同級生の孤高のアイドルは、一人ぼっちをこじらせて、僕の耳元で愛の告白をします。

夜野たいよう

第1話 放課後の帰り道

〇学校からの帰り道。


「おーい」//遠くから響く声


「もしもーし」


「おーい、ったら、おーい」//徐々に近づく声


//SE 駆け足の音


「君だよ、君、君」


「おーい、ったら、おーい」//さらに近づく声


「……」//立ち止まり、呼吸を落ち着かせる


「やっと、こっちを向いてくれたね」


「……」//怪訝


「……なに?」


「怯えたような顔をしてさ……」


「私のことが怖いかな?」


「まったく……」//呆れる


「同じクラスなのに……」


「……」//不安


「もしかして……」


「私のことを全然知らない……」


「なんてことはないよね?」


「アイドルとして、ってこともそうだけど……」


「同級生として、って意味だよ……」


「……」//表情を窺う


「……」//少し不満


「『アイドルとしても』」


「『同級生としても』」


「『ほとんど知らない』……」


「ふうん」//強がる


「アイドルをやっていることは知っている……」


「けれど……」


「興味がないんだね……」


「……」//一人で納得


「そっか……」//残念


「そうだよね」


「……」//気を取り直して


「じゃあ……」


「自己紹介させてもらおうかな」


「私は、君と同じ高校2年B組の空峰凪沙」


「学業と並行して」


「アイドル活動をやっている」


「アイドルとしては一応グループのセンター」


「わりと人気がある」//得意げ


「色んなメディアに出演していて……」


「わりと有名」


「SNSのフォロワーも何百万人といる」


「君は私のことをフォローしてくれていないようだけど……」


「……まあ……」


「そうだよね……」


「興味のない人にとっては」


「特に意味のない話……」


「……」//何を話そう


「けど」


「それは、むしろ普通」


「……」//俯き


「うん」


「そうだと思っていた」


「……でも……」


「一応アイドルとして活動していることを」


「知ってくれてはいるらしいから……」


「それはよかった」


「……」//嬉しい


「私たちは……」


「これまで交わることがなかっただけ……」


「触れ合う機会がなかっただけ……」


「……ねえ」


「君はバス停まで向かっているんだよね……?」


「……」//恥ずかしがる


「き、君の気持ちを」


「聞きたいのだけど……」


「え、えっと……」


「その……」


「わ、私も……」


「そこまで、ついて行って構わないかな?」


「……」//不安


「……」//嬉しい


「ありがとう……」


//SE 二人が歩く音


「……ところで」


「君はいつもこうして一人で登下校しているの?」


「……」//話に相槌を打つ


「……」//考える


「私は」


「普段はバスじゃなくて」


「車を用意してもらうことが多いかな」


「……まあ」


「そのときの気分によって変わるけど……」


「今日は……」


「バスに乗りたい気分なんだ……」


「……」//言いよどむ


「……君がよかったらさ」


「私は」


「き、君の隣に座りたい……、なんて……」


「……!」//驚き

      ファンにサインを求められる。


「『サインが欲しい』?」


「……」//少し困る


「……いえいえ」


「大丈夫ですよ」


「喜んで」


//SE サインを書く音


「はい」//笑顔でサインを渡す


「どうぞ」


「いつも応援ありがとうございます!」


「……」//ファンの話を聞く


「(あなたは)私のラジオをいつも聴いてくださっているんですね」


「わあ」


「嬉しい!」


「本当に、ありがとうございます」


「『意外と実物は優しい』……」


「えー」//可愛く不満


「それって、褒めているんですかね?」


「クールで」


「少し話しかけづらい」


「とは言われますけど……」


「いやいや」//ファンの話を聞いて、慌てる


「この方は彼氏じゃないですよ」//苦笑い


「私たちのグループは恋愛禁止なんですから」


「そんなわけないです……」


「ほら」//SE 肩を優しく叩く音


「君も否定して」


「ほら、早く」


 ファンとの会話終わり。


//SE ファンが歩き去る音


「……」//気を取り直す


//SE 二人が歩く音


「……ごめんね」


「私はファンの方に話しかけられて」


「嬉しかったけど……」


「君は嫌じゃなかった?」


「……こういったことが君は苦手だと思ったから……」


「……」//不安


「……」//安心


「よかった……」


「……」//覚悟を決める


「あのね」


「私も今日はバスに乗りたい気分だから……」


「そ、その……」


「君がよければ……」


「なんだけど……」


「君の隣に私が座ってもいいかな?」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る