第9話 出来始める距離~君の笑顔~

「お兄ちゃん」

「どうした?綾歌」

「悠魅さん…元気してる?」

「えっ?」


「メッセージ送っても、なんか忙しそうみたいだし」

「元気してるけど」

「…そっか…」





寂しそうにしている表情の妹の綾歌



本当の姉のように慕って仲良くしていたから


無理もないだろう……


だけど


あの話を聞いてから





あの後の俺達は───





「悠魅」



ドキッ



「…遼…」





グイッと彼女・悠魅の手をつかみ立ち上がらせると抱きしめた。




「…俺達…前に会ってたんだな…違う形で…」

「…うん…」



私は遼助を抱きしめ返した。



「…ごめん…私…綾歌ちゃんの人生…」


「お前も、お前の両親も悪くねーよ。俺が綾歌の手を繋いでいたら…」


「遼助は悪くないよ!だって妹が綾歌ちゃん被害者なんだよ!私達が通らなければ…」


「それは俺達だって一緒だろう?通らなきゃ…綾歌は…」




私達は抱きしめ合った体を離し向き合う。


フワリと両手優しく両頬包み込むように触れる。



ドキン


瞳の奥から見つめる優しい眼差しに胸がドキドキ加速する。



「…そ、それじゃ…帰るね…」



私は体を離し始める。




グイッと引き止められたかと思うと壁に両手をつけ両手で行く道を塞いだ。



ドキッ



「…遼…」



キスで唇を塞がれ離れると、すぐに唇を塞がれた。


今までにない何度も向きを変え繰り返すキス。


私は、それに応えるのに精一杯だ。


そして吐息交じりの声が漏れてしまった。


恥ずかしいと思う中、身体が一気に熱くなったのが分かった。




「……………」



「…悪い…」


「…ううん…」





《恥ずかしい…》



私を抱きしめる。





「早く知ってれば…こんな思いしなくて済んだのにな…俺達…付き合ってる訳じゃねーけど…しばらく距離おいた方が良いかもな」



ズキン


胸の奥が痛む。



「…そうだね…」




私達は、距離をおく事にした。




友達以上恋人未満


キス止まりな関係


遼助にとって私は



恋人以上にはなれなくて


ただ寂しさを紛らわす


相手に過ぎないんだよね……



私の想いは


一方通行なんだよね……





「ねえ、お兄ちゃん、悠魅さんと同じクラスだし伝えておいて」

「えっ?」

「悠魅さんに会いたいって私が言ってたって」

「メールすれば良いじゃん!」


「だって忙しいって…都合の良い日、教えてってっ言っても、すぐに返事くれなくて」


「アイツにしては珍しいな」


「彼氏出来たのかな…?」

「彼氏ぃぃっっ!?いやっ!それは絶っ対ないっ!」

「…そんな否定しなくても…」

「否定はしてねーし。アイツは…」



「…………………」




「…何?」

「いや…何でもない。取り敢えず伝えておくから連絡待ってろ!」

「…う、うん…」





次の日────



授業中に私宛に手紙が廻ってきた。


遼助からだ。





【綾歌が会いたがっている。遊びに来て欲しい】

【後、連絡、普通にしてやって欲しい】

【俺が距離おこうと言ったばかりに、逆に寂しい思いさせてた】




【分かった】

【連絡取ってみるね】




私は連絡をする事にした。




そして────




「悠魅さぁぁ~ん。もう超~~会いたかったよぉぉ~~」



抱きしめて欲しいような仕草で手を広げ伸ばす綾歌ちゃんの姿。



《か、可愛い過ぎる……》




「ごめん。ごめん」



私は抱きしめた。


綾歌ちゃんは、抱きしめた体を離す。



「本当に彼氏が出来たとかじゃないんですか?」

「違うよ」

「駄目ですよ!悠魅さんは私のお姉さんになる人なんですから」

「えっ?ええっ!?お、お姉さん!?」

「はい!」




満面の笑みを見せる彼女に胸が痛い。




今 こうして笑顔で迎えてくれる彼女


彼女は真実を聞かされた時


彼女は


どんな顔で


どう対応するのだろう……?




正直 私自身は複雑で



平常心を保てない



自分がいた













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