#129 それはまるで夢のような
『【
【
この二つの大きな違いは、その
このゲームにおけるバトルロイヤルはオンラインアバターに
それぞれの
この
今回の俺の
つまり、これが何を示すかと言うと――――。
「さあ確率は5分の1!エキゾ砂の中で上手く引けるかな!」
遠距離特化型高威力砂『ネクサス』、超高レートマークスマンライフル『ボルテックス』、自動ロックオン型砂『ルック・フォー・ユー』、光学迷彩を纏った透明な弾丸を放つ『残響の彼方』、超威力特化型対物ライフルにして俺の愛銃、『ゼロ・ディタビライザー』。
この五丁の銃からランダムに一つ、【
上空からヘリの音が聞こえてくる。【
(大外れは『ボルテックス』、『ルック・フォー・ユー』の二つだ。遠距離戦をする上で高レートのマークスマンライフルでは微妙だし、『ルック・フォー・ユー』に至っては跳弾を狙う上でロックオン要素は邪魔でしかない。となると、他三丁の銃さえ出てきさえすればまだ太刀打ち可能だろう)
欲を言えば空気抵抗をゼロにするゼロ・ディタビライザーが出てきさえすれば遠距離戦が楽で、普段から使い慣れているからベストだが、贅沢も言っていられない。
確率としては5分の3。半分超えてるし行けるだろ!!でもボッサンがこの手の運ゲは100以外は信用ならねえって言ってたしなぁ…。
ライジンのタグが絡んでるんだ、幸運の女神が微笑んでくれるだろ!(他力本願)
◇
「へえ、僕の弾丸を悉くかわすかい。いくら跳弾の挙動を知っているとは言え、ここまで回避されると少し癪だな」
場所は変わってソルトシティ。その建築物の屋上で、バイポッドを立ててスコープ越しに傭兵Aを覗き込む金髪の少年……snow_menは意外そうな声で呟く。
どうやら、本当に跳弾の技術に関してはあちらの方が上手らしい。そう思ったsnow_menはUAVのカメラ映像へと切り替える。
「……ん?お、良いね!【
UAV越しに、ヘリが傭兵Aの元へと飛来してくるのを見て、snow_menはほくそ笑む。隣で立っていた新緑色の髪の大男……『Ashley』はその様子を見ながら、一言。
「なんだ、
「なんでそんな発想になるかなぁ?元々僕の目的は、彼と撃ち合う事なんだよ?そんな
【
それを楽勝と言ってのけるsnow_menにAshleyは呆れ交じりにため息を吐く。
「まあ、スノーがそう言うのであれば良いんだがな。待たされてる俺らの身にもなってくれ」
「だって君達行ったらすぐ試合終わっちゃうじゃん。多忙な僕達の久しぶりの自由時間だ、わがままに付き合ってくれよ」
『ネクサス』のコッキングレバーを引き、薬莢が飛び出して次弾が装填される。鼻歌交じりに照準を定めるsnow_men。銀髪の青年、『Hawk moon』はsnow_menを諭すようにゆっくり話し始める。
「他のプロとのスクリムもある事を忘れないでくれよ。ただでさえHOGは他のプロからの印象が良くないんだ。遅刻なんてしようものならチーミングされて潰されるぞ」
「そんなの返り討ちにすりゃいいじゃーん。あり?もしかしてホーク、ビビってる?」
「本当に君って奴は……。マナーの話だ、多対一なんて大したことない」
「言ってくれるじゃん!あは、やっぱ君はそうでないとねーっと」
snow_menの照準は、ヘリ……の下に括り付けられている、支給物資の入ったクレートへと繋がったロープに向けられる。風の煽りを受けながら不規則に揺れ動くそれを、正確に追い続ける。
「えい」
トリガーが引かれる。先ほど撃墜しないと言っていたのにも関わらず、今しがた行ったsnow_menの行動に、Ashleyは口をあんぐりと開けて呆ける。
「おいおいおい、どういうことだスノー」
「まあまあ、ほれ、双眼鏡。見てみそ」
