第7話
詩織はふと我に返り、
「さあ、あと1時間半は歩きますよ!」
「え?合計3時間も毎日犬の散歩されてるんですか?」
「そうよ?普通それくらいじゃないの?」
「...。そうですね。」
きゃしゃな足の割によく毎日3時間も犬の散歩をしているものだ。スポイルドと言ったがそれは違うようだな。さっきの話もそうだが。
「しゅんちゃんの支給された作業着ももうボロボロね。どこかで新しく買いましょうか?」
私たちのような一般ワーカーは中国軍が支給された作業着を着て仕事をする決まりとなっている。しかし例外もある。このお嬢さんの所で働いているような場合は先述したスーツなど雇い主の判断で服装を決めてもらえる場合もある。
「あ、いえいえ、私はこの服装で構わないですよ。」
「私が納得いきませんわ。奴らの思い通りの格好なんて。あ、このことは内緒でね。シー!そうね...。倉敷市児島のオーバーオールなんてどうかしら?さ、散歩が終わったら家に帰りましょう!」
「あ、私の意見は...。」
詩織はそう言ってそそくさと散歩を済ませるのであった。
散歩が終わり、屋敷に帰ってきた。そして通された部屋にあったのは何かしらの機械があった。
「あの、詩織さん、これは何ですか?」
「ん?これはね、3Dスキャナよ。これで一気に採寸しますわ。」
「それだったらこの前のスーツもこれでしたらよかったのでは?」
「んー。スーツはね、あのマスターのほうが3Dスキャナより精度がいいの。だからマスターに頼んだの。でも今回は取り寄せになるから3Dスキャナを使って取り寄せてもらうわ。」
「そうなんですね。私が過去に見たことのある3Dスキャナは1000万円するって言ってたのを聞いたことがありますが、やっぱりそれくらいの値段がするのですか?」
「そうね。昔よりは格段に制度は良くなっているし価格も安くなっていると思うけど、はっきりと値段なんて知らないわ。それより測りましょう。爺、お願い!」
どこからか執事の方がやってきて私を下着だけにさせて3Dスキャナで採寸してもらった。
「もう終わりですよ。秦野様。」
「あ、そうですか。あと、私はここのボーイになるので様はいりませんよ。」
「かしこまりました。では秦野。お嬢様をよろしくお願いいたします。」
「はい、分かりました。」
そうこうしていると詩織が戻ってきて
「これからどうしましょう?とりあえずお昼ね。しゅんちゃん何が食べたい?」
「それは詩織さんに任せます。」
「私はしゅんちゃんに聞いてるの!」
「えぇ~...。」
こういうのが一番対応が困るパターンである。優柔不断なわけでもないが、私自身もこれといって何かしら案があるわけでもないときだ。そしてその時の度量を試されている...。
「讃岐うどんとかどうですか?」
と適当に思いついたことを言った。
「いいわね!近くにあるかしら?」
「それだったら近くに『いわや』という美味い店がありますよ!」
「じゃあ案内してちょうだい。」
「かしこまりました。」
そしてうどん屋にてうどんを食べていると「ブルルブルル!」と携帯が鳴り、見ると伴場だった。おもむろに携帯を取り、出ると
「おい、秦野!中国兵がお前を血眼になって探してるぞ!お前なにかやったのか?」
「え?何もしてないけど?しかしそいつは一大事だな。逃げた方がいいのか?」
「わからん。とにかく気を付けろよ!」
「分かった。ありがとう!」
と電話を切った。そうすると詩織が
「何かあったの?」
と聞いてくるので
「何かしら中国兵が私を探しているようです。」
「それはきな臭いわね。一度家でかくまうわ。さ、行きましょう。」
そういって詩織の屋敷まで急いで戻って行った。
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