高校1年 遥編 乗っ取られて...
「私、見てるー?」
私は、その言葉を発したいとも、手を振ろうとも思ってなかった。でも、私のものであるはずの体は勝手に動き、勝手に喋っている。
(何コレ、どうなってるの?)
そう思った時だった。
「まあ、端的に言えば、貴方は"私"に体を乗っ取られたって感じだよ。別人格と入れ替わるとか、小説やら物語とかでは定番でしょ?」
モニターに映る"私"が、私の思ったことを察知したかのように、それに返事をしてきた。また一瞬パニクったが、その説明で、何が起こったのかをなんとなく理解した。
つまりアレだ。"私"が、私と入れ替わって体を操れるようになり、体を取られた私は、この謎の空間に飛ばされたという感じだろう。
一応、理解はした。でも、納得はできない。
非現実的な事が、今日の夜だけでたて続きに起こりすぎてて、もう意味がわからない。
(私の体で何するつもり?)
さっき私の思った事が、彼女に伝わったので、それを利用してみる。こんな事で伝わるなんて信じられないが、試してみるだけならタダだ。
「明日、シンくんをどこか人気のないところに連れて行くの。」
どうやら伝わったようだ。私は、とりあえずやり取りはできるとわかり、安心した。
でも、彼女が何をしたいのか分からない。
シンくんを説得でもするのだろうか。そうだとしたら意味はないと思う。彼はああ見えて意外と頑固だから、別れると決めたからにはその選択は変えないと思う。
(何をするつもり?説得なら意味ないよ?)
そう彼女に伝わるように念じた。彼女に伝わったとか分かるなにか合図みたいなものがあればわかりやすいのだが、そういうものはないので、彼女の返答を待つしかない。
「ねね、私。シンくんが空き教室に連れて行ってくれた時、少し期待したでしょ?アレじゃないってわかった瞬間ガッカリしたでしょ?」
私の質問に、彼女は質問で返してきた。しかも、恥ずかしい話を持ってきやがった。他人に触れられるより、自分自身に触れられた方がなんか嫌だった。
...そう言えば、相手も"私"なのだから質問をして、自分もダメージを負っているはず。そこまでして、なぜそんな質問をしてきたのかが分からない。
...シンくんを連れ出すと彼女は言った。そして、何をするかという質問に、あの質問を投げ返してきた。ふとひとつの考えが浮かぶ。
(貴方まさか!?)
「そう。シンくんを犯すの。」
それは、それだけはダメだ。やってはいけない。止めないと..どうにかして止め、ないと...
(やめて!お願い!それだけは!彼があまりにもかわいそう!)
とりあえず説得を試みた。
でも、彼女は何も答えない。もう聞く耳を持たなくなったのだろうか。だとしたらまずい。今の私には止めれる手段がない。モニターに映る映像が、私の部屋に向かっている。
このまま寝られたら止めれるのは明日になる。必死に念じる。
(やめて!それは犯罪よ!わかった!諦めなくていいから、シンくんを諦めなくていいから!だから、それだけはダメ!ねぇ!?聞いてる!?)
私は、彼女が部屋に入ってからも必死に念じた。映像に、シンくんの写真がいくつも映った。つまり、"私"はベッドに横になっているということだ。
寝られる前に止めないと
そう思い、より多くの念を送る。彼女に伝わってるかは分からないけど、送れるだけ送った。すると、
「うるさいなぁ。やめてよ、寝れないでしょ?」
"私"から返答があった。その事に安心して、今度は丁寧に説得する。
(お願い。彼を犯すのだけはダメ。そんな事しても彼は悲しむだけで、やり直せたりするわけないよ?)
すると、"私"は、鼻で笑ってこう答えた。
「フッ。貴方が本当に止めたい理由は彼が傷つくからとかじゃないでしょ?それなのに、彼を止める理由にするなんて、本当に自分が大事なんだね〜。」
その声からは、皮肉を感じた。
(何を言ってるの?そんなわけない。私はシンくんのために...)
