高校1年 遥編 嵐の前のなんとやら


『シンくんとの仲直りを手伝って欲しい』


その願いを聞き、私の頭は混乱する。

私は、頭を抑えながら清一さんに疑問点を伝える。


「いろいろ疑問点がありますが、まず....

なんで貴方ひとりでシンくんに仲直り出来ないのかが分かりません。貴方には知らない人に話しかける勇気があるはずです。

 なら、たとえ険悪な仲だったとしても、仮にも相手は貴方の弟なんですから、彼に直接謝るくらいはできるはずです。

 そしたら、優しい彼なら許してくれるはずです。私が手伝うところなんてありません。」


私が問い詰めると彼は、人差し指をつんつんと合わせながら口を開いた。


「いや、でも...

慎二が小さい時に構ってあげなかったし...

葬式の時に酷いこと言っちゃったし...

突然姿は消したし...

...俺、もう完全に嫌われてるとしか思えないことしかしてない!絶対俺ひとりで謝ったって無駄だって!拒否られるの怖い!」


「うわぁ...」


さっきまでの、きちんとした印象が全て崩れた。今、私の目の前にいるのは、見た目が大人なだけの子供だ。親の前で駄々を捏ねている子供だ。少なくとも、私にはそう見える。

正直、今の清一さんは生理的に無理だ。 


ただ、悲観的に物事を考えてしまうのは、どこかシンくんに似ていて、やはり兄弟なんだなぁと少し思ったりもした。だから...


「はぁ...で?私は何を手伝えばいいんですか?」


とりあえず話だけは聞くことにした。

私の言葉に、彼は、おもちゃを買ってもらえた子供のように顔をキラキラとさせた。


「手伝ってくれるの!マジで!?ありがとう!」


興奮したからか、清一さんは私の手を掴んで腕をぶんぶんと上下に振ってきた。こうしてみると本当に大人なのか分からなくなる。


 とりあえず、腕が痛いといい、手を離してもらった。その時は、シュンとして落ち込んでいた。ほんとに感情が表に出やすい人だと、逆に感心してしまう。


そして、再び何をすれば良いのかを聞くと、彼はやっと話し始めた。


「えっとね、手伝うって言ったってそんなに難しいことじゃないよ。俺が仲直りしたいって言ってたことを慎二に伝えて欲しい。その時に、俺が葬式の時のこと後悔してるやら、勝手に姿を消したのを申し訳なく思ってるとか言って、慎二を僕と会うように仕向けて欲しい。時期は、うーん...そうだなぁ...出来れば、2年になってから伝えて欲しいかな...」


私は、首を傾げながら不思議に思ったところを質問をした。


「なんで時期を指定したんですか?すぐにでも仲直りしたほうがいいのではないですか?」


そう聞くと、清一さんは爽やかな笑顔を浮かべた。そして、


「だって、心の準備が出来てないんだ!いざ、謝るとなると、緊張してきて無理だから、少し時間が欲しいんだよね!」


と、元気いっぱいの声で堂々と情けないことを言った。私は、もう突っ込む気力も無くなっていたので、仕方がなく彼の要望をOKした。


その後も、清一さんの10年の間の生活についてやら、両親がいる時に、シンくんに冷たくしてた理由やらを聞いてはみたが、疲れてるのもあり、ところどころの話しか頭に入ってこなかった....


~~~~~~~~~~~~


質問もひと段落がつき、ドッと疲れが出てきたと思ったら、私のお腹がぐーっと鳴った。


私は、食いしん坊ではないので、お腹がなるということは、それなりの時間だということだ。時計を見てみると、なんと20時くらいになっていた。コレは非常にまずい。


途中、気力がなくて、意識がボーッとしてたのもあり、外を見てなかった。


疲れてたとはいえ、時間くらい確認できただろうに、その動作すらサボってしまった。そんな自分を恨む。


清一さんも、"遅い時間だけど大丈夫?"とか聞くべきなのではと思ったが、責任転嫁は良くないので言わないでおいた。


まだ呑気にドリンクを飲んでいる清一さんに別れを告げる。


「もうそろそろ帰らないと親に怒られるので、帰ります。」


「そっか。今日はありがとね、遅くまで付き合ってもらっちゃって。あ、そうだ。連絡先交換してもいい?今後も連絡したいから。何か手伝って欲しいことがあれば気軽に連絡してくれてもいいし。」


そういい、スマホを差し出してきたので、なるべく早く連絡先を交換した。


そして、もう一度サヨナラといい、ダッシュで家に帰った。その後は、親に怒られたり、チョコを買い忘れたことに気づいて気分がどん底まで落ちたりと散々な夜を過ごした。



