第二章【第六話】「クリーチャー」
【少年】の考えは、既におおかた纏まっていた。
まず、七子の捜索は、この世界ではできない。それは【少年】にしてみれば明らかなことだった。
そもそも、もともと七子の家があった場所は住宅地の中にあるにも関わらず、空き家になっていた。その空き家は、【少年】が以前冷たい麦茶を頂いた時の記憶とは大きく異なっていた。
見目は非常に見窄らしく、スプレー缶で描かれたであろうよくわからない落書きもなされていた。
そこには作為的な、悪意的な何かが渦巻いていた。
元の世界との違いが、その作為や悪意によって生まれたとするのならば、もう結論は言うまでもない。
この世界で、【少年】が知る中でそれができるのは、ただ一人――「あいつ」だけなのだ。
ならば、「あいつ」との交渉になるだろう。
((うへぇ…… 猛烈にやりたくなくなってきたよう……))
理由も無く、問題を設定し、手段を得た。後は実行するかどうかだ(CV.江●拓也)。
◇◆◇◆◇
また、だ…。また、ここにきてしまった…。
あと何度こんな事をしたら、彼は私を見てくれるのだろうか、そんな下らない疑問が湧いてくる。
そんなこと、ある訳ないのに。
他人に、級友に、親に、教師に、全ての人に迷惑をかけて、私は何を得たのだろう?
「『何も得んかった、ちゅーよりも「罪」を得た、ちゅーべき』ね……」
考えていたことを、目の前の「奴」に言われてしまう。
私は、思っていたことを見透かされた怒りと、心中を声に出して言われた恥ずかしさを「奴」に返してやる。
「『でも、ここに「罰」はない』でしょ、自称【世界】?」
「あんがと、【少女】ちゃん。おかげで時短できた」
「できてない」
目の前にいる、やたら露出の多い格好をした金髪の少女(?)に、ちゃんと突っ込んであげる。そうしないと「突っ込めや!」って怒鳴られるから、仕方なしに。
「そんな口きいてええんか? この【世界】さんに、お願いがあってここに来たんやろ?」
「っつ…」
「どーしょっかなー? 叶えてあげても、私ににゃあメリットないかんなー」
目を大爆笑させながら、甚だ鬱陶しい口調で「奴」は言った。こう言われると弱る。私のしていることは、単なる「協力依頼」でしかない。はぁ、とため息を吐いてから、私は「奴」に向き直っていってやった。
「――ウ●カフェスイーツシリーズ、全種で手を打とうじゃ……」
「よろしい」
即答だった。どうやら正解を引いたみたいだな。私は心の中で、二人の偉人に「さようなら」を言った。またバイトしないとなぁ……
◇◆◇◆◇
ともあれ、これでまた新たな世界が幕を開ける。
――だって私は、『作り物』なんだから。
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