第10話 シックルの剣
エアの活躍により、ニビルへの金の輸出は伸び続け地球は莫大な利益を得ていた。もちろん人類を労働力に投入した事が大きい。
アヌンナキの暴動も鎮静化していった。
アヌンナキは税金を支払う義務を負っていたが、各都市の代表者からなる最高評議会はアヌンナキへの税負担をなくした。
豊かになったアヌンナキはエアを英雄と崇め始めた。
エアは人類からも尊敬された。
アヌンナキは人類を粗末に扱っていたが、エアは事あるごとにそれを諌めてきた。
エアは最初の人であるアダムを自分の側に置いて色々と相談に乗ってもらっていた。
「エンキのお陰で我々も豊かになっている。」
エンキとは「エア達」に意味が近い。アヌンナキが最初「アヌ達」に近い意味合いから始まった事と同じである。
しかし「エンキ」はエア達を意味する名称として広まらずエア個人を指す名前となった。エアと個人的に親しい者は彼を「エア」と、そうでない者や低い身分の者は「エンキ」と呼んだ。
「エア、人の寿命がどんどん短くなっている。アヌンナキの遺伝子を時々入れないと滅びるかもしれない。」
「わかった!」
エアは快諾した。
「アヌンナキの力を我々も欲しいんだ。」
アダムはエアに訴えた。
人類から見たらアヌンナキの文明は驚く以外なかった。
腕時計を使用して、ホログラムで何キロも離れたアヌンナキと会話を楽しんだり、車で移動する事など不思議で理解できなかった。
「うん!しかし、他には内緒だぞ。アヌンナキの中には人類が賢くなるのが気に食わない奴がいるからな。」
アダムとイヴはエアの遺伝子を色濃く受けていたので、誕生以来すでに数万年を生きていた。しかし、血筋が遠くなるにつれてアヌンナキの遺伝子が薄くなり、地球の生物の寿命に近づいており短命になっていた。
アダムはそれを危惧していた。
人類はアヌンナキが無理やり遺伝子操作をして作り上げたものであり、自然に生まれた生物ではない。地球環境に合わない生物ならその内絶滅するのではないかとアダムは恐れていた。
アヌンナキの「力」があれば人類が滅びすに済むのではないかと考えていた。
アダムがエアに装飾が施された長細い物を差し出した。
「それは何だ?」
エアはアダムに尋ねた。
「剣だ。私が作った。」
アダムはエアを屋外に誘う。そして鞘から剣を抜き、近くの木を斬った。
「何!?木が2つに割れた!!」
エアはその様子に驚いた。
アヌンナキは物の切断には主にレーザーを用いていた。物を用いて他の物体を切ると言う概念がなかったのだ。
「私はこれを『シックルの剣』と名付けた。エアの権威の象徴になればいい。」
アダムはその剣をエアに贈った。
「ありがとうアダム。」
アヌンナキを豊かにした功績を称え、最高評議会はエアに「地球の指導者」の地位を与えた。
エアはアヌンナキや人類にシックルの剣を見せつけ権威を誇示した。また自身も常にその剣を身につけた。
エアの権威が高まっていくにつれて、彼が身につけるシックルの剣は権威の象徴となっていった。
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