#197 【龍王】討伐作戦 その二


 ──数分前。



「……よーく観察しなきゃ分からんけど、うっすい魔力障壁バリア展開してるくさいな」


 【鷹の目】を発動させた事で強化された視力で、【龍王】をじっくりと観察する。

 幾ら防御力が高いとは言え、たっぷりと火薬が詰まった砲弾が直撃しているんだ。ダメージが無いのはまあギリギリ理解出来るとして、汚れ一つ付いていないのは流石に不自然過ぎる。

 そこから導き出された結論が、『もしかして全身に魔力障壁バリア貼ってんじゃね?』って訳だ。


「不自然にならないように、魔力障壁バリアを全身に巡らせているとなると一ヵ所当たりの装甲は薄いと見た。面制圧にめっぽう強いタイプの魔力障壁バリアだな。一点特化でやればワンチャンぶち破れる……か?」


 そう呟きながらウインドウを操作。手持ちのスキルを確認して、大型弩砲バリスタでも使えそうなスキルを選別する。

 【跳弾】に【フラッシュアロー】、【一射必滅】……後はあの新スキル辺りか。多分ここら辺のスキルは使用可能だろう。

 後は、確証を得るだけの情報が欲しい。


「シャドウ、居るか?」


『は、はい。一応無事です』


 【巨龍の咆哮ヨトゥンヘイム】を浴びる直前に姿を消していたので無事だったらしい。

 破壊されていたら厄介だったからな、ナイス判断だ。


「すぐにポンに繋いでもらえるか? 伝えたい事がある」


『了解しました。……プレイヤー『ポン』のシャドウに接続します』


 シャドウが目から映像を投影する。向こうのシャドウの視界に接続されたようで、ポンの後ろ姿が映り込んだ。

 丁度砲弾を放つ瞬間のようだった。


「ポン、聞こえるか?」


『村人君!? どうしたんですか!? っと、飛んでくる岩石に気を付けてください! 設備の被害はなるべく最小限に!』


 余裕が無いような、緊迫した声が聞こえてくる。

 立ち位置で言えば、ポンは前線に配備されている為、【龍王】に近い位置に居る。

 【龍王】が歩くだけで大量の岩石が吹き飛び、それが降り注いでいるのだろう。

 ならゆっくり説明している暇は無い。用件だけ手短に伝えよう。


「頼みたいことがある。ポンって、クラスター弾みたいなスキル持ってるだろ? それを大砲で乱発してみてくれないか?」


「何か考えがあっての事なんですね? 分かりました、やってみます!」


 そう言うと、向こうのシャドウの接続が切れる。

 さて、これでどうなるか確認しないとな。


「【集中コンセントレーション】」


 スキルの効果で思考が加速し、動体視力が底上げされたことで周囲の景色がスムーズに見えるようになる。

 ポンが居る位置は把握している為、そちらを注視すると、砲門が火を噴いた。


 放物線を描きながら空中で砲弾が花開き、複数の小弾となって【龍王】に降り注ぐ。【龍王】の身体へと着弾すると、【油脂焼夷爆弾ナパームボム】の効果で燃え広がった。


「流石ポン、完璧だ。――ビンゴだな」


 クラスター弾の段階でほとんど確信出来たが、【油脂焼夷爆弾ナパームボム】が想像以上の結果を残した。

 【鷹の目】で強化された視力のお陰で龍鱗と火の間に限りなく小さな隙間を捕捉する事に成功した。つまり、魔力障壁バリアがあると見て間違いない。


「よし、なら次は狙う場所ポイントだ。下手に射撃した所で通らねえだろうし」


 大型弩砲バリスタの角度を調整しながら、弱点になり得そうな物を探す。

 すると、龍王の体表にどこか見覚えのある紫色の塊が目に入った。


「ん? あれは────」


 鈍く光るそれは、つい先日見たとある石と酷似していた。


『この石がある近くにあると、魔力を帯びた鉱石や石は、その効力、出力が増すって特殊な石』


 そう、確か──『増幅石』だ。

 あれが、もし【龍王】が纏っている魔力障壁バリアを増幅させる効果を持っているとしたら?


