第15話 手紙 〜冷たき風の季節〜



 ブラッド辺境伯夫人 マリアンヌ・エル・ブラッド様


 周年までの慌ただしさに、年々と追いつけなくなる我が身への余りある慈恵のお言葉。


 この老骨にて、冷たき風の季節を過ごすための火となりました。


 祝祭へのお招き、身に余る光栄にございます。


 しかしながら子爵家は、悪虐神ガダの誘惑に負け、かつての正道を失いました。このままでは参列は叶いません。


 当主ベイルが御身と結んだ契約を反故としたのです。我らマルクを脅し、それは成されました。


 その企みを持って、ベイルは御身のもとを訪れ災いをふりまくつもりです。


 ですが、ご案じ召されぬよう。


 子爵家の正道は必ず取り戻されるでしょう。


 なぜなら、ロガルデに眠るジェラルドさまが我らマルクを助け、領主館にはびこる悪を滅ぼしてくださるからです。



 マリアンヌ様に祝福を。


 


 ザック・マルク・レーゲン

 


 

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