#223 【海岸の主、未だ双壁に傷を負ず】その二十三 『冥王龍覚醒』


≪ここに証は示された。聖なる焔は受け継がれる……≫


 串焼き団子の脱落と同時にシステムメッセージがポップする。

 今の所は聖なる焔ギミックもこなしつつ、リヴァイアに十分なダメージを与える事が出来ている。

 海遊庭園戦において、ほぼ理想的な動きが出来ていると言っても過言ではないだろう。


(本当にナイスです、串焼き団子さん……!!)


 雑魚処理が完了した事実を再確認し、ライジンは思わず拳を握る。

 串焼き団子の脱落は痛いが、それでも聖なる焔一人分だけで完全に雑魚処理を終える事が出来たのは非常に大きい。

 何故なら、一回の戦闘では聖なる焔を取得出来る数に限度があるだろうと推測しているからだ。

 その数は恐らく一人一回まで──つまり、パーティメンバーの合計であるでリヴァイアのHPを削り切らなければ、時間切れで強制全滅ワイプさせられるだろう、と。

 そう推測しているからこそ、まだ聖なる焔を取得していない三名……それも火力の出す事が出来る村人Aとポンを残せたのは、大きすぎるアドバンテージだ。


『クハハハハハハハ!! 全くもって見事だ、人間! 正直な話、ここまで足掻くとは思いもしなかった』


 ……しかし。


 上手く行っている、というのはそれだけ彼らが事前に十分な対策を立てていたからである。

 裏を返せば、想定の範囲内……それから少しでも超えてしまえば、あっという間に瓦解する。


 リヴァイアが上方から飛び出すと、地響きを立てながらボスエリアへと降り立った。

 村人A達の方へじろりと視線を向けると、獰猛に嗤う。


『真に強き者達よ、見せてやろう。我がと呼ばれる所以を。──ここからが本当の戦いだ!』


「──ッ!?」


 まさに今。

 彼らのの事態が起きようとしていた。


『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!』


 リヴァイアが咆哮すると、海遊庭園中に光の粒子が可視化される。それらは、次第に漆黒のオーラを放ち始めた。

 その粒子は、元々海遊庭園に生息していたリザード達を構成していた魂そのもの。

 世界の法則ルールに則り、生を終えてから星の大海へと流れ着くはずだった魂達は、力によって再びこの場に集う。


『──【龍王】権能、!』


 それは、本来であれば冥王龍リヴァイア・ネプチューンという存在では到底扱う事の出来ない力。

 その存在がであると世界の根幹に名を刻まれし者達……【】のみに許された強大な力だ。


『第三の『セカイ』、不完全開門ディフェクティブ・アクティベート!』


 だが、二つ名の一角、【龍王】の直属の眷属であるリヴァイアならば。

 彼らの王と接続する事で、その一部分を不完全ながらも使用可能である。


『生命の理を超越し、今再びこの場に集い、我が身に宿れ!』


 途端、不可思議な現象が起きた。

 星の大海……つまり万物を構成するマナの源流に帰る筈の魂が、する。

 天へとゆっくり昇ろうとしていた魂は、次第に収束を始め、一つの大きな球体となった。


 空間が歪み、大気が震える。

 膨大な力が海遊庭園を渦巻き、そして──。



『【死龍達の蘇唄ヘルヘイム】!』



 不完全な為、肉体の再構築には至らなかった魂達は自分の魂を納める入れ物……即ち、肉体を求める。

 リヴァイアの号令と共に、集合した魂の塊はリヴァイアの身体へと吸い込まれて行った。ドクンッ!と心臓の鼓動のような音が周囲に響き渡ると、蒼紫色の龍鱗が光沢を帯びた漆黒へと染まり、その表層に真っ赤な線が走る。

