#205 それぞれの決戦準備 sideバトルチームその二
「『水中の火』伝説……?」
恐らく名称からして神話っぽい感じがするんだが……俺はそっち方面に疎いんだよな。厨二時代はどっちかと言うと銃器とかの方に情熱を傾けてた物で……(ただしAimsに限るので実在しない銃メイン)。
ライジンはこちらの反応は最初から分かっていたように頷いてから。
「多分名称から想像してるだろうけど、神話だね。『水中の火』の伝説は幾つかあるんだけど、その起源には構成に類似した部分があってね。ざっくり言うと、『水の中に聖なる炎が存在し、その聖なる炎には穢れた者は触れてはいけないという制約がありました。だけど、その炎にそういった資格の無い者……つまり穢れた人間が触れてしまい、炎を包んでいた水が溢れ出してしまいました。そしてその溢れてしまった水は最終的に河川となりました』……って内容なんだよ」
「なんだその砂漠民大歓喜な神話」
「多分村人君が想定しているような規模じゃなくて、大氾濫とかそういう天災規模の話ですよ」
まあそりゃそうか。聞いた感じ神罰とかそういう類だろうしな。
「でもなんでその神話に辿り着いたんだ? 現状、聞いた部分だけだと炎って所しかその神話と共通点が無い気がするんだが?」
「それがそうでもないんだよね。……
なるほど、その神話に関連する名前となると確かに信憑性が増すな。
ただし、水に包まれていたというよりはシャボン玉に覆われていたと表現するのが正しいが。
「『穢れた者は触れてはならない』……か」
ボッサンがそのフレーズを反芻するように口に出す。
そう、今回ライジンが伝えたいのはその点だろう。聖なる炎には穢れた者は触れてはならない。あのボス戦の重要ギミックになりそうだ。
「穢れた者……って言うと、思い当たる要素としてはカルマ値ですかね?」
「確かに最初はカルマ値関連かなって思ったんだけど……【二つ名レイド】内でカルマ値の変動があるかもしれないのに、ギミックの一つに入れてくるかなって思えるんだよ。『穢れた者』関係のデバフが付与される物だと考えるのが現実的かな」
「確かにそうですね……」
カルマ値は
ライジンは一つ咳払いすると、すっと目を細める。
「俺はここのステージの攻略パターンは二つあると見ている」
ライジンがそう言うと、ウインドウを叩くとメモが出現する。
「一つは、特殊勝利系。圧倒的な強さのレイドボスの攻撃を避け続けて、エリア中央にある聖なる炎に『資格を持つ者』が触れる事での特殊勝利だ。俺としてはこっちの方が勝ち目が見えているからありがたいんだが……そう上手くいかないだろうな」
ライジンは苦笑すると、もう一回ウインドウを叩き、更に一つメモが出現する。
「もう一つは真っ向からの純粋な全力勝負。あくまで『水中の火』ギミックは壊滅しない為の必須ギミックの場合だな。こっちの可能性の方が高いだろうから、レベル上げは結局必須になってくる。挑んだは良いけど火力が足りずに負けました、じゃあ話にならないからな」
「ボスまで無傷で到達出来たけど絶対勝てませんって展開だけは確かに避けてぇな……」
ボッサンが腕を組みながらウインドウを眺めていたが、ライジンに視線を送る。
「ライジンから送られてきた動画を見ただけだから何となくしかイメージ出来ないんだが、正面から戦って勝てる見込みはあるのか?」
「……まあ、現状の戦力で挑んだらほぼ100%開幕壊滅かな。初見で対応しきれなかったってのもそうだけど、何より相手の一撃の火力が高すぎる。多分DPSジョブで相手の一撃貰った時点でアウトって考えるのが妥当って所かな」
「了解、ならヘイトは基本タンク固定だな。ただし、相手の攻撃によってはダメージ分担してもらう場合も出てくるだろうから、適宜対応頼むぜ」
「ああ。なんにせよ試行回数は重ねる事になりそうだし、その点については技を見極めて順次対応していくことにしよう」
ひと段落すると、ライジンはウインドウを閉じる。
取り敢えず、何をするにしてもレベリングが先決か。
とと、その前に確認しておきたい事があったのを忘れていた。
「あ、それと一つ気になった事があるんだが」
「どうした? 村人」
ライジンがこちらに視線を向けると、他の皆もこちらに視線を向けてくる。
俺が確認しておきたかった事、それはあのボスの名前に関連する事だ。
「あのボスさ。なんか最初遭遇した時にどっかで聞いたような名前だなーって思ってたんだが……もしかしたら、【水冥龍リヴェリア・セレンティシア】の親戚じゃねーの?」
「……! そうか、言われてみれば確かに似てるな」
あの地下迷宮を根城としていた『水
二体とも『冥』という名称が付いているし、名前も似通っているからには何かしら接点があってもおかしくはないと思ったのだ。
「何かしら有益な情報を得られるかもしれないし、レベリングに行くにしてもあの地下迷宮に行くことになるんだろ? ついでにリヴェリアに会いに行くのはどうだ?」
「そう言う事なら賛成だ。皆もこの後時間は大丈夫か?」
ライジンが聞くと、皆一様に首肯する。
「なら、早速移動しよう。回復アイテムは潤沢にある事だしな。道中事故があってもどうにでもなるだろ」
ライジンがにっと笑いながらそう言うので思わず苦笑いを浮かべる。
まあその回復アイテムの本当の持ち主、オキュラス氏とかのなんだけどな……。
……それにしてもなーんか忘れているような。どうせ大した事じゃないだろうし、まあいっか。
◇
▷星海の地下迷宮 深奥
『……何故、貴様らは逃げるように姿を消したのだ?』
はい、めちゃくちゃ大事な事すっかり忘れていました。
開口一番、リヴェリアは不機嫌さを隠そうともせずそう言ってきたので頬を引き攣らせる。
予想しては居たが、やはりあの時の対応は間違っていたようだ……と言いたいところだが、アレは運営による強制テレポートが原因であって断じて俺が悪い訳ではない(責任転嫁)。
説明するにしてもどう説明したものか、と頬をぽりぽり掻きながら。
「あー、なんて説明すれば良いかな……。……色々不運が重なった結果、あの事故が起きてしまったと思ってくれると助かる。俺も詳しい理由については分かってない」
『……良く分からないが、あの兄弟はトラベラーは人智を超えた力を使うと言っていたからな。現在その力は失われているようだが……
俺の何とも言えない弁明に、真剣に考え始めたリヴェリアを見て申し訳ない気持ちになる。
とはいっても、ゲーム内キャラにゲームの仕様ですと説明する訳にも行かないしな……。
リヴェリアはそれで一応納得がいったのか、こちらへと顔を向けた。
『所で、何故ここに来たのだ? ティーゼの魂はまだ解放していないのだろう?』
「それを言われると心苦しいんだが……少し、あんたに聞きたい事があって来たんだよ」
『……この私にか?』
首を傾げたリヴェリアに対して首肯する。
さて、これを聞いた時どんな反応をするのだろうか。
「【冥王龍リヴァイア・ネプチューン】。……この名前に聞き覚えはあるか?」
そう問うと、リヴェリアは僅かに眼を細める。
少しだけ戸惑った様子を見せると、ゆっくりと息を吐いた。
『聞き覚えも何も。我らが龍族の祖たる【龍王】ユグドラシルが産み出した直属の眷属、『五天龍』の内の一体だ』
一拍置くと、衝撃の事実を口にした。
『……そして、この私の産みの親でもある』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます