第2話 祭りへようこそ(その2)

 冬祐は、メグの――正確にはメグのオーナーである里村月江の家にあるゲストルームで目を覚ました。

 ベッドに仰向けのまま、右腕に巻かれた包帯を見る。

 昨夜の入浴後にメグが巻いてくれたものだった。

 上体を起こして、薄暗い周囲を見渡す。

 半開きのクローゼットからはクリーニングされた冬祐の制服とワイシャツが覗いているが、その袖口もメグによってきれいに直されていた。

 里村月江は資産家であり、当然のように家は豪邸――どころではない“大豪邸”だった。

 そもそも、家にゲストルームがあるというだけでも冬祐の感覚からはありえない大金持ちだが、その部屋も教室の半分ほどの広さにダブルベッド、ソファセット、テレビ、さらに専用のバス・トイレまで完備されていた。

 そんなゴージャスな部屋に泊めてもらえるほど冬祐たちが歓迎されたのには理由がある。

 九十歳近い里村月江は、両目の視力が殆どないうえ車椅子の生活を送っていることで、メグの存在が生活そのものだったのだ。

 それゆえにメグが帰ってこないことを人一倍心配し、帰ってきた時は人一倍喜んだ。

 なので“助け出してくれた冬祐に礼をしたい”とメグを迎えに行かせたのは当然のことだったのである。

 冬祐はかすかな忍び泣きを聞いて目を凝らす。

 部屋の隅に置かれた充電システムの中で、翠が声を押し殺して泣いていた。

 なぜ、泣いているのかはわからない。

 冬祐は理由を探して、昨夜からのできごとを思い返す。

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