アリス・メイの非日常(仔猫はアリスの安寧を願う)
優良脂肪
第1話 寝起き
「ふぇっくしょん、」
うぅさぶっ、布団を蹴飛ばしたか?そろそろ起きる時間か?
よしっと、起きるか。…起き上が…あれっ立てへんぞ。
「どこや、ココ?…」
いつもの自宅のベッドでは無い、籐で編まれた大きな籠に毛布?ボロ布で寝床が作られている。視界に映る自分の右手には桃色の肉球が付いている…グッパッと拳を握ってみる、指先に力を入れてみる、ニョキっと可愛い爪が見える。
「なんじゃこりゃ!」
寝起きどころでは無い。一気に覚醒した。左手は?っと確認すると同じように肉球が付いている…紫色の。身体は白い毛に覆われて脚の間から尻尾がゆらゆら揺れている、所謂ヘソ天状態である。
「夢か、よく寝た気がしたけど疲れてるんやな?二度寝しよ。」
すると、何処からかデカイ三毛猫がやってきて優しく囁くように話しかけてくる。
『起きたかい坊や』
喰われるかと思うほど大きい三毛猫だ。ビックリして動く事もできない、そのまま頭や顔やらを舐め回されてされるがままに時間が過ぎてゆく、どうやら喰う気は無いようだ。と言うより優しさを感じる…母性?この大きな三毛猫さんはママさんなのだろうか?と言う事は自分が仔猫と言う事か?
そうか周りが大きいのでは無く自分が小さい猫…仔猫か。この設定の夢は初めてだな、夢見で疲れたけどもう一度寝て忘れよう。
起きたら夢見診断でもお願いしてみるか、疲れが溜まっているのか。
今自分はママ三毛猫さんに籠の中でモフモフでホカホカと抱かれている…、どうも夢では無いようだが現実なのかどうかも怪しく解らない。
少し現実逃避をして昨晩の行動を思い返してみる、仕事から帰宅後に風呂に入り夕食を食べたあと帰りがけに買ったチーズケーキを子供達とデザートがわりに一口食べただけである。それから寝て起きてみると仔猫って…どゆこと?昨日のおじさんマークのチーズケーキの残り朝の楽しみに置いていたのに。
考えるほどに謎は深まる。
と、考察していて気付く事もある。そう、自分自身のパーソナルデータの記憶が曖昧なのである。自身の名前、奥さん子供の名前、住所など個人を特定する為の情報の記憶が思い出せない、記憶喪失?住所なんて日本しか思い出せない、ざっくり過ぎて…意図的か?
あのチーズケーキは関西圏のはず、先ずは近畿出身という事で。
見掛けは仔猫頭脳は大人…的な。ちょっと違うか。
いや、それどころかこのツッコミどころ満載の状況で喫緊のするべき事は、おトイレである。ちょっと大きい三毛猫さんに聞いてみるか。
「あのーすいません、おトイレはどちらでしようか?」
『どうしたの、忘れたのかい?しょうがない子ね。』と、お尻をペロリと毛繕いをしてくれる。
「ひょっ!」思わず声が出てしまう、そこは大事なパーソナルスペースなんです!
「ば、場所だけ教えていただけたら。」
『自分で出来るかい?なら、着いておいで。』
と先導してくれる様だ、三毛猫ママさんはひょいと籠から出ると歩き出した、着いていこうと籠の外に出ようとするが、籠の縁に後脚が引っかかりころがってしまう。なかなかどうして四つ脚は難しい。まごまごしていると三毛猫ママさんに首の後ろを咥えられ『しょうがない子』ってな感じで運ばれて行く。
ブラーん…
あぁ、これは動けないな。噛まれている訳ではないので痛くはない、甘噛みとも違う、愛情さえ感じるほどだ。そして、されるがままである。
部屋の端におトイレの砂場が用意してある。飼い猫の室内飼いみたいだがお手入れもされていて、部屋も片付けられていて小綺麗である。
当然フルオープントイレである!開放感抜群!360度見晴らし良好!
…小っ恥ずかしい…なに、この羞恥プレイは?
三毛猫ママさんに見られながらなんとか用を足し『良くできました』と褒められ、部屋の中を確認する。先ずは現状確認をしなければ!
いくつかわかった事がある。
先ずは、飼い猫で室内飼いである。
兄弟達は何匹かいたが貰われていった様だ。
世話はメイドさんの様である。時々成金女性がやって来てメイドさんに指示を出している。メイドさんの話を聞いていると水は井戸から、火は薪を使う、カル○ファーでもいるのだろうか?
外の様子が伺えないので、何処の田舎かわからないがメイドさんを雇うぐらいには裕福な家なのだろう、その割に水道とガスが来ていない田舎って何処だろうか?電気は?部屋に照明器具がない。自給自足?
そう言えばメイドさんって、茶髪や赤毛で顔つきは洋風で、服装もメイド服っぽくない、仔猫目線のローアングルだと分かりにくいわ。
部屋の感じも、洋風?洋間?な感じで殺風景だ。板間だし。
それに、猫の言葉も人の言葉も理解できている事に驚きを隠せない。
隠してるけど…
当面の衣食住は大丈夫そうなので様子見か…
さて、どうすれば良いのやら。
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