第13話

その少女の顔は見たことがあった。俺をそこそこしたってくれる後輩るんだった。たまたま一緒の店に入っていたとは幸運なことだった。じゃなければ今ごろ俺はナイフに刺されて天はどうなったか分からなかっただろう。それにしてもまさか剣術を習っていたとは。


「るんサンキュー」


「それはまだ後ですよ。まだ残っているので」


3人ほど腑抜けた顔をした男達がいたが、るんは相手を考える間も与えず間合いを詰めて男の脇腹に一発攻撃をいれて、ふらついた隙に後頭部に強力な一撃をいれる。まるで電光石火のようだ。それも他の男にもしてあっという間に鎮圧した。


そして拍手が起きる。るんの意外な一面が見れた。後は警察が来るのを待つだけか。るんがいないときは死を覚悟したがな。


「るんありがとな」


正直キュンときた。カッコよさと可憐さが合わさっていたからだ。それと一切動揺した様子がなく、凛とした感じでいつもと違うギャップを感じた。これがギャップ萌えというやつか。


「薫先輩がなぜかかここに来る気がしたんですよね。まぁ来てよかったです。あのままだと刺されていたので。なにもできないで後悔するところでした」


「私からもありがとう。薫を助けるためにしたんだろうけど」


「感謝は受けとります。薫先輩のためと言っても」


どうやらここで喧嘩は起きなそうだった。いつもだったら一方的にるんか攻めているとこらだったからな。俺が天関係で巻き込まれると大体そうなる。天は困ったような感じになるが。


「まさか鹿島一刀流を使えるとは思わなかったぞ。どこで習ったんだ?」


「お父さんが師範代なんです。道場を開くために福岡から千葉にやってきたんですよ」


護身のためとはいえあんなに流麗に剣術を使うのは相当だよな。よくアニメででてくる女剣士をイメージしたわ。あれほどの実力があれば木刀を持っていれば無敵だな。


「なにかを極めるのはすごいことだよなぁー。俺もなにかを極めるか」


そんなことを呑気に話していると、るんの後ろから男がふらふらして、立つのが見えた。気絶してなかったのか!そしてナイフをるんに刺そうとしていた。今避けろと言っても避けられないと思い素早くるんの元へ向かい、るんを横に突き飛ばした。


ぐさ、ナイフが俺の腹を貫通した。ぐっ結構痛いな。天は驚いた顔をしていて、るんは何が起こったか分からないって顔をしていたが、俺の血が垂れるのを見て般若のような顔になり刺した男を木刀で首が折れるんじゃないかってくらい強く首に食らわした。そして男は苦悶の表情を浮かべながら気絶した。それと同時に俺も地面に横たわった。


「薫先輩大丈夫ですか!」


「ぐっよ、かったるんにな、何事もなくて」


「しっかりしてください薫先輩!もう少しで救急車来ますから!」


やべーぼやけてきた。まだ気持ちを伝えず死ぬなんて嫌だなぁー。腕も動かない。だが本当にるん達になにもなくてよかった。


「天、幸せになれよ」


すると天は泣きそうな顔になる。そんな顔するな。天は笑顔が似合うんだから。俺みたいなそこら辺にいるような男が刺されたくらいで泣くな。幼馴染みとして俺を忘れないでいてくれたらそれでいいからね。だんだん意識が朦朧となってきた。じゃあな天達。そこで俺の意識は落ちた。



ん?どこだここ?俺は気づいたら真っ白な空間にいた。あれかよくある転生の前に神様に会うやつか?できれば天国でゆっくり過ごしたかったんだが。


「薫さんあなたは生きてますよ。まぁ生かしているという状態なんですが」


すると何もない空間が裂けて陶磁器のような真っ白い肌にきれいな茶色の瞳をした女神のような美人がでてきた。一目見てこの人が神様だと分かった。


「神様、俺はまだやりたいことがあります。生かしてくれないでしょうか?」


すると神様はニコッと笑顔を見せた。その微笑みはまさしく女神のようだった。いや女神のようっていうより女神なんだが。とりあえず美しすぎたってことだ。


「本当はここで死んでしまうんですが、この世界を変えるだけの力を持っているので、ここで生かしますよ」


「俺そんな主人公みたいな血からを持っていませんよ。藤村じゃないですし」


「あなたは主人公ではないですが、脇役としては充分すぎる血からを持っています。それにあなたのことを好きな人もいますしね」


そう言って神様はウィンクをした。何それ可愛すぎ。それで神様の名前はなんというのだろうか?もしかしたら俺が聞いたことある名前かもしれない。


「あのー神様はなんて名前ですか」


「神産巣日神ですよ」


あの蘇生をさせた神様か。それなら生き返られせることに納得だ。あの神様って性別不詳だだたはずだが、こんなに美しい女神だっとはな。それを知れただけでもここにきた価値がある。


「それではそろそろ蘇生をしましょう。後次死んだら異世界に転生してもらうんで」


「分かりました。それては帰らせてもらいます」


異世界転生もそれはそれで楽しそうだが、今は天達と過ごす毎日の方が大切だ。すると、神産巣日神様が祝詞を唱えると、魔方陣が俺の足元に浮かび上がる。


「それではよい人生を」


そう言うと、俺の意識はこの世界から失くなった。








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