 全身を覆う鱗は外敵を寄せ付けまいと棘のように逆立ち、薄く黒い電気の膜を纏い始めた。

 それと同時に筋肉が隆起していき、元々図体の大きいリヴァイアが、更に大きくなっていく。


『ゴァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!』


 その強大な力を解き放つかのように、身が竦む程の凄まじい咆哮を上げる。

 リヴァイアの背後から黒雷が迸り、荒ぶるがままに地面を蹂躙する。


『クハハハハハハハ!!! さぁ、続けるぞ! 我をもっと楽しませるが良い!!』

 

 特定のモンスター達は生命の危機に陥ると、生命維持に必要なマナを急速燃焼させる事で急激に進化を遂げる現象が起きる事がある。

 プレイヤー達はその現象の事を『発狂モード』と呼称しているが、その正式名称は『生命燃焼活性』という名が付けられている。リヴァイアに起きている現象は、まさにそれだ。

 現在のリヴァイアの残りHP42%。まだ半分から少ししか減っていないのにも関わらず、生命燃焼活性を起こした原因ははっきりしている。


 それほどまでに、


(流石に発狂モードの突入が早すぎるだろ……!?)


 それを見たライジン達は顔を引き攣らせる。

 生命燃焼活性を起こす事自体はこれまで戦ってきたボス共通の要素だから、まだ納得は出来る。

 だが、それがまだ体力が半分近く残った状況で発動するのは流石に想定外だったのだ。


『行くぞ!』


 宣言と共に、リヴァイアが身体に纏う黒雷を振りまきながら動き出す。

 真っ先に狙われたのは、パーティの要……タンクであるボッサンだ。

 巨木のような腕が凄まじい速度で振るわれ、間一髪で防御するもまるでロケットのような勢いで吹き飛んでしまう。


「ボッサン!」


 それを見た村人Aが声を上げる。

 あの速度で地面に叩き付けられれば、いくらタンクと言えど致命傷は免れないだろう。


「任せてくださいッ!!」


 だが、それを見越して動いていた影が一つ。

 空中を爆走するポンが、ボッサンが吹き飛ぶよりも速いスピードで飛来し、間一髪で救出する事に成功する。

 勢いを殺すように【爆発推進ニトロ・ブースト】を逆噴射し、地面に直撃する間際で停止した。


「大丈夫ですか!?」


「悪いポン、助かった! すぐ戻るぞ!」


 その言葉に頷くと、ボッサンを抱えたまま、ポンがボスエリアへと戻る。

 だが、その無防備な状態を見逃す程リヴァイアも優しくはない。


『【黒雷波】!!』


 リヴァイアの全身がバリッと帯電すると、黒雷を勢いよく放出する。

 勢いよく迫り来る雷を前に、ボッサンがスキルを発動させる。


「【戦いの咆哮ウォーリング・ハウル】!!」


 ボッサンから放たれる声の衝撃波が、リヴァイアの雷を一瞬だが弾く。

 そうして生まれた隙に、ポンと共に急降下。中間地点に降り立つと、ボッサンがネックレスを鷲掴みにして指示を出す。


「村人、ライジンは散開! リヴァイアを囲むように動き続けろ! ポンはこのまま俺と共に聖なる焔の奪取に向かってくれ!」


『了解!!』


 その言葉だけで次に取るべき行動を把握したメンバー達は動き出す。

 聖なる証の次の対象はボッサン。聖なる焔の取得の失敗が直接的な壊滅に繋がるかもしれない以上、失敗は許されない。

 覚醒後間もない今、相手に追加された行動パターンが分からないので、少しでも相手から情報を引き出すのが先決だ。


『【巨人の雷槌タイタンズ・トール】!!』


 リヴァイアが魔法を発動させると、水の塊が生成される。

 それは巨大な人の形を形成し、水で出来た巨大な拳に黒の雷槍が握りしめられる。

 ゆっくりと腕が振り上げられ、雷槍が放たれた。


「避けろォッ!」


 ズガァン!!


 ボッサンが叫ぶと同時に、雷槍が着弾する。

 落雷のような轟音と共に、槍が弾けて幾重にも分裂した電撃が彼らに襲い掛かる。


「ポン、しっかり後ろに隠れてろ! 【不動の構え】!!」


 ボッサンの巨体を隠す程の大盾に装備を切り替えると、力強く地面に打ち付ける事で固定する。

 ほぼ同時に雷が大盾に直撃。凄まじい勢いに押されそうになるが、その場に踏みとどまる。


「防げない、程じゃない!」


 雷が通り過ぎ、ボッサンが笑みを浮かべる。

 だが、水の巨人から何度も雷槍が放たれ、少しずつボッサンが押され始める。


「「俺達を無視すんじゃねぇ!!」」


 と、ボッサンを集中的に攻撃していたリヴァイアに襲い掛かる双剣による斬撃と、青と白の燐光が混ざった射撃。

 ダメージこそ小さいが、確かな一撃に、リヴァイアがじろりと視線をそちらへ向ける。


『小賢しい!!』


 リヴァイアが身を震わせると、電気を帯びた鱗を勢いよく射出する。

 急速に迫るそれを弾き飛ばし、受け流しながら、村人達は攻撃を続ける。


「ポン! ボッサンを連れて一気に聖なる焔の下へ行け!!」


「ッ、了解!!」


 ボッサンを抱え、再びポンが【爆発推進ニトロ・ブースト】を使用。

 それを見たリヴァイアが、腕を振り上げて叩き付けようとする。


「【魔力防壁・全力展開】!!」


 ボッサンが盾を腕の方へと掲げると、魔力で出来た防壁が空中に形成される。

 腕がその防壁に着弾し、すぐに粉砕されるが逃げ出すには十分な時間が生まれた。

 

 ポンはそのまま速度を上げると、ボッサンが吠える。


「ポンッ! 俺を放りなげろ!!!」


 ボッサンの意図を察し、ポンは加速したままボッサンを聖なる焔に向かって放り投げる。

 空中で着地体勢を取り、ボッサンが地面に降り立つと同時に、聖なる焔に触れた。

 その身体が聖なる炎に覆われるのを確認すると、すぐにリヴァイアに向かってスキルを使用する。


「【ターントゥアンカー】!!」


 錨のようなエフェクトが発生し、リヴァイアのヘイトをボッサンに固定する。

 これにより、他の三人の安全は保障された。だが、ここからどうリヴァイアに攻撃を当てるかで、今後の戦況は左右される。


『【氷塊飛翔嵐アイシクル・ストーム】!!』


 ボッサンに放たれる氷塊の嵐。

 村人とライジンはボッサンから離れるように動いている為、庇う必要も無いので正面から盾を構えて氷塊を弾き飛ばす。

 数十秒が経ち、一向に攻撃の手が止まない事に、ボッサンは内心で舌打ちすると。


(俺の攻撃の為だけにポンを付き合わせるのはリスクが高すぎる。……となると、一か八か……)


 とある策がボッサンの中で浮かび上がる。

 ボッサンはゆっくりと氷塊と黒雷の嵐の中を歩いていくと、リヴァイアの前に立つ。


「なあ、リヴァイア」


 ボッサンはふっと自嘲染みた乾いた笑いを漏らすと、言葉を続ける。


「生憎俺はあいつらみたいにめちゃくちゃ速く移動出来る訳じゃねえんだ。正直、このまま攻撃を受け続けてたらお前さんに攻撃を当てられる自信がねえ」


『……何が言いたい?』


 リヴァイアは決して油断する事無く、鋭利に尖った氷塊を生成すると、ボッサンに向け続ける。

 常人ならば失神し兼ねない威圧感の中、飄々とした態度を続けて居られる彼に、リヴァイアの本能が警鐘を鳴らしていた。

 対話の意思がある事を確認したボッサンは人差し指を立てる。


「一つ、賭けをしてみないか?」


『賭けだと?』


 リヴァイアがボッサンの提案に耳を傾ける。

 食いついた、とボッサンは静かに笑うと。


「俺は『護り』の一点において、自信があるんだ。だから、こういうのはどうだ? お前の全力の一撃を、俺が耐え凌ぐ。その代わり、耐え切ったら俺にも一撃殴らせてくれないか?」


 リヴァイアからしてみたら、メリットの薄い提案。

 本気で動き回れば、ボッサンの攻撃はまともに届かず聖なる焔の効果時間が終了するのは明らかだ。もし本当に耐え切れたとしたら、みすみす一撃分貰ってしまう事になる。

 即座に断って、ボッサンを始末する事が最善……だが。

 弱肉強食の世界で頂点に君臨するリヴァイアにとって、その言葉に乗せられた挑発は、想定以上の効果を発揮した。


『舐めているのか? 図に乗るなよ、本気を出した我の一撃を耐えきれるとでも?』


「そうだと言っているからこその提案だ。どうする? やるのか? やらないのか?」


 ボッサンが煽る様にそう言うと、リヴァイアはボッサンの真意を探るべく目を細める。

 リヴァイアから見れば、確かにトラベラーは不可思議な生物であり、大抵の生物なら塵すら残らない攻撃にも耐えるであろう存在だ。

 しかし、全盛期の力を取り戻し、尚且つ部下の魂を取り込み強化されたリヴァイアにとって、恐れる物など無い。


『ならば受けようではないか。そして、自らの無力さを思い知るが良い!!』


 リヴァイアがそう言うと、口元に魔力を収束し始める。

 黒のマナが可視化されるほどまでに濃度を高め、空気が震え始める。

 策があると言えど、その光景を見せつけられたボッサンの額に、汗が浮かび上がる。

 

「なあ、リヴァイア。知ってるか?」


 だが、そんな胸中を悟らせまいと、ボッサンは歯を見せると。


「守る者が居る奴ってのはな、最強なんだぜ?」


 彼の視線の先には、村人達の姿があった。

 王として配下達を守ろうともしなかったリヴァイアは、それを聞いて鼻を鳴らす。


『戯言を。何秒持つか試してみるか?』


 ボッサンが笑うと、耐える為に使用するスキルの準備が完了し、大盾を構える。


『【黒龍砲】!!!』

 

 カッ!!!


