い教訓になった。クリスタライズを担ぎながら地面に落下して居たらあいつが下敷きになっていただろうし……って。
「お前、下敷きになるのが嫌で最初に置くように指示したな?」
『当たり前であろう』
何もかもこいつの掌の上って事かよ、ったく。新しい相棒は良い性格してやがるな。
「でも、使い方次第ではさっきの指輪以上に強くないかこれ?」
一見地味ではあるものの、使い方次第では非常に化けそうな性能をしている。つまるところこの腕輪を付けてる間は空中での瞬間移動が可能って事だろ? 空中床を使った戦法の幅が広がりそうでワクワクしてきた。
もう一度試しに飛んでみる。そして、強く空中を踏みしめる仕草をした瞬間、先ほどよりも遠い距離を瞬間移動する事が出来た。
「やばい、中々楽しいなこれ」
装備出来なかったオリオンで下がったテンションを戻す勢いで楽しくなってきたんだが。でも、このまま検証を続けると戻ってこれなくなりそうだし、先に防具から確認しておこう。
───
【
遍く星々の輝きを宿した、美しい外套。星々の中に身を隠すように、身に着けた者の存在を自然に溶け込ませる事が出来る効果を秘めている。また、かつての星海の守護神の力も宿しており、あらゆる外敵から身を護る力を発揮する事が出来る。
DEF+100 MGI+100 VIT+50 AGI+50 【
───
うん、これは使わないでも分かる、間違いなく壊れ防具だ。
【認識阻害】の方は何となく効果が分かるとして、もう一つの厨二が好きそうな名前のスキルの効果がいまいち分からないな、検証してみるか。
『試してみるか?』
「お、流石。理解が早くて助かる」
試しに自分に向かって攻撃してみようかと考えていると、リヴァイアから提案される。
直ぐにウインドウを操作して、胴体装備を変更。すると、胴体にチェストアーマーが出現し、ばさりと肩と背中を覆うようにクロークが出現する。
「お、クロークなのになんで胴体装備なんだ? って思ったけどチェストアーマーと一体型なのか。動き辛いかと思ったら意外とそうでもなさそうだな」
首を一周するように布が巻かれているお陰で、意外と落ちそうにない。これなら多少激しい動きをしても問題無さそうだな。
「じゃあ、早速」
クリスタライズを拾い上げ、跳弾計算を開始。
着弾のタイミングを調整し、【流星の一矢】を発動し、射撃する。
「【
木々を伝って、こちらへと迫る矢が当たる直前にスキルを発動。
瞬間、ギャリィィィン!とどこか聞き覚えのある甲高い金属音のような音を響かせ、淡い紫色の障壁を滑るように矢が逸れていった。
「おお、これは……」
確か【双壁】戦の開幕時に、コアに向かって射撃した時に出現したエフェクトと全く同じエフェクトだ。奴が使っていた【
ただ……。
「このスキルの使用中、もしかして動けないのか?」
スキルを発動した時に感じた違和感。身体がピタッと止まるような感覚があった。
恐らくだが、その場所に位置を固定する代わりにあらゆる攻撃を防ぐ事が出来る、とかそういう感じの能力なのだろうか?
「もう一度試して……ああ、流石にクールタイムがあるのかこのスキル」
あらゆる外敵から身を護る事が出来るとだけあって、どうやらこのスキルは十分に一度しか使用が出来ないらしい。それでも、十分に一度の完全防御は余りにも破格な性能だ。
「……ん? もしかしてこのスキル……」
ふと、【
「よーし、今日は日が暮れるまで検証三昧と行きますかぁ!!」
結局、数時間後に厨二からメッセージが来るまで俺はこの場所で検証し続けたのだった。
────
【補足】
シャドウ『相棒ポジの危機を感じる……!!!』
ブリンクのイメージはもろアレです。聡明なガーディアンなら直ぐに分かると思います。ブレダン大好きだったので。
ですので、【
ちなみにオリオンのサイズは大体4m以上をイメージしています。どうやって使うんでしょうねこれ……?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます