第2話 領主邸食堂

「誕生日おめでとう!アリス!」


「ありがとうございます、お父様…」


アリス・メイ・サウザーは返事をするが覇気は無い、アリスは生まれつき目が見えずその為性格が少々消極的である、5歳の誕生日を迎えたアリスは屋敷からほとんど出た事が無い。領主家の次女として生誕のお披露目も行われていない、兄・姉・弟・兄弟姉妹は3歳の誕生日に生誕のお披露目会が行われているので、アリスは領民には知られていない娘である。家族仲は悪くない、悪くは無いが祖父が偏屈で生まれつき目が見えないアリスのお披露目を許さなかったのである。


「アリスどうしたの?食事で嫌いな物があったかしら?」母マリアンヌが問いかけるも、


「ありがとうございます、美味しくいただきました。私の為にわざわざすいません。」


よそよそしい返事のアリス、領主家の一員として役に立たない自分を恥じているのだ。

両親や兄弟達はアリスを疎ましく思っているわけでは無い。どうにかして心を開いてほしいのだが、この世界には心のケアを行う施術が存在しないのである。


この日の誕生日会も粛々と何事もなく終わってしまった。



領主で父親のアレックスはこの日の為にアリスに似合うであろう流行りのドレスや靴などプレゼントを用意していたが喜んではもらえず落ち込んでいた。

目が見えないアリスにとっては綺麗なドレスや靴など取るに足らない、もちろん、アクセサリーなど興味すらない。それよりも肌触りや快適な衣類は判断できる、色やデザインは見えないがゆえに普段から目立たない地味な物で用意をお願いしていた。


(そうだ、乳母のメリーアンなら何か知っているかもしれんな。)アレックスは早速メリーアンを呼び寄せアリスについて問いかける。




「メリーアン、アリスのことなのだが最近はどの様に過ごしている?」


「はい旦那様、アリスお嬢様は日中に本の読み聞かせと、毛糸の編み物をされており、体調がよろしい時などは庭の散策をされておいでです。」


「目の具合はどうだ?」


「光を感じる取ると云うより、暖かさを感じられている様です。」


「そうか、良くはなっていないのだな。」


「…旦那様、少しよろしいでしょうか?最近市井の一部でペットと称して小動物を飼育し愛でることが流行っているそうです。」


「食用では無く猟犬でも無いのか?何かアリスに関係があるのか?」


「はい旦那様、子供が授からなかった夫婦や年老いた者が心を癒やす為との事です。人には話せない事もペットになら話せ、愛でる事で心を癒すそうです。アリス様も癒せるのではないかと…」


「なるほどな、市井ではペットか…危険は無いのか?所詮は動物だアリスが怪我をしては本末転倒だぞ。それに話し相手はメリーアンでは不足なのか?」


「はい旦那様、乳母である私にもアリス様は気を使われます、他の使用人とはほとんど会話もございませんので、アリス様のお心のままに話されるお相手が必要かと…」


アレックスは市井でペットを販売している者を呼ぶ様に執事に頼んでおく事にした。

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