 それと同時にリヴァイアの口から放たれる破壊の奔流。それを正面から受け止めると、大盾が焼き焦がされ、その身体諸共蒸発し始める。


「ぐ、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!」


 【黒龍砲】を真っ向から浴びてボッサンが吠える。当然、耐えきれるとは思ってはいない。

 だが、ボッサンには守るべき者達が居る。だから、死んでも耐えきってみせる。

 その一心で、今にも吹き飛ばされてしまいそうな身体に鞭を打ち、必死にその場に留まる。

 一秒、二秒、三秒……時間がゆっくりと過ぎて行くが、その身体は健在だ。


『しぶといな、これでどうだ!』


 次の瞬間、出力が跳ね上がる。

 膨大なエネルギーに押しつぶされ、ボッサンの身体が沈んでいく。

 次第に声すら出す事も出来なくなり、ボッサンの身体は端々から黒ずんでいく。

 リヴァイアが最後に出力を跳ね上げると、大爆発を起こした。


『クハハハハハハハ!! 口ほどにも無い!!』


 赤黒く溶けた大地に、真っ黒に染まった人の塊が盾を構えた体勢で立っていた。

 それは元ボッサンであったもの。

 リヴァイアの凄まじい攻撃により、物言わぬ彫像となってしまっていた。


『さて、貴様らはどうする?』


 圧倒的な力を見せつけ、残された村人A達にリヴァイアが問う。

 ボッサンのように、無謀にも立ち向かうか、それとも諦めるか。


 だが返答は無く、リヴァイアが先ほどの一撃で失った魔力を回復する為、瞑想を始めようとした所で。


「良い、一撃だった」


 どこからか声が聞こえてきた。

 信じられない事に、その声が発せられたのは、真っ黒に染まった人の塊からだ。

 リヴァイアが信じられないとばかりに、目を細める。


『まだ、生きて……?』


 リヴァイアの問いの答えは、踏み出された足だ。

 ゆっくりとだが、確実に。大地を踏みしめ、リヴァイアの下へと歩き出す。


 今にも爆発しそうなエネルギーをその身に内包しながら、ボッサンがゆっくりと歩き続ける。

 一歩、二歩、三歩。リヴァイアの【黒龍砲】によって赤黒く溶解した地面を歩くボッサン。

 顔を覆っていた黒ずんだ塊が一部落ち、そこから覗かせた口元が笑みを浮かべると、地面を力強く踏みしめる。


「そぉら、お返しだ」


 爆ぜるように地面を蹴り砕き、ボッサンが跳躍した。


「【高速変型】!」


 ボッサンがスキルを発動させると、大盾が駆動音を立てながら、巨大な斧へと変形する。

 先ほどリヴァイアが放った【黒龍砲】。それはタンクであるボッサンのHPを優に二十回は消し飛ばせる程の威力だった。

 それを、スキル【不滅の意思】により体力1の状態で耐え切り──溢れた余剰ダメージを稼ぎ続け。

 その膨大なダメージを、スキルの力によってそのまま火力へと変換する。


「【痛苦の報復ペイン・リベンジャー】!!」


 巨大な戦斧から放たれる、圧倒的なオーラ。

 流石のリヴァイアと言えど、その攻撃をまともに受けたらタダでは済まない事は理解した。

 しかし、攻撃を避ければ先ほどボッサンと交わした約束を一方的に破る事になる。

 それは、かつて三千年前に絶対不可侵を誓い、それを破った人間達と同じ行為に他ならない。

 彼らの主である【龍王】が知れば、恐らく許されないであろう行為だ。


 そう思い至り、リヴァイアに生まれる数瞬の逡巡。

 まさにそれが、ボッサンの狙いだ。龍という存在が持つ背景バックボーンが、本来であれば即座に取れたであろう行動を縛り付ける。


『クッ────!!』


 顔を歪め、リヴァイアが最終的に選んだのは、弱点の防御。

 ボッサンがその身一つで耐えた訳では無く、スキルの力を使って耐え忍んだ事実から、自分も守りを固める事ぐらいは許されるだろう、と。

 だが、目の前の男はそれすらも読んでいた。


「誰が、逆鱗そこを狙うと言った?」


 ボッサンは空中に生成された床を踏みしめて、分厚い防壁が固められた逆鱗を通り過ぎる。

 ボッサンの狙いは、リヴァイアの弱点である逆鱗……では無く、驚愕に見開かれた目だ。


 今まで他のメンバー達は逆鱗を狙い続けてきたからこそ、リヴァイアは逆鱗に防御を固めた。

 AIの裏を突き──『次もそうだろう』と言う思い込みが、致命的な判断ミスを生んだのだ。


「歯ァ食いしばりやがれ!!」


 ボッサンが腕を振るう。その猛りごと、斧に乗せて。


「【アングリーブロウ】!!」


 ザンッッ!!


『グォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!?!?』


 【黒龍砲】の火力をそのまま返すように、カウンターの一撃が放たれる。

 顔面を大きく斬り払った一撃は、リヴァイアの眼を切り裂き、真っ赤なポリゴンを噴出させた。

 広範囲に渡って切り裂き、鱗はひしゃげ、その眼から光を奪い去った。


(流石にここまでか)


 最後の一撃を放ったボッサンの身体が崩壊していく。

 強大過ぎる力の代償を払い、ポリゴンへと還元されていく間際。


「ライジン、ポン、村人!!」


 残る彼らを思い、最後にボッサンは笑うと。


「残された責任だとか、絶対に勝とうだとか思わなくても良い。ただ────最後まで楽しんで来い!」


 ボッサンらしい激励の言葉に、残された三人は皆一様に笑った。



「「「ああ(はい)!!!!」」」



 『ボッサン』脱落。生存メンバー、残り三名。


 レイドボス【冥王龍リヴァイア・ネプチューン】残存HP29%。

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