第3話 駆け込み寺の大騒動(その9)
「でけえなあ。五十階建てかあ」
冬祐は車窓からカンパーナ本部ビルを見上げて、ため息をついた。
今、いるのは管理庁舎で保有している無人誘導車の中である。
ワゴンタイプで狭くないはずの車内だが、旧型ロボットが身を縮めるようにして乗り込んでいるため、乗り心地は快適とは言えない。
表通りは様々な企業や団体のロゴを掲げたビルが密集する一画だが、午前中とはいえ通勤時間帯のピークを過ぎていることで人通りはほとんどない。
それでも、正面玄関前にはこれ見よがしな警備アンドロイドが、直立不動で睨みを利かせている。
「で、どうしよう」
つぶやく冬祐に、旧型ロボットが答える。
「裏口を探しましょう。警備が手薄な所があるはずです」
「なるほど。確かに」
旧型ロボットの入力で、クルマが裏通りに入る。
さすがに“裏通り”というだけあって、人影はまったくない。
冬祐が、カンパーナビルの裏手に見つけた非常口を指差す。
「あれだ」
それは“非常口”と掲示されてはいるものの、大きな観音開きの鉄扉だった。
そのサイズから、資機材の搬出入口を兼ねているのかもしれない。
「じゃあ、開けるよ」
ヒメが先にクルマから出て、扉脇の制御パネルに潜り込む。
そして、周囲の防犯カメラを含めたセキュリティシステムを停止させて、扉を開く。
「行こう」
「はい」
冬祐と旧型ロボットがクルマを出る。
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