「貴方は、これ以上、彼との繋がりを持ちたくないだけ。これ以上、何かのつながりを得たら、"諦められなくなる"から。依存しちゃうから。だから、止めてる。自分のために、ね..でしょ?」
(そんな、はずは、ない....私は、彼の、ためを思っ、て...)
本当に彼のためだと思ってたはずなのに、本当のことを言い当てられたかのように動揺してしまっている。自分自身のことがわけがわからない。
「じゃあ、私寝るから。邪魔しないでね。」
そういうと、モニターの映像は真っ暗になり、私のいる空間は、完全に闇に包まれた。
(シンくんが明日...)
その事に、なぜか胸がズキンといたんだ。きっと、私自身、彼が傷つくのが嫌なのだろうという事にした。
いやなら、ここで、本当ならもっと必死で止めるべきなのだろう。でも、できなかった。
もう、今日は疲れたのだ。
今日は、いろいろありすぎたのだ。
一日に詰まっていい量じゃない数が一気に頭に入ってきた感じだ。
私は、思考を放棄した。
~~~~~~~~~~~~~
次の日、私が意識を取り戻した時には、モニターはすでに動いていた。しかも、その映像には、いつも学校へと向かう道が写っていた。
なんか、寝坊したかのような感覚だ。多分、この空間では、意識を手放すと、現実世界での睡眠状態みたいなものになるのかもしれない。起きたばかりのように、ないはずの頭がぼーっとしている。
(今何時?)
そう念じると、視界に時計が写った。その時計は、長針が11近く、短針が8近くを指している。
時計を見せてくれたということは多分、私の念は、伝わっているのだろう。でも、返事は全くない。話したくないという事だろうか...
映像がどんどん学校に向かって進んでいくに連れ、ぼーっとしてた精神も、はっきりとしていった。そして、学校の校門を通った頃、今日、"私"がしようとしてた事も思い出した。
思い出した途端、残り少しの頭の霧が一気に晴れ、新しく、焦りやら不安やらの負の感情が溢れ出てきた。
(やめて!やめて!)
そう訴えても、"私"は動きを止めない。モニターを見ると、今ちょうど、登校靴を脱ぎ、上履きに履き替えた所だった。
まずい...
まずいまずいまずい!
このままじゃ、シンくんが危ない。シンくんが傷ついちゃう。シンくんが身も心もズタズタになっちゃう...
頭の中で、シンくんの危機がどんどん浮かんできた。その度に今までしまっていた、あるネジが緩んでいくのが分かった。
シンくんが...シンくんが...シンくんが......
クルクルクルとどんどんネジが回っていく。私の理性がなくなっていく感じがした。
彼の危機が近づくにつれ、胸も傷んだ。
廊下のある曲がり角をモニターが写した時、私のネジは、完全に外れ、吹き飛んだ。
(シンくんがシンくんがシンくんがシンくんが
シンクンがシンクンがシンクンがシンクンがシンクンガシンクンガシンクンガシンクンガシンクンガシンクンガシンクンガシンクンガシンクンガシンクンガシンクンガシンクンガシンクンガシンクンガシンクンガシンクンガシンクンガシンクンガシンクンガシンクンガシンクンガシンクンガシンクンガシンクンガシンクンガシンクンガシンクンガシンクンガシンクンガシンクンガシンクンガシンクンガシンクンガシンクンガシンクンガシンクンガシンクンガシンクンガシンクンガシンクンガシンクンガシンクンガシンクンガシンクンガシンクンガシンクンガシンクンガシンクンガシンクンガシンクンガシンクンガシンクンガ)
(...シンクンガ、ケガサレル...)
今まで縛っていたものが外れて、全て放たれる。中学の時からずっと写真やら、動画やら、音声やらで抑えてきた、独占欲、嫉妬心、さまざまな醜いものが溢れてきた。そして、私が必死に止めてる理由の答えもそこにあった。
(ああ、ようやく分かった。どうしてここまで頑張って止めようとしてたのか...
シンくんを守りたいからもある。"私"のいう通り、繋がりを得たら諦められなくなるのもある。でも、何より...)
