第2話 バスの中で

〇バスの車内


//SE バスの走る音


「今日も疲れたなー」


「……」//隣の様子を窺う


「たくさん課題が出されたね」


「でも」


「それをやる時間も気力もない」


「別に」


「(私は)怠けているわけじゃないよ」


「私には学校が終わっても」


「まだ」


「やることが残っている」


「そう」


「アイドル活動……」


「このバスで」


「駅まで向かって」


「それから電車に乗る」


「別の町で」


「ダンスのレッスンなんだ」


「日によっては」


「テレビやラジオ番組の収録」


「あとボイストレーニングもあるね」


「とにかく」


「たくさん予定があって」


「気持ちが安らぐ暇なんてない」


「よくさ……」


「『彼氏はいるのか?』」


「なんてことを」


「訊かれるんだけどね」


「彼氏がいたとしても」


「自由に付き合う時間なんてないよ」


「……」//隣の様子を窺う


「君は?」


「忙しくない……」


「なんてことないよね」


「君には……」


「彼女とか……」


「あるいは」


「好きな女の子とかはいないの?」


「……ごめんね」


「突然、変な質問をして……」


「……」//少し緊張


「べ、別に」


「深い意味が」


「あるわけじゃなくて……」


「ただ訊いてみただけ……」


「ふうん」


「そっか……」


「いないんだ」


「友達も、か……」


「……」//気まずい


「君も私も一緒だ……」//笑う


「……」//落ち着く


「……夕陽が綺麗だね」


「西日が射して」


「バスの中に」


「温もりを作り出している……」


「それに包み込まれているみたいで」


「疲れた心と身体には」


「優しいね……」


「こういうの私は好きだな」


「疲れているときだからこそ」


「何気ない事に」


「心が安らかになるんだろうな」


「……きっと」


「疲れていなかったら……」


「こういう気持ちにはならない」


「……」//顔色を窺う


「ごめんね」


「(さっきは)妙な質問をしてしまって……」


「でも……」


「私にも」


「仲のよい人は」


「クラスに一人もいない……」


「これは」


「私自身の」


「性格のせいでも」


「あるかも知れないけどね……」


「いつも」


「気が抜けないような感じを」


「抱えている」


「ライバルとの」


「競争にもまれて……」


「その緊張を」


「クラスの中に」


「無意識に持ち込んでしまっているのかも……」


「でも」


「今は」


「君とバスに揺られているだけ……」


「他に乗客はいない……」


//SE 肩にもたれかかる音


「……」//穏やかな呼吸


「……」//ハッと目覚める


「あっ」//恥ずかしい


「ごめんなさい」


「安心しすぎて」


「つい君の肩にもたれかかっちゃった」


「ちょうどいい肩だったから」


「……つい」


「……」//気づき


//SE バスが停車する音

   ドアが開く音。


「もう駅に着いちゃった……」


//SE 立ち上がる音


「じゃあ、またね」


「また、明日学校で」


「……バイバイ」


//SE 歩き去る音

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