「試す価値としては十分すぎるな」


 すぐに大型弩砲バリスタの矢弾を装填。次いで【チャージショット】、【一射必滅】を発動させると、矢弾が光を纏い始める。


「この大型弩砲バリスタなら射速は十分に足りてるだろ……! 【アロー形状変化トランスフォーム】!」


 矢弾が光に包まれ、形が不定形になる。

 さて、これでHPの調整+射速+弾丸の形状の条件を満たした。

 残る発射可能エネルギーの充填だが……。


「さぁて、お披露目と行こうか。……【飛燕落スワロー・ザ・フォール】」


 俺の新しいジョブ……【狙撃手スナイパー】で得た新スキルの一つ。

 読んで字の如く飛んでいる燕を落とすという意味を持つ、そこまで強そうに見えないスキルだが、その威力はかなり高い。【彗星の一矢】よりは劣るが、それに迫るポテンシャルを秘めたスキルだ。

 ディアライズを用いないとまともな高火力スキルが無い俺にとっては、かなりありがたいスキルだな。

 【飛燕落スワロー・ザ・フォール】を発動させた事で、大型弩砲バリスタの矢弾が淡い緑色の光に包み込まれた。


「《我は狙撃手スナイパー》────」


 適宜大型弩砲バリスタの角度を調整しながら、詠唱を口ずさむ。

 狙うは一点、『増幅石』の塊。

 例えこれでダメージを与える事が出来なかったとしても、【一射必滅】の効果の30秒の拘束が発生するだけ。

 その間一切の反撃が出来ないが、他にも沢山プレイヤーが居るので問題は無い。

 詠唱が完了し、大型弩砲バリスタを解き放つ。


「【終局ゼロ・の弾丸ディタビライザー】!」


 矢弾が弾丸の形状に変化し、凄まじい早さで『増幅石』の塊に飛来する。

 ほんの一秒程で着弾。ガァン!と鱗に当たったとは思えない金属音を響かせ、僅かに傷つけたのが視界に入り、僅かに口元を吊り上げる。

 これで、あの魔力障壁バリアが剥げた部分には攻撃が通るようになった。


「……よし!」


 小さくガッツポーズ。

 次の瞬間、鎖のエフェクトが赤く染まり、パキン!と音を立てる。

 【一射必滅】の制約デバフだ。大ダメージを与えられなかった代償に、俺は30秒間攻撃が不可能になってしまった。

 だが、その代わりに相手の鉄壁の防御を打ち破った。あそこを起点に少しずつ魔力障壁バリアを剥がしていけばいい。


 と、その時。【龍王】を見下ろしていた俺に、真っ赤な双眸が向けられた。

 その眼から感じ取れたのは困惑と、滲み出る怒りの感情。


「……やっべ、マズったかな」


 確かに有効打は与えたが、今の俺は反撃が一切出来ない状態。

 まあ、反撃出来た所で相殺なんて出来る訳が無いのでどっちにしろ詰みなんだけどな。


『良いだろう、それほどまでに死に急ぎたいと言うのなら、お望み通り魂擦り切れるまで星の海に帰してやろう』


 想像以上にキレてるゥ!?

 流石にこの場に居るのはマズいか!? 他のプレイヤー達も巻き込みかねないし!? これ以上また厄災さんか(笑)って言われる事態だけは避けねーと!?


 と、【龍王】が呟いた途端に木に実っていた果実の内の一つが神々しく輝き出す。


「またあの咆哮か!? いや、さっきと位置が違う……!?」


 今光っているのは【龍王】が開幕に放ってきた【巨龍の咆哮ヨトゥンヘイム】とは別の位置の果実だ。

 別の攻撃の可能性もある、取り敢えず初見は死んで覚える方向で……!


『轢き殺せ、愛する我が子らよ。【小竜の大行進ニダヴェリール】』


 俺の心配は杞憂だったようで、果実が【龍王】の背に落ち、砕けると同時に生物へと変貌した。

 産まれ落ちたばかりの生物……小竜リザード達は、むくりと身体を起こすとプレイヤー達へと向けて前進を始める。

 その総数、千は優に超えているだろう。

 背中にびっしり黒い影が蠢いている様子は軽くホラー染みている。


「おいおいおいおい!? なんつー数だよ!?」


 周囲のプレイヤー達の悲鳴染みた絶叫が響き渡った。

 清流崖の洞窟や星海の地下迷宮でもリザード達に追われていた経歴がある俺だが、軽く見積もっても数十倍の数は居ると思う。

 そんな凄まじい量を即座に出産……うーむ……。


「……ドラゴンママ……いや、語呂的にママドラゴンか……?」


「なんであんたはアレを見てそんな感想が出てくるんだ!?」


 隣に立っていたプレイヤーに突っ込まれる。

 だって、あんなのを見れば生命の神秘を感じるのも仕方ないだろ。あの果実にどれだけ収納してたんだってぐらいの量が溢れ出てるんだけど。明らかに果実の大きさとリザード達の質量が釣り合って無くない?バグかな?


