第4話 能力

「それでは、名を呼ばれた者から祭壇に来なさい。ジャック、頼みます。」

「委細承知。…では、読み上げる!ラルク・シャード!」

「はい!」


金髪に小綺麗な服装の青年が祭壇に上がり、国王の前に跪く。国王は祭壇に向かって両手を広げ、杖を振りながら何やらぶつぶつと呪文のようなものを唱え始めた。


「あれが、国王家に引き継がれる相伝の能力スキル、『神の使徒アポストル』…!」


国王は代々同じ一族から出ている。というのも、神の声を聞くことができなければ国を治めることは不可能であり、それをできる能力スキルが「神の使徒アポストル」。しかしこの能力スキルは国王家にしか発現しないため、結果的に国王家相伝になっているというわけだ。


祈りが終わると祭壇の奥から光が差し込み、青年の周りを包み込んだ。光は薄く青年の体に纏わりつき、やがて消えていった。


「ふむ、見せてみなさい。」


国王は青年に近寄り、手をかざす。少しして国王は満足そうにニッコリと笑い、


「おめでとう。『閃光〈フラッシュ〉』の能力スキルじゃ。君は神に認められた。」


能力スキルの名が告げられた瞬間、周りがざわつく。


「『閃光フラッシュ』だと…?」

「良い能力スキルだ。先代の騎士団長殿も使用していた。」


観衆を制するように、祭壇上の騎士団長が言葉を発した。


「励め。成長次第では騎士団への入団も有り得る。」

「あ…ありがとうございます!」


青年は誇らしげに祭壇を降りていった。


「騎士団長様にお声がけいただけるとは…」

「俺たちにもチャンスあるかな!」


1人目から珍しい事態となり、まだ観衆はざわついている。


「静粛に!次の者を読み上げる!…アルフレッド・ノーチラス…」


それからは特になにも起こらず、儀式は淡々と進んでいった。


「僕もエストも呼ばれないな。」

「いつかは絶対順番が来るっすよ。」

「次!…エスト・グラムライズ!」


ほら来たと言わんばかりに笑みを見せ、堂々たる様子で祭壇に上がる。


「ほう、いい体をしているな。軍に欲しい。」

「あ、ありがとうございます!」


国軍総統がエストに話しかけたのを見て、また観衆がざわつく。


「国軍総統が普通に話している所を始めて見た…!」

「あいつも只者じゃないぞ…!」


こちらは少し違うざわつき方をしているが。


「おおっ、これは…!」

「どうかされましたか、国王。」

「初めて見る能力スキルじゃ!この者の能力スキルは『守護者ガーディアン』!」


おおーっ!と観衆が一斉にどよめく。僕も何がなんだかわからないものの、エストが何かすごい能力スキルを賜ったことはわかった。


「はっはっは!益々欲しくなったわ。」

「何を言っている。能力スキルの名前からして明らかに騎士団向きだ。エストと言ったか、どうだ?騎士団に来ないか?」

「へぇっ!?」


国の両翼を担う二人に誘われ、エストは混乱しているようだ。更に珍しい光景に、観衆も沸き立っている。聖堂内とは思えない騒ぎの中、国王が杖を地面に一突きした。


「静粛に!…全く、年甲斐もなく騒ぎおって。後にしなさい。」

「申し訳ありません。」

「申し訳ありませぬ。」


帰ってきたエストに声をかける。


「すごいな!やっぱりあのレイって人を止めただけあるよ!」

「そうっすか?へへ…カイトさんも良い能力スキルを手に入れれるといいっすね!」

「おい!あれ見ろ!」


祭壇の方を見ると、今までにはなかった一際強い光が祭壇の奥から溢れ出していた。その光の中心にいたのは…


「あれ、レイって人っすよ…」

「レイ・フライハイト…!」


国王は恐る恐る手をかざすと、目をカッと見開いた。


「『聖騎士パラディン』…初代騎士団長が所持していたとされる能力じゃ…」

「『聖騎士パラディン』だと…?」

「1000年眠っていた能力スキルが目覚めたか…」


国軍総統はただ驚き、騎士団長は微笑を浮かべている。渦中の人物であるレイはその表情を崩すことなく祭壇から降りた。


「さすがはフライハイト家っすねぇ…」

「ああ…すごいな…」


レイは毅然とした態度で聖堂内を歩き、元いた場所に戻っていった。


「次は…」

「カイト・ノワリム!」


名前を呼ばれ、一気に緊張が高まる。祭壇まで行くと、遠目ではわからなかった尋常じゃない圧が僕を襲った。


震える手を合わせ、国王の前に跪く。すぐに国王が祈りの言葉を唱えだした。


「(いよいよ…いよいよだ…!)」


国王が祈りを終えると、祭壇の奥から、光が…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る