191話:王城侵入
「王都の門を抜けました! このまま城まで直行しますよ……!」
「待て待て! ウィーネさん、少し落ち着けって!」
王都に到着した夕方。
王都へと入った俺たちだったが、勢いそのままに王城に向かおうとするウィーネに待ったをかける。
そんな俺の言葉に、ウィーネはキッとこちらを睨みつけるように振り向いた。
「落ち着けるわけがないでしょ!? 急がないと師匠やアイシャさんたちが……!」
「それはわかるが、まずは話を聞け《火妖精》。僕らは二日かかる道のりを、たったの一日で走破したんだぞ? そんな状況で、しかも相手の戦力も不明ときている。どう考えても無理をする状況ではないはずだ」
「で、でも……!」
ヴィーヴルヴァイゼンの説明に顔を顰めたウィーネ。
そんな彼女の服に手を伸ばしたサンクティアさんは、「すまねぇ、ウィーネさん……」と謝罪を口にする。
「おれのせいで皆さんどころか、ウィーネさんの大事なお仲間さんまで巻き込んじまった……! それもこれも、グレゴリアを野放しにしちまったおれの責任。本当に申し訳ねぇ……!!」
「それはあなたのせいじゃ……!」
振り返って叫ぼうとしたウィーネだったが、目に涙を浮かべるて頭を下げているサンクティアさんを見てその口を閉じる。
そして、手綱を握りしめながら大きく深呼吸をすると、やがて馬車の速度を落とした。
「……そうですね。少し焦りすぎていたかもしれません」
「その通りだ、《火妖精》。まずは休息を取って、それから状況を整理した方がいいだろう」
「だな。見たところ、王都そのものは前と変わっていない。王城以外には、まだ手は及んでいないと見るべきだろう」
少なくとも、俺たちが入った商業区の大通りは以前のままだ。
いろんな店が開き、それを目当てに集まった客がところどころを行きかっている。
馬車を飛ばしていた俺たちに彼らの視線が向けられていたが、すぐに興味をなくしたようでまた日常へと戻っていく。
そんな中を馬車で進む。
「とりあえず宿を取るべきだろう。僕も真夜中の道中、魔法で明かりを灯し続けて疲れたが、ずっと御者を続けていた《火妖精》の疲労も相当なはずだ」
「おかげで明るかったよ。ありがとな、ヴィーヴルヴァイゼン」
「ふははっ! なに、この程度僕にかかれば造作もないことさ。まあ? そんなに感謝したいというのなら、受け取ってあげなくもないけどね」
ふふん、と得意げに胸を張るヴィーヴルヴァイゼンだったが、夜通し魔法を行使し続けたのだ。日中も、急いで飛ばしている馬車で休めるはずもない。
現にその足は、魔力を使いすぎた影響で今にも崩れ落ちそうなほど震えていた。
そんな彼の肩をポンと叩き、もう一度だけありがとうと伝えれば、彼は一瞬キョトンとした表情を浮かべてからニッと笑う。
「ウィーネさんも、宿についたらおれが癒させてくれ。普通に寝るより、かなり早く疲労が取れるはずだ」
「それはありがたいですね……ぜひお願いします、サンクティアさん」
「おうとも! 任せてくれ」
チラと見てみれば、手綱を握るウィーネの隣に座ってサンクティアさんが腕まくりをしていた。
ウィーネも完全に落ち着きを取り戻したのか、そんな彼女の笑みに少し笑って馬車を進ませる。
そしてたどり着いたのは、以前王都に来た際にも利用した宿だった。
サンクティアさんはウィーネとともに休むため、俺、ヴィーヴルヴァイゼンを含めて三部屋を借りる。
「では、夜にまた集まりましょう。だいたい二時間程度でしょうか? 十分に体を休めて、時間になったら私たちの部屋に来てください」
「最悪は戦闘も考慮しないとだからね。まぁ、最低でもそのくらいは休むべきか」
「わかった。なら、また二時間後に」
サンクティアさんとともに部屋へと入っていくウィーネを見送り、続いてヴィーヴルヴァイゼンも自身の部屋へと姿を消した。
残った俺も、三人と同じように部屋へと入る。
そして、入室するとともに【換装】の魔法で魔法使いとしての姿に切り替えた。
「起きていたとはいえ、他の三人と比べれば疲労も少ない。動くなら今だろうな」
旅慣れしていないサンクティアさんに、ずっと御者を務めたウィーネと、魔法を使い続けたヴィーヴルヴァイゼン。
そんな三人に比べれば、俺の疲労はそれほどではない。
もちろん、徹夜しているという意味では同じだが……この急ぎの道中では何もしていないに等しい。
だからこそ、今俺にできることをしよう。
「時間は二時間。まぁ、そのくらいの時間があれば、アイシャさんたち……いや、王城で何があったのかは探れるはずだ」
なら後は、その情報を話し合いの場で共有すればいい。さり気なく、《
「……とはいえ、そうも言ってられないか。うまいことやるしかない」
窓を開ければ、その視線の先に見えるのは王都の中央に聳え立つ王城。
あの中で、聖女神国絡みでの何かが起きている。
「聖女親衛隊のレオタイガ……だったか? きっといるんだろうな、その親衛隊ってのが」
思い出すのはハンルドの件。そこで戦った一人の男の事だった。
聖女親衛隊第二位、レオタイガ。【聖鎧】という【纏い】の上位互換である身体強化を駆使して、剣士である俺を圧倒した男。
空間魔法がなければ、間違いなく負けていたのは俺の方だっただろう。
そして、そんな奴よりも強いのが少なくとも一人はいるわけだ。
「……はぁ。もっと他の心配事がない状態で戦いたかったよ、俺は」
目立った活躍を目的としているが、それは周囲や他の人たちの命の安全が確保できている状態での活躍でなければならない。
今のままでは、望むべき舞台とは程遠い。
「とはいえ、まずは状況を知らなきゃ始まらない。【転移】」
王都が黄昏に染まる中、俺は一人宿から姿を消すと、視界内での短距離転移を繰り返しながら空を行く。
そうして【転移】を繰り返した俺は、やがて王城の屋根の上へと降り立った。
「【接続】」
座標から、屋根の一部を穴と変え、中への侵入経路を確保。
俺はそのまま王城内への侵入を果たしたのだった。
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お久しぶりのトーリくん視点。それとすみません。
185話で朝に王都についたと描写しましたが、夕刻に変更です。よろしくお願いします。
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