「と、取り敢えず少しでも数を減らさないと! おい、まだ壊されてない大砲を持ってこい! あいつらがこっちに乗り込んでくる前に、早く!」


「ああ!」


 慌ただしく動き出すプレイヤー達。

 あの量がそのまま乗り込んでくるとなると、拠点はあっという間に制圧されてしまうだろう。そうなれば兵器を捨てて戦わなければならなくなってしまう。

 その対処に追われていたら【龍王】はサーデストに向けて進行していく訳で……。

 ああくそ、モンスター大量召喚だけなら大したことない? って一瞬思ったけどそんな事ねえわ!どっちにしろ害悪極まりねえ!

 どうする? ここでそのまま応戦するか? それとも【龍王】にこのまま追撃を加えるか……。


「村人!」


 と、どうするか悩んでいると、俺を呼ぶ声が聞こえてくる。

 声の聞こえてきた方向に振り向くと、そこに居たのは何やら見慣れないゴーグルを装備していたライジンだった。


「ライジン!?」


「【龍王】の魔力障壁バリアを一部分だけ破壊したの、お前だろ?」


「こんだけ大量に矢弾が飛び交ってる中良く気付けたな?」


「ああ、この魔力マナを可視化出来るゴーグルを生産職のプレイヤーからパク……げふんげふん、借りてたお陰でな」


「おい待てお前なんか聞き捨てならない単語が聞こえてきた気がするぞ」


 さてはおめー、自分の知名度使って信者から拝借してきたな?

 いや向こうが快く? 渡してくれたのなら俺に責める権利は無いけど。


「で、ここに来たっつーことは何かしら用があるんだろ?」


「ああ。【龍王】の背中に飛び乗ってお前が空けてくれた穴を起点に魔力障壁バリアを剥がしに行く。それに付いてこないか?」


 なるほど、直接叩きに行くって訳だな。

 だが、それだと不安要素が幾つかあるんだよな……。


「でも背に乗れたとしてもさっき出現したリザード達の妨害に合わないか?」


「取り敢えず、今召喚されたリザード達はここに残るプレイヤーに任せるようにRosaliaに指示を飛ばしておいた。リザード達が地面に降りたタイミングで飛び移るつもりだから、砲弾とかが飛んでくる事は無い。安心してくれ」


「了解。だけど、肝心の飛び乗る方法はどうする? そう簡単に飛び乗らせやしないだろ、【龍王】も」


「それについては問題ない。【フォートレス】に備え付けられた兵器の中に一つ、足止め用の物がある。それを使って隙を作るつもりだ」


 そこまで詰めていたからこそこの提案を持ってきたのか。そう言う事なら断る理由は無いな。ちまちま兵器を撃つのも性に合わないし、直接乗り込むとしよう。


「よし、じゃあ付いてくわ。だけど、その足止め用兵器ってなんだ……?」


 昨日下見した感じだと目立った物は見当たらなかった気がするが。

 そう言うと、ライジンはくいっと顎で上方を指す。


「その兵器の発動装置が上の階層にあるんだよ。それの発動もRosaliaに一任している。……直接飛び移れるようにもっと前線まで移動しよう。厨二達もそっちに居るはずだしな」


「了解!」





「範囲ヒール足りてねえぞ、せめてリジェネだけでも撒いてくれぇ!?」


「前線の面子がDot貰う度に解除してるからMP回復が間に合わないのよ! 流石に物量が多すぎるわ! 被弾をなるべく避けて!」


「被弾を避けろったって数が多すぎて避けらんねぇよ! ったく、ゴキかよってレベルで湧いてくるなこいつら!? バ○サン焚けバ○サン!」


「このままだと第三区突破されるぞ!! タンクの増援はまだか!?」


「さっきトカゲ数十匹に群がれて捕食されてたタンクでラストだ! この場はDPSとヒラで何とか凌ぐしかねえ!」


「なんとまあ、これは……」


 前線に到着と同時に、目の前に広がる惨状に頬をヒクつかせる。

 生産職クラフターが建てたであろう即席のバリケードの前で、中、遠距離に対応したプレイヤー達がリザード達に攻撃を加えているという状況だった。

 時折命知らず?なDPSジョブらしきプレイヤーがバリケードを超えて応戦しようとするが色とりどりの液体やブレスを飛ばされ瞬殺される始末。うーん、地獄かな?

