第3話 体育の授業でダンス

〇体育館


//SE 生徒たちのガヤ


「これから体育の授業だけど、今日は何だかいつもと違うね」


「いつもなら男女別々だけど、今日は一緒」


「いったい何をやるんだろう」


「あっ、先生が来た」


「ゔっ……、社交ダンス……?」


「『簡単なダンスだから、別に気張る必要はない』……?」


「そんなこと私は別に心配していない」


「ダンスなら普段からやっているし」


「なんなら昨日も今度のライブコンサートのためにやった」


「そして今日も学校が終わったら、レッスン」


「私が気にしていることは別……」


「やっぱり……」


「……」//ため息


「先生が誰かとペアを作って、だって……」


「ああ……、すぐにペアができていく……」


「あの子も、あの子も……」


「……」//唇を噛む


「……もう……、先生にも想像してほしいよね」


「みんながみんな仲良しばかりじゃない、ってことをさ」


「君もそう思うでしょう?」


「……うん、君もそうだったよね……」


「……」//苦笑い


「君も誰かと踊る人がいないの?」


「君は自分から誘ったりはしないんだ」


「ここに余っている人がいるんだけど……」//期待


「……」//不満で震える


「ええい、私も一人だと言っているだろうが……!」


「なんで誘わない!」


「もう!」//可愛く怒る


「君も一人なんでしょう?」


「ね、ねえ……、も、もし……、よかったら、でいいんだけど」


「……わ、私と一緒に踊らない?」


「拒否することなんて、できないでしょ?」


「君には他に踊ってくれる人がいるかな?」


「いないでしょ」


「だったら私と一緒に踊ろうよ……」


「ねえ、そうするしかないでしょう……?」


「……ほら、もう始まる」


「……まずは準備運動からだってさ」


「……」//真面目になる


「最初は身体を柔らかくするための運動」


「座った状態で」


「開脚して」


「上体を前に倒していくの」


「そして……」


「それをやる人はペアを組んだ人に背中を押してもらう」


「まず君がやってみる?」


「私が君の背中を押してあげる」


「心配しないで……」


「優しくするから」


//SE 体勢を整える音


「……じゃあ、始めるよ……」


//SE 身体に触れる音


 力の加減によって変わる息遣い。

 強弱を繰り返す。

 その呼吸を5回ほど。


「大丈夫?」


「……痛くない?」


「……じゃあ、もう一回ね」


//SE 身体に触れる音


 力の加減によって変わる息遣い。

 強弱を繰り返す。

 その呼吸を5回ほど。


「ふう」//ひと息つく


「……次は私の番」


「君が私の背中を押して」


//SE 体勢を整える音


「……あまり強くしないでよ……?」


//SE 身体に触れる音


 力の加減によって変わる撥音。

 リズミカルな感じ。

 それを6~7回ほど発する。


「……このぐらい全然余裕」


「もっと強くしていいよ……?」


//SE 身体に触れる音


 力の加減によって変わる撥音。

 リズミカルな感じ。

 それを6~7回ほど発する。


「……ふう……」//ひと息つく


「ありがとう」


「身体が温まってきた」


「……」//少し呼吸が乱れる。


「それじゃあ、やっとダンスだね」


「先生が号令を出している」


「……(君は)わかった?」


「まずは互いに手を握るの……」


//SE 手が触れ合う音


「……」//上手くできないのを見かねるような


「……いや、そうじゃなくて……」


「……こうだよ……」


//SE 手が触れ合う音


「片方は指と指が交差するように重ね合わせる」


「もう片方は、そっと添えるように相手の肩に乗せるの」


「そう、そう」


「……それから」


「えっと……」


「前後左右に足を動かしてみる」


「君が前に踏み出せば、私は後ろに」


「君が後ろなら、私は前に」


「君が左なら、私は右に」


「君が右なら、私は左に」


「……」//少し緊張した息遣い


「肩の力を抜いて……」


「一歩一歩」


「息を合わせることが大事」


//SE そろそろと足を動かす音


「いち、にー。いち、にー。いち、にー。いち、にー」


「ふう」ひと息つく


「いち、にー。いち、にー。いち、にー。いち、にー」


「……」//笑みがこぼれる。


「そうそう」


「その調子」


「ダンスにかけては私の方が先輩だからね」


「大船に乗ったつもりでいなさい」


//SE そろそろと足を動かす音


「いち、にー。いち、にー。いち、にー。いち、にー」


「いい調子」


「いち、にー。いち、にー。いち、にー。いち、にー」


「ふう」//ひと息つく


「先生が一旦休憩するように、だって……」


「……」//少し疲れた


「(君は)疲れた?」


「この程度で疲れたの?」


「え?」


「私の顔も真っ赤?」


「アハハ」//弾けるような笑い


「バカ言わないでよ」


「踊り慣れていない人をリードすることに慣れていないだけ」


「……」//呼吸を整える


「次はもっと複雑なリズムだってさ」


「前に進んだり、後ろに下がったり」


「そして揺れるように左右に動く」


「一歩一歩向きが変わるの」


「ほら、もう始まるよ」


//SE 身体が触れ合う音

   そろそろと足を動かす音


「いち、にー、さん。いち、にー。いち、にー、さん。いち、にー」


「続けて……」


「いち、いち、にー。いち、にー、さん。いち、いち、にー。いち、にー、さん」


「これは少し疲れるね」


「でも楽しいよね?」


「私は楽しい」


「(私は)ちゃんとリードできてるかな?」


「それなら、よかった」


「呼吸を整える……」


「ゆっくりと息を吸って…」


「はいて…」


「吸って…」


「はいて…」


「……ほら、いくよ…」


//SE そろそろと足を動かす音


「いち、にー、さん。いち、にー。いち、にー、さん。いち、にー」


「まだまだ……」


「いち、いち、にー。いち、にー、さん。いち、いち、にー。いち、にー──」


//SE 転ぶ音

「きゃあ!」


「アハハハハ!」


「足がもつれた」


「アハハ」


「下手な君のせいで」


「私までダンスが下手になったじゃないのよ」//明るく


「イタタ……」


「……ううん」


「大したことないよ」


「ケガもないし」


「ありがとう」


//SE 手が触れ合う音


「手を取ってくれて」


「……」//気を取り直す


「……本当に大丈夫……」


「別に君のせいじゃないよ」


「私が気を抜いてしまっただけだから」


「大丈夫」


「本当に大丈夫だから」


「ほら、気を取り直して、続きをやろう」



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