高校1年 遥編 本当に変わりたかったもの






人生は一本道。いろんなルートがあるように見えて、ひとつだけ。選択があるように見えて、自分がどうしたいかという感情に誘導されるから、結局、その時選ぶ答えはひとつ。



だからこそ、人は後悔する時、あの時こうしてれば、あの頃に戻れれば、なんて幻想に浸かる。


時が戻ることなんてあるはずがないのに....



いくらやり直せたとしても選択を変えれるはずがないのに...







自分の欲に踊らされ、後悔して、過去に縛られて、現実から目を逸らして、最後には未来が見えなくなる。










あぁ、本当に、どうして......














私という人間はここまで愚かなのだろうか...

















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勇気を出して謝ると決めた次の日、私はいつもより早めに家を出た。


理由としては、朝、いつもより1時間も早く目が覚めてしまったことと、家にいると気持ちがなんだか落ち着かないからというものがある。理論としては、多分、修学旅行目前の時の中学生みたいなものだと思う。


緊張して、ドキドキして、もしかしたら仲直り出来るかもと思うと楽しみで...そういういろんな感情がごちゃ混ぜになって落ち着かなかった。だから、早めに家を出ることにしたのだ。

 

学校に向かいながら、念のためカバンの中身を確認する。


(うん、ちゃんとある。) 


今回は、ちゃんとシンくんへのチョコのことも忘れずに持っていくことができた。


...一昨日は、お兄さんの過去とかを知ることが出来れば、シンくんの為になるかもと思って、つい聞き込むことに集中してしまい、チョコを忘れていた。


 私は、おっちょこちょいな所があるから、今後も気をつけないといけないとあの時、改めて肝に銘じた。


 ちなみに、あの日の夜、せめてコンビニで買おうと思ったが、親に止められてしまった。どうやら、また私が、シンくんの家に行こうとしてると思ったみたいで、説教まで食らった。


…今日はどうしても何かを考えてしまう。何かを考えておかないと落ち着かない。本当にこういう時、頭を空っぽにできる人が羨ましくなる。


私は、浮ついてる足を頑張って地面につけて、悶々としながら歩いた。







~~~~~~~~~~


学校に着いた後、私は直ぐに教室に行き、周りを確認した。


(...まだ、シンくんは来てないな。)


私が早く来すぎたのもあり、今、教室の中には、私を含めて4人しかいなかった。机に座り、周りを確認してみた。


みんな、目の前の教科書やら、ドリルやらを真剣に取り組んでいる。私ではまだ手が出せないようなところをやっている人もいる。


こういうのを見ると、私もやらないとと思うが、今日はそうは思えない。そんなことよりシンくんだ。


 私は、勉強をしていたかのように見せるために机の上には適当に取り出したプリントの裏側にシャープペンシルをひとつ添えておいて、それからは、ひたすら教室の出入り口をチラチラと確認した。


時間が経つにつれ、1人、また1人と人が増えていき、だんだんと教室が賑やかになっていく。私の周りにも、少しずつ人が集まってきて、集まった人同士で話したり、私に話しかけたりしてきた。


 けど、私は、扉が気になって、話の内容が頭に入ってこなかった。だから、「うん」とか、「へー」とか中身のない返事しかできなかった。それだけ、彼が来るのが待ち遠しかった。今か今かとひたすら待ち続けた。


「よし、朝の挨拶始めるぞー。みんな席に着けー。」


「足利、飯泉....井上、は休みか。

珍しいな....」




 でも、朝、彼は学校に来なかった....





~~~~~~~~~~~~~~


朝の連絡が終わり、休み時間に入って、私の周りに人が再び集まってくる。でも、私はそれどころではなかった。だって、彼氏が、急に学校を休んだら、心配するし、気にするのが普通だ。


 もし、シンくんが病気で倒れてるとしたら、家族はいないのだから、きっと大変に違いない。他にも、車に撥ねられた可能性やら、悪い人に攫われた可能性やら、嫌な可能性がどんどん浮かんできた。その度に、私の血の気が下がるのがよくわかった。


 早退して、彼の様子を見に行った方がいいのではという考えが頭に浮かぶ。でも、それと同時に、嫌な考えも浮かんだ。


最近あまり関わってない彼女が家に来ても、彼は嫌がるだけかもしれない...

もう、私と関わりたくないのかもしれない...

もう、私に興味がないのかもしれない...


そんなことを考えてしまい、シンくんの元に向かう勇気が出ない。連絡でさえ、する勇気が出ない。そんな情けない自分に嫌気がさす。


こんな状態で、本当に、今日シンくんが来てたとしたら、チョコを渡して、コレまでのことを謝ることができてたのだろうか...

