キャッチフレーズは忘れろ!
「ま、まずは何からやれば……あっはい、私の自己紹介からですね。わっ、わかりました。一生懸命やらせていただきます!」
立ち上がる
少し距離が離れる
咳払い
「(声を高く)みんな、やるよ~、『納豆大好き〜何でもかけちゃう〜うぅう〜みんなでネバネバ〜』、納豆大好き新人アイドルです!」
「……あぁ~名前を言い忘れてた〜じゃあ、もう一回最初からいいですか〜? ありがとう〜ございます〜」
もう一度咳払いをする
「(声を高く)みんな、やるよ~、『納豆大好き〜何でもかけちゃう〜うぅう〜みんなでネバネバ〜』、納豆大好き新人アイドルーー」
「……えっ、ぎこちない? そ、そうですか? わかりました! それではまずこれを100本ノック!」
「……違う違う。ん〜どこがどう〜やっぱり、『納豆大好き〜みんなにかけちゃう〜』の方がいいですかね? それとも、こうネバネバをより強調するためにネヴァネヴァ〜とかですか? いっそオクラも混ぜちゃいます? もうネバネバ系アイドルとして! ネバネバ界をしょって立つ!」
「……そうじゃない。まず、納豆キャラがおかしいって? いえ、お待ちください! これには深い深い、深海のように深いわけがあるんです!」
ちょっと近づく
「ほら、納豆って。ネバネバしてるじゃないですか? ……そうです、当たり前なんですけど。ネバネバして一度私を好きになってくれたら二度と離さないぞ〜っていう……あれ? ピンときてない……そ、それに納豆キャラってそんなにいないと思うんです。きっと、インパクト大でみんな盛り上がるかな〜……って、納得してなさそうな感じですね。納豆だけに。面白くないですね、すみません。……わかりました。最大の理由を教えます! 私は、実は納豆が大大大大大嫌いなんです!」
「……えっ、ちょっと! 頭抱えてる? なんで? いえ、そもそも大前提として好き嫌いってしたらダメじゃないですか。私は幼少期からきつく言われていたんです! 食べ物を粗末にしてはいけないよ、と! しかし、そんな私にも唯一食べられない唯一無二な存在がいるんです! それがNattou! 納豆なんです! だからこそ! 納豆好きをアピールすることで自然に納豆を食べる機会が増え、納豆嫌いを克服しようという一石二鳥的な狙いがあったんです!」
「……とりあえずわかった? ああ、はい。理解していただいてありがとうございます! ……あっ、天然キャラを演じてた理由ですか? それはほら、アイドルの典型的なイメージの一つです。先輩方じゃなかった女神様たちは、天然キャラいないですし、私がそこを担うことでこのグループもさらに大きくなるのではないかと! 天然って偉大ですよね! 人と違う感性を持つがゆえに人からの注目を浴びるという!」
「……ちょ、とても難しい顔して考え込んでしまった! す、すみません。私、やっぱり不甲斐なくて、う~困らせてしまう!」
「……えっ、なんですか? 今なんと……天然キャラと納豆のキャッチフレーズを捨てろ! っと。えぇ!? ですがもう今日の明日ですよ! 今から他のキャッチフレーズなんて! それにキャッチフレーズが間に合ったとしても、今から新しいキャラになんてなれないですよ! このキャラに慣れるまでだって1年くらい練習してやっと慣れてきたんですから〜!!」
「……えっ? 私にふさわしいとっておきのキャラがいる!? そそそそれはいったい!?」
「……真面目キャラ? いやいやいやいや! 真面目キャラなんて面白くもかわいくもなんでもないじゃないですか!? 私なんて子どもの頃から真面目一筋で友達にもちょっと気になってた人からも(ちょっと気になってた人のマネ)『お前、全然面白くないよな』って言われてきたんですから! ダメです! 絶対絶対人気出ないです!!」
「……僕は面白いと思う? そ、そうなんですか? ……それにかわいいと思うって……あっありがとうございます。……いやいやそうじゃなくて! 私は! こんな真面目過ぎる自分を変えたくてアイドルになったんです! それなのに真面目キャラって、なんにも変わらないじゃないですか!?」
「……とにかくやってみろって? う〜わかりましたっ! でも、絶対絶対全然ダメだと思います! ダメだったら天然キャラに戻しますからね!」
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