第12話 想う気持ち

「遼助、綾歌ちゃんどう?」

「ヘコんでる」

「そっか…」

「悪かったな。迷惑かけて」


「ううん。迷惑なんて思わないよ。むしろ逆に綾歌ちゃんの事が心配だよ。綾歌ちゃんの心配してあげなよ。お兄ちゃんなんだから。私は大丈夫!平気だから」


「妹の事も大事だけど彼女の事も同じ位、大事なんだから好きな女(ひと)の心配する事もいいだろう?」




ドキン



「遼助…ありがとう…」


「いいえ。アイツ、綾歌とは連絡取り合ってくれてるみたいで、すっげー助かってる」


「そんな事しか出来ないから」


「それでもサンキュー」




私達は色々と話をしながら帰る。





そんなある日の事─────




「雨降りそう…」




ポツポツポツ……



雨が降り出す。




「あれ…?綾歌ちゃん…?」



綾歌ちゃんの姿を偶然見掛ける。




「綾歌っ!待てよ!」




綾歌ちゃんと同じ位の男の子が綾歌ちゃんの後を追う。




「離してっ!結局、お荷物なんだよねっ!?」



そう言うと綾歌ちゃんは車椅子から手を離すように男の子を押し離し、動き出すとスイスイと走り出した。


私は後を追う。





すると─────




ガシャン


車椅子のタイヤが溝に綺麗にハマってしまい────




「やだ…どうしよう…?」



一生懸命に取ろうとするもうまく外れず、その周りを取り囲むように3人の男の人達が綾歌ちゃんを囲んだ。



「彼女どうしたの?」

「大丈夫?」



「大丈夫です。退いて下さい」



そう言うとそこから逃げるように去った。


私は再び後を追うも追い付きそうで追い付かない距離間。




その直後──────




道路側に飛び出してしまった綾歌ちゃんの方へ向かって、一台のダンプカーが────




ブッブーーッ……


響き渡る大きいクラクション。



「きゃあつ!」




ガチャン……




ドサッ



綾歌ちゃんはクラクションに驚き車椅子事倒れ込んでしまった。


車椅子から倒れた綾歌ちゃんは歩道側に匍匐(ほふく)前進に近い方法で一生懸命移動する。





次の瞬間─────




ガッシャーン……




車椅子は破損。


乗れる状態じゃない無残な車椅子が事故の後を物語っていた。




私は足早に綾歌ちゃんの元へと駆け寄る。



「綾歌ちゃんっ!!」

「…悠魅…さん…」



今にも泣きそうな顔で安心したのような表情で私を見つめる綾歌ちゃん。



「大丈夫だった!?怖かったよね……ごめんね…もう少し早く追い付いていれば…」



綾歌ちゃんは首を左右に振る。



「私が家まで送るから」

「えっ…?…でも…」


「一緒に帰ろう!私も大好きな大事な妹だから放っておけるわけないでしょう?何を言われようと助かった命なんだよ」


「…悠魅さん……」




私は綾歌ちゃんをおんぶする。



「傘、買わなきゃだね…」

「悠魅さん…」

「ん?何?」

「…ありがとう…」

「いいえ」



私は傘を買い私達は帰る事にする。


私の背中では綾歌ちゃんが泣いている。



彼氏と思われる人にフラれ、その後立て続けの災難に凄く恐怖を感じただろうと思う。




「はい」



玄関のドアが開く。



「まあっ!綾歌っ!?どうしたの!?」


「ちょっと…色々あって…偶然、悠魅さんが通りがかってくれたから凄く助かった。本当なら、まだ家には辿り着いてないよ」



綾歌ちゃんのお母さんは玄関のドアを開け私の顔を見ては、すぐは余り良い顔をせず綾歌ちゃんに尋ねる。


「悠魅さん玄関の所に私をおろしてもらって良いですか?」


「うん」




私は綾歌ちゃんをおろす。



「じゃあ私は帰るね」

「悠魅さん、あがって!体温めないと」

「私は大丈夫だよ。真っ直ぐ家に帰るから」

「駄目だよ!風邪引いちゃうよ」

「平気。それじゃすみません。失礼します」


「悠魅さん、どうぞあがられて下さい」


「いいえ、大丈夫です。ありがとうございます。綾歌ちゃんをお願いします」



私は帰る事にし車椅子の所に行く事にした。


破損していた車椅子は既に道の隅に回収してあり、私は、どうすべきか迷うも、一先ず玄関先に戻しておいた。



しばらくして────



「ただいまっ!なあっ!玄関先のって綾歌の車椅子っ!アイツに何かあったのか!?」


「帰って早々騒々しいな~。お帰り!お兄ちゃん。ていうか血相変えてどうしたの?」



綾歌が別の車椅子で現れた。



「えっ!?綾歌!?つーか、お前、大丈夫なのかっ!?」

「…えっ…?」

「いや…車椅子…」

「…車椅子…?まさか…悠魅さん…」

「えっ…?」



俺は綾歌から話を聞いた。



「アイツ…」



俺は綾歌が乗っている車椅子を押して部屋に連れて行く。



「…ねえ…お兄ちゃん…もし悠魅さんが車椅子だったら…迷惑?」


「えっ…?」


「好きな人が車椅子だったら面倒?」


「急にどうしたんだ?」

「ううん…」

「……綾歌…?」