そう思ってしまうぐらい、今の私には勇気が足りなかった。


...少しは前のダメダメな自分から変われてると思ってた。友達もできて、勉強も頑張って、オシャレにも気を使うようになって...前の自分から変われたと思った。実際、変わったとは思う。


でも結局、中身を見てみれば、

臆病で、ドジで、自分勝手で...

 

そんなどうしようもない女のままだ。こんなんだから、シンくんとの仲が悪くなった。自ら、自分の幸せを壊したんだ...


その日、私は沈んだ気持ちで学校生活を過ごした。



~~~~~~~~~~~~~


放課後、学校に残っても、意味がないので帰ろうと鞄を持った。その時、不意にクラスメイトから話しかけられた。


「今日、新崎さん元気なさそうだったけど、大丈夫?何か嫌なことでもあった?」


話しかけてきたのは、最近、よく遊んでいた神谷さんだった。


彼女に、心配をかけるわけにはいかないので、私は、なるべく、元気な姿を取り繕って返事をした。


「いや、そんなことはないよ!ちょっと今日寝不足で...それで元気がないだけ!」


と、適当に言い訳をして、話を切り上げようとする。 しかし...


「嘘、絶対そんなんじゃない。新崎さん、今日明らか落ち込んでる雰囲気だったもん。寝不足の時とは違う。」


彼女に嘘は通じなかった。

嘘を見破られ、どうしようかと慌てる私に、神谷さんは、さらに問い詰めてくる。


「...もしかして、井上くんと関係してる?」


その言葉に、私は無意識にぴくりと反応してしまう。しまったと思った時にはもう遅くて、神谷さんの顔を見ると、ニマニマとしながら、質問をしてきた。


「井上くんが休んだから気分沈んでたのかなぁ?もしかして、新崎さん、井上くんのこと好きなんじゃない?これまでも、チラチラ彼の方見てたし、絶対そうでしょ!」


図星をつかれ、一瞬言葉が詰まった。その後、直ぐに否定しようとしたが、出来なかった。シンくんのことが好きという事を否定なんてしたくなかった。これだけが、今の私の彼に対する武器なのだから...


 黙ってしまった私を見て、神谷さんは慌てながら、励ましの言葉をかけてきた。


「まあ彼は、うちのクラスの男子と比べて大人しいし、誰に対しても丁寧に話してくれるし、なんでも引き入れてくれるしでいい人だと思うよ!応援してるね!新崎さんならきっと付き合えるよ!」


そうとだけいうと、彼女はダッシュで教室を出て行った。だから、私の独り言なんて聞いてるわけがない...


「私たち、もう付き合ってるのに....」



私の言葉は誰の耳にも届かず、手のひらに落ちた雪のように、ふわりと消えていった。


「...かえろ」


私は、鞄をもう一度しっかりと持ち、教室を出た。


~~~~~~~~~~~~~~~


 家に着いて、私はまっさきにベッドに倒れ込んだ。そして、枕に顔を突っ込み、う〜っと唸り声を上げる。しばらくの間、ずっと唸り声を出してみたが、頭の中のモヤモヤは取れなかった。


仕方がないので、起き上がり、スマホを机におく。そして、メッセージを開いて、ある人を探した。


"井上慎二"


(あった。)


最近、メッセージのやり取りもしていなかったので、少し下の方に彼の名前はあった。

トーク画面に飛び、文章を打つ。


そして、打つたびに何かが違うと感じ、決して書き直す、また消して書き直す、その繰り返しを30回以上行った。


結局メッセージの内容は、


『今日、学校休んでたけど大丈夫?

体調とか崩したんだったら、今からでも看病に行ってもいいかな?ちょうど渡したいものもあるし、できればシンくんの家に行かせて欲しいな。』


という、ちょっと長めの文章に決まった。


(...よし。)


スマホを持ち、送信ボタンのところに指を準備した。そして、やると決心し、指を動かす。それでも、やっぱり怖くて、ゆっくり、ゆっくりと送信ボタンに指が近づいていった。


そして、あと少し、で画面に触れるという時。私の指はぴたりと動きを止めた。一度離して、もう一回、押そうと指に力を入れたが、また同じくらいの距離になった時、全く先に進まなくなった。


 まるで、何か透明の壁でもあるかのように、画面に触れることができない。


(メッセージを送るだけなのに!動いて、お願い!)


そう願っても、動いてはくれなかった。

さらに、必死に動かそうとするたびに、やめておけという忠告なのか、嫌な想像がどんどん浮かんでくる。


(無理だ....)


とうとう、最後には、私の覚悟は揺らいでしまった。私の決意なんて、大体はこんなものだと分かっていても、それでも自分が情けない。


この後は、何もやる気が起きず、今まで流したことがなかった悔し涙をベッドにこぼしながら眠りについた。いつもなら気になる頬を伝う涙も、今日は気にならなかった...



~~~~~~~~~~~~~~~~


 次の日の朝、昨日と同じように学校に早めに向かい、昨日と同じように教室の扉をチラチラと見ていた。


昨日と違う点があるとすれば、いつもより気持ちに余裕ができたというところだ。昨日の夜、泣き疲れたのが原因かは分からないけれど、ぐっすりと眠ることが出来たので、頭の中はスッキリとしていた。


 私が、眺めている光景は、同じ日を繰り返してると錯覚するほど昨日と同じだった。昨日と同じで、最初は静か、人が入ってくるにつれ、だんだん騒がしくなる。教室に着く時間帯も、大体同じ人ばかり。


 そして、昨日と同じ通り...


時間が経っても、シンくんの姿はどこにも見当たらなかった。時間が経つにつれ、私の心のノートには「心配」という文字がどんどん増えていった。


ホームルームまで残り5分前になった瞬間、私はスマホを手に持った。私は、今日の朝に決めたのだ。シンくんが今日も休んだなら、どんなに怖くても、連絡をして、家に向かうと決めたのだ。


大丈夫?的な感じのメッセージを打ち、ホームルームが始まるその時まで、送信ボタンの上に指を準備した。


カチカチと教室の時計が時間を刻む。その音が鳴る数が増えていくにつれ、私の緊張感も膨れていく。


カウントダウンが、後60を切った頃、彼は、シンくんはやってきた。


(よかった....)


緊張で強張った体の力が一気に抜ける。今直ぐ、シンくんの元に駆け付けたかったが、もう直ぐHRが始まるので辞めておいた。


とりあえず、彼が元気で良かったと心の底から思った。ただ、やっぱり、昨日のことが気になっていたので、始まるまでの間、シンくんの方をチラチラと見ていた。


たまたま目が一度合った時、彼は一瞬微笑んだように見えた。それが私の幻想だったとしても、嬉しかった。シンくんが元気だったとわかり、微笑んでくれもして、きっと私は浮かれていたのだと思う。


だから、彼の真剣な表情を見ても、かっこいいなぁくらいにしか思うことがなかった...




~~~~~~~~~~~~~~~~~


放課後、先生の次の学校の予定などの連絡を聞き終えた私は、シンくんのところに行こうと席を立とうとした。


でも、私が経つより先に、私の周りをクラスメイトたちに囲まれてしまった。そして、いろんな事を話し始める。


流石に今日は、友達に構う暇はないので、


「ごめん、ちょっと用事あるから通してくれないかな?」


とか


「今日は忙しいから、また今度でもいいかな?」


とかを言い、彼の元へ向かおうと頑張った。

でも、今まで私が簡単に折れてきたからか、彼ら、彼女らの自己主張は止まなかった。


「えー、いいじゃん!少しくらい!」


やら


「そんな物よりカラオケ行こうぜ!」


やらを言われ、私が承諾してないのにも関わらず、勝手に話が進められていた。


強く自分の主張を言えれば、きっとみんなどいてくれるのだろう。でも、私にそんな勇気はない。あったなら、高校入ってからも、シンくんとの時間をたくさん確保していた。


もう、諦めてみんなの話を聞こうと思ったその時、不意に皆んなの話し声を遮って、私の大好きな人の声が私の耳に届いた。


「ちょっと大事なようがあるんだ。いいかな、遥?」



彼は、私の目をまっすぐと見て、手を差し伸べながらそう告げた。教室が一気に騒がしくなる。この状況、いつもの私なら周りの目を気にして、何もできないだろう。


でも、その言葉を聞き、今の私が進む道など、あるひとつ以外はあり得ない。








大好きな人から久しぶりに話しかけられた...







大好きな人に久しぶりに名前を呼んでもらえた...






大好きな人から久しぶりに頼み事をされた...











なら、それなら...

私が選ぶ選択肢は.....








「わかった、シンくん。行こ?」


私は彼の手を取るだけだ。














_________________________________________


別れのシーン、次からになります。


星300突破ありがとうございます!優しい皆様に感謝!


これからも、皆様の期待に応えられるよう頑張りますので、ハートや☆を是非お願いします!してくれたら、モチベ上がります!まあ趣味で書いてるので、評価されなくても書きますが...でも、是非是非お願いします!


最後に、誤字などがありましたら、教えてくれると助かります!


追記:この後、みなさんご存知の通り、別れのシーンに入るのですが、丁寧に書いて欲しいか、それともさっさと話を進めてほしいか教えてほしいです。












 











 





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