けたけた笑うsnow_menが双眼鏡をAshleyに手渡す。首を傾げながら受け取ったAshleyは、高倍率の双眼鏡を覗き込むと得心が行ったように、ああ、と呟く。
「
「これでもエンターテイナーだからねぇ」
「楽しむのは良いが、時間を設けよう。……次の円縮小の時間……三分だ、それで片を付けろ」
「あいあいキャプテーン」
Hawk moonの言葉に、気楽な様子で敬礼しながら返すsnow_men。再びネクサスのコッキングレバーを引くと、スコープを覗き込んだ。
「さて、サービスはここまで。……さぁ、ここからが本番だよ。……来な、
◇
屋上まで駆け上がったと同時に、何かが落ちてきた。【
「うおったぁ!?」
支給物資の入ったクレートが静かに置かれるのではなく、回転しながら落ちてきたのだ。
ビルの屋上のコンクリートに強く打ち付け、派手な金属音を鳴らしながら転がるそれに、思わず心臓が飛び跳ねる。俺の後ろを付いてきたポンもひぅッ!?と悲鳴を上げた。
「うわービビったぁ、え、こんなことある……?」
呼んだ位置が悪かったのかしら……。いやでも、大体悪環境の場所に要請してもちゃんと配達してくれるんだけど……。新手のバグかしら。いやねえ物騒。
「……あ?」
上空を見上げてその異常に気付く。慌てて逃げ出すように遠ざかっていくヘリに繋がるロープが目に入り、俺は口を半開きにする。
途中からぶつ切りになっているそれは、明らかに外的要因があっての物。恐らくは尋常でないAIM力のsnow_menが狙って放った射撃による物だろう。……とことん、化け物じゃねえか。
「野郎、舐めプか」
さーて結構かちーんと来たぞ。風で不規則に揺れるロープの到達点を予想し、正確に撃ち抜くAIMがあるのであれば、ヘリそのものを撃ち落とす事だって容易な筈だ。だから、これは俺に対する挑戦状。対等な条件下で戦わせる為の一種の煽りか。良いね、世界最強。煽りの仕方も美しい。
「今の俺が世界最強にどこまで通用するか知る良いチャンスじゃねえか」
クレートを開封。中に入る物資を見てほう、と一つ息を吐く。
「『ゼロ・ディタビライザー』……!!」
なんてこった、幸運の女神は俺を見放さないようだ。だが、裏を返せば負けたときの言い訳が効かない。それでいい、言い訳なんて言わせるな。スナイパーは狙撃で語るんだ、結果こそが全て。
俺が今出せるその実力を、世界最強に見せつけてやる。
漆黒のスキンを纏った『ゼロ・ディタビライザー』にエネルギー弾用の跳弾マガジンを装填。液体状の薬品が注入され、静かな駆動音を立て始める。
そして三秒立ってブン、と重低音を響かせると銃身に沿って伸びるラインが淡く青色に輝き始めた。
『ゼロ・ディタビライザー、
「よし、ポン。援護頼む」
「任されました。……頑張ってください!」
ポンに双眼鏡と耳栓を手渡す。そして即座に銃にバイポッドを取り付けると、姿勢を低くしてゼロ・ディタビライザーを固定する。ゆっくりとスコープを覗き込み、トリガーに指を添えた。
「敵の数は3。……ッ……Ashley、Hawk moon、snow_menの三名です!マズルフラッシュが見えました!間もなく……!」
ポンの声を聞くと同時にトリガーを引く。ブォン!と大気が震える程のエネルギー弾特有の凄まじい重低音を響かせて、銃弾が射出される。
1秒そこらで俺の放った弾は飛来してきた弾に完璧に命中。空中ではじけ飛ぶのを見ながらリロードすると、笑みを作った。
「さて、いっちょぶちかましますかね」
────
【おまけ】
ソシャ廃ボッサン「良いか、傭兵。これは俺の経験談だが、成功確率云々が絡んでくるのは大体80、90%でも余裕で外してきやがる。素材が勿体無いと思っても100まで上げるのがベストだ」
傭兵「ほーん(20%ポチー)(成功)」
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