「実は…今日彼氏にフラれちゃって……」


「彼氏ぃぃっっ!?えっ!?お前、彼氏いんの?」



まさかの妹の爆弾発言に俺は驚いた。



「…いた…が正しいのかな?以前、女の人といる所を見掛けて…喧嘩になっちゃって…やっぱり私なんかよりも普通に歩けて…健康な女の子が良いんだよね」


「綾歌…」



「…私…恋愛出来るのかな…? 悠魅さんとお兄ちゃんみたいに恋人同士になって街に出て手を繋いで…子供を産まないまま年を取っていくのかな…?」


「大丈夫。お前可愛いんだし、すぐに良い奴は現れる」


「無理だよ…私に普通の恋愛なんて出来ないんだよ!こんな足にならなきゃ私だって…」


「自分を責めるのは辞めろ!だからって悠魅の家族も悪くねーだろ?」


「分かってるよ!分かってる!…だけど…私だって普通に恋して恋愛楽しみたいんだよ!普通の女の子なんだよ!」


「恋愛して幸せになれるなんて保障ねーぞ!どんなに愛し合ってても障害あっての恋愛なんだ。今の俺達が、そうじゃん!お互いの両親が良い気してない」


「…お兄ちゃん…」



「だから俺はアイツの悠魅の泣き顔なんて見たくねーし、悠魅には笑顔でいて欲しいから。もちろん綾歌にも笑顔でいて欲しい」



俺は腰おろす。




「だから、綾歌が悠魅の事を本当のお姉さんみたいに懐いてくれた時は、スッゲー嬉しかったし悠魅が綾歌の事を嫌な顔をせずに本当の妹みたいに仲良く接してくれてる時、あー、この2人なら上手くいくかもな~って…」



「…………」



「お互いを大切に思う気持ちがあればって俺は思う。3人の思いは比例してて欲しいんだ。嬉しい事も楽しい事も悲しい事も幸せだって、どんな時も何があっても3人で共有して、だからこそ、お互いの両親に俺は認められたい!俺達は、そこの大きい壁乗り越えなきゃ前には進めないんだ」





そして私は次の日、学校を休んだ。


もちろん理由は風邪。


無理もない。


傘を差していたものの体は冷えまくっていた。




その日の夕方以降、家に訪問者が────



親がいない為、私が玄関先に出迎える。




ドキッ



「えっ!?りょ、遼助…!?ちょ、ちょっと待って!何しに来たの?」

「お見舞い」

「いや…お見舞いって…」




私を玄関の中に押し込んだかと思ったら、すぐに抱きしめられた



「うわっ!ちょ、遼…」

「サンキュー」

「えっ?」

「アイツ…綾歌の事…スッゲー助かった」


「あー…偶々、通りがかったから。心配で後を追っていたのもあるんだけど…」


「えっ…!?」



抱きしめられた体を離す遼助。



「あっ…いや…でも私にとっても大事な妹みたいなものだし」

「そっか…サンキュー」

「ほら!帰った、帰った。風邪移っ……」



キスされた。



「バ、馬鹿っ!本当に移っちゃうよ!」

「俺、天才だから移んねーし。じゃあな!」




そして帰ろうとしてドアに手を掛けた瞬間、玄関のドアが開いた。




「あら?お客様?」



母親が帰宅。




「こんにちは。お邪魔しました」

「ゆっくりしていけば良いのに」

「いいえ」


「お母さん。彼が私の付き合ってる人・成宮 遼助君。そして、彼には妹さんがいて彼の妹さん事故で車椅子生活してるの」


「まあ…」


「それで…彼の妹の人生を変えてしまったのが私達家族なんだ…」


「…えっ…!?」


「悠魅…それは…」


「私達が家族で出掛けている時、交通事故遭った時の事、覚えてる?病院に行った、あの出来事」


「…ええ…」


「その時の被害者側の家族の兄妹なんだ。だけど私達は自分達に責任感じながらも今まで仲良くして変わらなく接してきてるの」




「……………」




「彼のご家族の人達は良い気してないのは十分承知してる。だけど私達は、これからも、ずっと一緒にいたいし妹の綾歌ちゃんも私に凄く懐いてくれてるし私だって本当の妹みたいに向き合って過ごしてるの」



「…悠魅…」



「…悠魅…お前…」



「だから、お母さん、私達の交際を認めて欲しいの」


「悠魅…あなたの気持ちは十分分かったけど…あの…本当に…当時はすみません…何度謝っても申し訳つきませんけど…」


「いいえ…兄である俺が妹をしっかり見てれば良かったんです。だけど俺達は気にしていません。命があるだけでも良かったと思っています。妹も本当に、お姉さんみたいって凄く懐いてるし。だから俺からもお願いします。俺達の交際を認めて下さい」



「…いいえ…そんな私も、お父さんも頭があがらない位、家族に御迷惑を御掛けしているんですよ。しかも、そんな車椅子生活にさせてしまったなんて…ご両親には改めて家族で御詫びに伺います。良い気しないかもしれませんけど……ご両親に宜しく御伝え下さい」



「分かりました。それでは失します。じゃあな!悠魅。早く風邪治して学校来いよ」


「うん…ありがとう…」




遼助は帰って行く。


































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