第12話

隠れ家へ帰り


「詩織さん、武器調達に伝手はない?」


と私が問うた。


「そうね。武器は中国軍が管理してあって、その製造工程に潜り込めればいいんだけれど。」


と詩織が答えた。


「でも警備とか厳しいだろ?さすがに。」


とジョージが顔を渋くして言った。


「そうね。武器工場もオートメーション化しているから...。あ!そうよ!この手があったわ!」


「どんな手なの?」


と私が尋ねた。


「武器工場ではオートメーション化しているため、不具合のあるものは勝手に廃棄されるようになってるの。だからウィルスを忍ばせて合格品を不合格品として廃棄させてそれを拾ってくればいいわ!」


「なるほど。お嬢ちゃん、冴えてるね!」


とジョージのテンションが上がった。


「ハッカーを用意するわ。それと調達要員もね。」


「詩織さんって本当に心強いね。」


と私は感嘆した。それより私自身が何をすべきかを考えると、モグラを止めることぐらいしかできない。モグラには行き詰った際に本体を分解して止める仕組みを組み込んでいる。これを知っているのは私ぐらいだ。恐らく誰もそれに気づかないはずだ。設計書を見て作ってもその事には誰も。


「しかし、上の奴らがいなくなると下の奴らがどう動くのか見当がつかないな。モグラを本当に打つつもりだろうか?今頃緊急事態になってるだろ?上が叩かれたから指示系統が混乱して俺たちを追うこともなかなかしづらいとも思うが。」


とジョージが懸念した。


「恐らくその下のリーダー格が指揮系統を取ると思うけど、中国本土に連絡がいくだろうね。そうなると東日本の連中も動くだろうね。」


と私。


「再び戦火に見舞われるか。俺たちとしては日本が日本人の手に戻るのがいいが、俺達はどのみち日本国籍はない。なのに日本のために戦っている。それは中国の元で生きるより日本の元で生きるほうがましだからだ。仮に俺達の功績で俺達のアイデンティティを認められるなら幸いだ。」


とジョージが吐露した。


「ひとまず武器を調達するか。詩織さん、いける?」


「大丈夫よ。任せて。」


「あとは和歌山の湾岸基地に向かうだけか。」


「そうだね。俺達のやることをやるだけだね。」

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