第15話 機長イナンナ

宇宙港ではイナンナのニビル派遣式が行われている。


この宇宙港はエリドゥではなく、ディルムンに建設された新宇宙港である。エリドゥ宇宙港に比べて遥かに規模が大きい。


エリドゥ宇宙港が地方空港ならディルムン宇宙港は羽田や成田、関西空港レベル、あるいはそれより大規模な宇宙港であった。




イナンナは神のアヌに挨拶した。



「偉大なる我が神アヌ、これより地球全権代表としてニビルへ行って参ります!」


「うん!気をつけてな!」


「はい!」


イナンナはルクブ・イラニに乗り込もうとする。しかし…


「私が操縦する。」


イナンナは客室の搭乗口ではなくコクピットに向かった。


「しかし閣下…」


ルクブ・イラニの機長は当然困惑した。


「一度ルクブ・イラニを操縦してみたかった。それに自ら操縦までする勇ましい者だとニビルに印象付ければ交渉にも有利なんじゃないかな?責任は私が取ります。」


機長はコクピットの後ろの席に座り、イナンナが機長席に座った。


「管制官、ルクブ・イラニ機長のイナンナです!フライトプログラムを報告します!」


「イナンナ?……まさか長官?どうしてコクピットに…」



管制官は一瞬戸惑ったが、管制官もイナンナと同じニビル軍太陽系艦隊出身であり、イナンナをよく知っていた。



イナンナはニビルまでのフライトプログラムを管制官に報告した。


「ルクブ・イラニに報告する。カガ(冥王星)付近に彗星が滞留している!注意されたし。」


「了解!」


「ルクブ・イラニ、フライトポイントに移動せよ。」


ルクブ・イラニはゆっくりとフライトポイントに移動した。


「ルクブ・イラニ、テイクオフ許可する。」


「ルクブ・イラニ、テイクオフします。」


ルクブ・イラニは護衛艦と共にゆっくりと上昇を開始した。


「ルクブ・イラニご搭乗の皆様、機長のイナンナです。ニビルまでの飛行時間は約4時間を予定しております。」



地球の大気圏を抜けて宇宙空間に到達したルクブ・イラニはニビルに向けて航行を開始した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る