ありのままで
「……い、いきますよ! あの、質問とかはマネージャーさんからお願いしますね!」
近づいて
「……こ、こんにちは〜来てくれてありがとうございます!」
「……初めましてです! …………ありがとうございます! 頑張ります! それはもうめちゃくちゃ!!」
「……こんにちは~あっ、来てくれてありがとうございます!」
「……うん、好きな食べ物は納豆以外です! 納豆だけはどうしても、どうしてもダメなんです! おいしい納豆料理紹介されてもムダです!」
「……こんにちは! どこからですか? あっ、北海道から! 遠くからありがとうございますです! 北海道はデッカイドウって実際どうなんですか? 聞き飽きた? ああ〜はい〜」
「……は、恥ずかしくてそういう台詞ちょっと言えないです! 練習しときます!」
「……家ではひたすらアイドルの研究をしてるであります!」
「……緊張してる? 大丈夫! 私も緊張してますが大丈夫なのです! 私とたくさん話して緊張を乗り越えていきましょう、です!」
「……100本ノック達成です! やりました! やった! やったーマネージャーさん!」
ハイタッチ
「あぁ~!! また夢中になって失礼なことを! なんとお詫びしたらいいか! ……えっ? 今の笑顔最高だった? そ、そんなこと言われても、は、恥ずかしいです。と、とりあえず休憩しましょう! 」
横に並んで
「……マネージャーさん、疲れてないですか? ……いえ、そう強がってはいますが顔が引きつってますよ。まるで徹夜明けのパンダみたいです。……見たことないですけど」
少し沈黙
何か体を動かす音
「……マネージャーさん。ひ、膝枕というやつです。ここへ頭を乗せてください。……私は慣れっこなのでまだ元気なのです。……思えばマネージャーさんに長い時間付き合ってもらってたので、これはそのお礼です。他意はありません。どうぞご遠慮なく」
「……マネージャーさん、やっぱり頭熱いですね。100本ノックやったからですね。……どうですか? 痛みとかはないですか? ……気持ちいい? ふふっ、ありがとうございます。膝枕気持ちいいですよね~私も好きでした。子どもの頃はよく膝枕してもらいながら耳かきを堪能したものです」
「……マネージャーさん。私、いいものもってるんです。膝枕と言えばこれです! 耳かき! ……なんでそんなもの持ってるかって? お手入れです! アイドルは常に美容に気をつけていないといけないですから」
「右耳からいきますよ。……恥ずかしがらないでください! これは……その……ただのお礼なんです! 受けた恩は必ず返さなければ! た、他意はないです」
「(耳かきしながら)……マネージャーさんって、アイドル論もわかるすごい人だったんですね。……えっ? だって、キャッチフレーズを捨てろ! とか、キャラを捨てろ! とか、笑顔をつくるな! とか。一見むちゃくちゃなことを言ってるようで、私を急成長させてくれたじゃないですか?」
「……えっ、えっ? 何がおかしいのですか? あんまり笑ったら耳かきが上手くできないですよ〜」
「……えっ? 口からでまかせ? ……ごめん、ごめんって……本当なのですか? ……こ、こ、この人! もう!」
「……でも、私を変えてくれたのは確かです。私、気づいたのです。天然キャラに向き合ってたのではなく、逃げていたんだってことに」
「……はい、今度は左の耳ですよ」
「……ちょっとこっち見られてると恥ずかしいです。目を閉じていてください」
「……そう、私逃げてたんです。真面目キャラの自分は面白くないし、かわいくないって。本当の自分は面白くないし、かわいくないって」
「だから、アイドルになった以上、そんな自分じゃダメだと思って天然キャラでいこうと思ったんです。そしたら私も変われるかもしれない。アイドルになって変われるかもしれないって」
「でも、本当は偽ってただけだったんです。本当の自分を偽って、猫を被って、嘘をついて……でも、本当の私は私のままで何も変わらないんです」
「マネージャーさんが止めてくれなかったら、私は応援してくれるファンの皆様にも、先輩方にもマネージャーさんにも、大変失礼なことをするところでした。そして、変わりたかったはずなのにいつまで経っても変わらなくて、私は私自身に失礼なことをするところでした」
「もしかしたら、面白くないかもしれない。かわいくないかもしれない。でも、最初のスタートは、私は真面目キャラでいくことにしました」
「……だからマネージャーさん! マネージャーさんには明日の私を見ててほしいのです! ……マネージャーさん? マネージャーさん? もしかして寝ちゃったですか? そ、それは困ります! 私はこれからまだダンスと歌の練習が!」
笑い声
「……まあ、いいです。私も少し休憩します。……マネージャーさん、おやすみなさい」
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