 俺とライジンが足を止めると、攻撃していたプレイヤー達の一人がこちらへと顔を向ける。


「応援に来てくれたのか!?」


「悪いが、【龍王】に直接飛び乗るつもりでこっちに来た。だからすぐに離れるつもりだぞ」


「何でもいい、どうにかしてここで抑えないとフォートレスのリス位置まで来る勢いだぞこいつら!ボス戦仕様で耐久が滅茶苦茶高いから中々死なねえし、援護してくれると助かる!」


 あれえ? もしかしてこれイエスでもノーでも手伝う奴?

 とは言え、リスポーン地点まで来るのは流石に困るからな。少しばかり助太刀を……。


「はいはいはいはいはいどいてどいて! 大砲が通りますよー!!」


 と、聞き覚えのある声が聞こえてきたと思うと、後方からレールに乗った移動式大砲が運搬されてくる。

 それを見たプレイヤー達は一目散に退散。ポンがこちらに気付いたようで、驚いたような表情を浮かべると。


「あっ、村人君とライジン君! どいてください、そいつら吹き飛ばせない!」


「会って早々物騒だな!?」


 若干爆発の過剰摂取でトリップ状態になってるっぽいポンが、ぎらついた眼でこちらを見る。避けないと容赦なく巻き添え食らうやつだこれ。

 慌てて地面にダイブすると、入れ替わる様に砲門が火を噴き、リザード達に砲弾が命中。

 爆炎に呑まれ、リザード達が苦しんでいる所にもう一発追撃を加えてから、砲塔が天井へと向けられる。


「気休め程度ですが、ここを封鎖して足止めします! 村人君たちも後方へ下がって!」


 ポンの指示に従い、俺とライジンは後方へ下がると、砲弾が天井に命中。

 派手な音を鳴らして天井が崩落し、瓦礫によってリザード達が押し潰されていく。


「やはりリザードはこうなる運命なのか……」


「なんかもうこれが恒例行事となりつつありますよね……」


「お前らのその認識、絶対歪んでるとだけ言っておくな」


 その光景を見て、しみじみと感想を呟く俺とポンにライジンがぼやく。うーん、やはり数が増え続けるリザード相手には岩盤崩落が最適解なんだろうね。お手軽処理万歳。

 そのままプレイヤー達と第三区と呼ばれるエリアから脱出し、外へと出ると、丁度【龍王】が通りがかっている所に遭遇する。

 巨壁から今居る位置までの移動が二十分ぐらい。……足止めが一切出来なかった場合のタイムリミットは後四十分と言ったところか。


「おいライジン、足止め兵器はまだなのか?」


「今Rosaliaから連絡が入った。準備が出来たみたいだぜ。……来るぞ!」


 その時、フィィィィィィイイン!! と甲高い音が周囲一帯に鳴り響く。

 上を見上げると、そこには巨大な網目状の光が出現していた。

 それと同時にメッセージが届く。送り主は恐らくRosalia氏だろう。


「あれが……!?」


「対龍王束縛兵器、【大光縄だいこうじょう】。大量のエア・マナを消費して発動する魔導兵器だ。あの光が地面に着いたと同時に地脈のマナと結び付くって原理らしい。大量にマナを使う分乱発は出来ないが、効き目は相当な物だ。通常のバインド系の魔法と比較すると実数値にして1万倍ぐらいの拘束力がある」


「これを設計した人間パねえな……」


 うーん、絶対ロストテクノロジィ。明らかにこの時代に対して性能がおかしいだろ。

 【大光縄だいこうじょう】がゆっくりと降下を開始する。【龍王】は危険視していないのか、はたまた気付けて居ないのか、気に留める様子は無い。

 【龍王】にその光が触れた途端、光が【龍王】の身体を覆い尽くし、地面に縫いつく形で固定された。


『──小賢しい真似を』


 さしもの【龍王】も即座に解除する事は出来なかったらしく、目論見通り動きを止める。


「よし、今がチャンスだ。ポン、村人、飛ぶぞ!」


「は?」


 いやちょっと待て、ここからそのままダイブ?