ワタシイガイノヒトニ、ケガサレル...
(やっぱり誰かに好きな人を取られるのが嫌だったんだ。相手が、たとえ別人格の私だったとしても、嫌なんだ。私以外は嫌...)
取られるギリギリになってやっと分かった。相変わらず私は鈍い。でも、それでいい。
いつもなら、最後まで気付けない自分を貶してるが、今はなんだか頭がスッキリしてる。
今まで靄がかかってて見えなかったものがはっきりと見えたからかもしれない。
その景色は、客観的に見ればドロドロしたとても見てはいられない光景。でも私には綺麗で、美しくて、幻想的に見えた。
...とりあえず、私がしたい事は変わらない。
どうにかして"私"を止める。
だが、どうやれば止めれるかはまだわからない。迷ってても意味がない。とりあえず、なるべく圧をかけて説得をしてみる事にした。
(カワレ)
私が出した声は、自分自身でも、惚れ惚れするようなドスの利いた声だった。シンくんが聞いたら、怖くてちびるくらいには怖い声になったと思う。
すると、曲がり角直前で映像が止まった。
何があったのか不思議に思っていると、
「私、必死すぎでしょ。はぁ...
分かった。今はやめとくよ。コレでいい?」
と"私"が言ってきた。
私は、その言葉を聞き、安心した。
でも、すぐにある事に気づいた。
"私"は、体を返す気はない。
体を返すか、シンくんを犯すのを止めるかの2択で止める方を選んだということは、体は持っていたいということだ。
(体返して。)
そうお願いするが、
「やだよ。そしたら次いつ変われるか分かんないし。後、人がいる時に話しかけてこないでね。気が散るから。」
と断られた。その事に(理不尽だ)とか、(ひどい)とか言って駄々をこねたが意味はなかった。仕方がなく、今は諦める事にした。
それに、駄々をこねた時に、"私"が言ったボソリと言った言葉が気になったのだ。
「どうせ"私"は消える。たとえ、貴方が"生き残った"としても...」
彼女が発した言葉はどういう意味があったのだろうか...
~~~~~~~~~~~~~~~
時刻は16時頃、私は、相変わらず黒い空間に囚われたままだった。
(ふう...)
あの後、やめとくと言ったくせに、"私"がシンくんの元に直進した時はびっくりしたし、ものすごい嫉妬心が沸いた。が、シンくんに拒絶され"私"は引いた。その後は、彼女はただ、シンくんを眺めているだけだった。
いつ、"私"が約束を破るか分からなかったので、ずっと警戒した状態でいた。だから、こうして学校が終わって、家に"私"がいると、シンくんが襲われる心配がないので力が抜ける。
ドッと疲れも出てきた。体がないのに眠気が襲う。多分、体がある時でも警戒し続けるのは疲れるのだから、精神だけの状態での警戒だと完全に気力を消耗してしまうのだろう。
私の意識は、段々と暗闇に吸い込まれていった。
次、目を覚ました時、私が見たものは、真っ暗なシンくんの部屋と、眠りながら犯されているシンくん自身だった。
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コレで、ヤバいやつがさらにヤバくなりました。もう終わりですね...
人が壊れるところ書くのむずいっす。後、狂気を感じさせる書き方がわからない。ので、とりあえずカタカナで書く事にしました。
「遥に二重人格ができた理由(メタい方)」
•普通の遥は慎二を犯す事なくね?って思ったから。
•ただ、単純にやってみたかったから。(ここ重要)
•現実に、ちょっと非現実が入ってる物語も好きだったから。(例;君と◯◯と〇〇の恋、ひぐらしの〇〇頃に)
という事で、この小説は、これから先、ちょっと非現実的な要素が含まれる予定です。初めてでレベル高いところに挑みすぎかもしれませんが、やりたいからやるのです!それでもいいよって方は、追ってくれたら嬉しいです。♡、⭐︎をくれるともっと嬉しいです!
最後に、誤字があったら教えてくれるとありがたいです。
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