~~~~~~~~~~~~~~


次の日の学校の放課後。


私は、友達からの遊びの誘いを断り、ある人との待ち合わせ場所に向かっていた。この日は、帰りの時の連絡が、居残りの人の読み上げなどで長くなってしまった。そのため、待ち合わせの時間はとっくに過ぎていた。


急いでその場所に向かうと、やはり相手はもう着いていたようで、こちらを見つけると、大きく手を振ってきた。


目立って恥ずかしいからやめて欲しかったが、遅れてきた私が悪いので、止めることなく、早足で彼のところに近づいた。


私が話せる距離まで近づいたのを確認してから、相手は口を開いた。


「どうしたの?昨日話したばっかだったのに。もしかしてまだ聞いてないこととかあった?」


「いや、そうではなくて。実は、昨日チョコを買えてなくて。それで、今日は、シンくんの兄であるチョコ選びを手伝って欲しいんです。」


そう、私は今日、お兄さんと一緒にシンくんへ渡すチョコ選びをしにきたのだ。


私が呼んだ理由を言うと、清一さんは首を傾げながら疑問を放った。


「うーん。遥さんも知ってる通り、俺と慎二って関わりほとんどないから参考にならないと思うけどなぁ。それに、バレンタインってのは彼女が一生懸命選んだり、作ったりしたのをもらえるのが嬉しいんだから何でもいいんじゃないかなぁ...」


「まあ、それはそうなんですけど...

やっぱり無料で使える駒があるなら使っておきたいじゃないですか。それに、彼、小さい頃から好きな食べ物変わってないらしいし、少しくらい知ってるかもということで呼びました。最悪1人の男性としての意見を聞ければいいかなぁと思いまして。」


私が理由を説明すると、清一さんはなんとも言えない表情で"分かった"と言った。多分、理解はできても、納得は出来なかったのだろう。私は手伝ってもらえたらいいので、全く気にしなかった。


その後は、チョコを売ってるところを清一さんと一緒に回ってシンくんにあげるチョコを考えた。


ちなみに、手伝う代わりとして、シンくんと私の思い出を聞かせてと言われたので、チョコを探しながら彼についていろいろ話した。

 

 シンくんは私の運命の人なんですとか、遊園地でお化けにビビってたということとかいろいろ話した。


シンくんについて話せることは今までなかったので、彼の良さについてもしっかりと話しておいた。清一さんは、それを真剣に聞いてくれたので、シンくんについて話す時は、お互い笑みが溢れていたと思う。


しばらくして、チョコを選び終わり、清一さんにお礼を言ってから、私は家に帰った。


チョコを冷蔵庫に入れ、ご飯を食べ、お風呂に入ってから、少しベットに横になった。


(チョコ、遅れちゃったけど、許してくれるかな...)


...最近、シンくんと私は、誰から見てもうまくいってるとはいえない。お兄さんとの仲直りを手伝う前には、私達も仲直りしておきたい。


今、聞こうと思えば彼の声も聞けるし、彼の姿もほぼいつでも見れる。それでも、やっぱり物足りないのだ。


わがままで、自分勝手なのは分かってるが、やっぱり、物足りない。彼が起きてる時に触れたいし、彼に直接話しかけてもらいたい。


勇気を出して話そうと思っても怖くてできない。もし避けられちゃったら、もし拒絶されちゃったらと思うと、心が張り裂けそうになる。一度ずれ始めた歯車を戻すことがこんなにも難しかったのかと改めて落ち込む。  

 もし、私がそのことを知っていたら、友達なんかを優先せずに、シンくんといることを選んだのにと、無知な自分を一瞬恨むが、それは無理な話だろう。コレに関しては、体験しない限り、分からなかったと思う。

周りにそう言われたとしても、私たちは運命の人だからと言ってきにしてなかったと思う。



......................


長いこと考えて、ようやく覚悟を決めた。


明日、チョコを渡す時に、ちゃんと謝ろう。


許してもらえるかは分からない。それでも誠心誠意、謝ろう。


歯車が外れた原因は私にあるのだ。だから、仲直りするとかそういう前に、まず謝ろう。







それで、もし許してもらえたのなら...




"また、前みたいな関係に戻れるはずだ"


私は、覚悟と少しの希望を胸に、

夢の中へ、深く、深く、落ちていった....







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前までのペースで書くと、あまりにも面白くない話が続きすぎてしまうと思ったので、少し雑に切りました。まあ、最低限のことは書けたので物語には支障ないと思います。


次くらいから、やっと別れのシーンに入るかな?って感じです。高校2年生編が本編だから早く終わらせたいけど、難しい...

どうでもいいこと長々と書くなと思う方もいうと思いますが、短めで必要な情報を表現する技術を僕は持ってないので許してください。


誤字、矛盾してる設定等々、何か気になる点がある方は、教えてくれるとありがたいです。


追記

星、300を目指してます。1個でも押してくれたら嬉しいです。お願いします!








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