 あの、【龍王】の身体まで50メートル弱あるんですけど……?


「お先!」


「先に行ってますね、村人君!」


「あっちょ!? せめてポンは俺を連れてって!?」


 ライジンは【灼天】、ポンは【爆発推進ニトロブースト】で各々飛び出す。

 待ってくれ、俺はまともな移動スキルを持ってないんですけど!?


「ええい、こうなりゃ自棄だ! どうとでもなーれ!」


 このまま置いて行かれる訳には行かない。久しぶりの紐無しバンジーを敢行する。

 わーい、風が気持ちいいなー(現実逃避)


 勿論このまま落ちれば【龍王】の背中に血痕だけ残す羽目になるので、ある程度降りたら【空中床作成】で空中に床を作る。ガァン! と派手な音を鳴らして着地してから、再び跳躍。それを繰り返していく事で、何とか【龍王】の背中へと着地する事に成功する。

 ある程度慣れているとは言え、高所からのダイブは中々緊張する物だ。まだバクバク鳴っている心臓を落ち着けるように、荒い息を吐き出す。


「ライジンの野郎、誘っておきながら放り出しやがって……。……ん? 何だこれ」


 着地してすぐに目に入ったの近くに寄り、触れてみる。


「……さっき『増幅石』の塊を見つけた時から気になっては居たが、もしかしてこの塊って……」


 【龍王】の背中に点々と存在する、石の塊。

 恐らく地上へと浮上する時に地中にあった鉱石ごと地上に持ってきてしまったのだろうが、この塊もどこか見覚えがある色をしているのだ。

 まさかな、と思いながら他にまともなジョブが無くてたまたまサブジョブに付けていた【採掘士】のスキル、【サーチアイ】を発動。

 すると、目の前の石の塊が採掘可能ポイントである事が判明する。


「……マジか」


 いや本当に採掘ポイントなのかよこれ!?

 で、でもどうせ取れる鉱石なんてたかが知れてるだろうな。


 そう思いつつも、淡い期待を込めてウインドウを操作してピッケルを装備する。


「……試しに掘ってみるか」


 戦闘中だというのに関わらずピッケルを勢い良く振るう。カンッ! という小気味良い音がすると、アイテムの入手を知らせるウインドウが表示される。


『【アダマンタイト】を入手しました』


「……ん?」


 ……? 待て、今何かとんでもない物が見えた気がするんだが。

 一旦落ち着こう。いやー、まさか【龍脈の霊峰】で三百回ぐらい採取してようやく一個出た【アダマンタイト】がこんなゴミみたいに乱獲出来るわけないじゃないか。たまたま運が良かったのかもしれないし。

 ……取り敢えず、もう一回振ってみるか。


 カンッ!


『【アダマンタイト】を入手しました』


「……んん??」


 ま、まあたまたまラッキーが続いた可能性もあるし?


 カンッ!


『【アダマンタイト】を入手しました』


「……んんんんんんんんんん???」


 ま、まあ二度あることは三度あるって……。


 カンッ! カンッ! カンッ!


『【アダマンタイト】を入手しました』

『【アダマンタイト】を入手しました』

『【オリハルコン】を入手しました』


………………………………………………えっと、はい。



「とんでもない鉱石の宝庫だコレェェェェェェエエエエエ!?!?」

 

 



────


シオン「……どこかからお金の匂いがする単語が聞こえてきた気がする」


【補足】


SBO世界における鉱石類は、万物の元であるマナが集まる場所に高品質な鉱石が生成されます。

【龍脈の霊峰】はSBO世界でも有数のマナが集う場所。大陸中の地脈から流れてくるマナの中継点である為、マナが非常に高純度で、その量も膨大です。


そこに目を付けた【龍王】は、三千年前のとある出来事を経て、傷ついた身体の治癒の為に【龍脈の霊峰】の地底奥深くで眠りについていました。

その結果、【フォートレス】近辺が干からびてしまう程の量のマナを全身で吸収していた【龍王】の体表部分に、非常に希少な鉱石類が生成されてしまったわけです。


ざっくり言ってしまえばジ○ン・モー○ン、もしくはゾ○・マグダ○オスみたいな感じで鉱石がある物だと思って下さい。

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