練習EP
勇者と呼ばれた人物がいた。
細身の身体と何処に隠されているのか謎に包まれた腕力と血の気が多い性格で、多くの功績を残した。
最大のそれは百年にも及ぶ魔王率いる軍勢の排除。幹部以上の存在を全て抹消した。
つまりは魔王も討伐したことなわけだが……。
「王様っ! ご報告に! ご報告に戻りました!」
精鋭で組まれたはずの魔王討伐部隊。
全身を赤く染め、顔は恐怖に塗られた唯一の生き残りである一人の隊員が次に口にした言葉にその場にいた誰もが夢を与えられた。
「勇者より伝言です! 魔王には私が間違いなく死をもたらした。名誉など要らない。今すぐに民の心に安寧を」
歓喜の声は一瞬にして広がる。
しかし、すぐに絶望が民を襲う。それは勇者が帰還しなかったこと、先の隊員の失踪だ。
拠り所となるべき存在が消え去ったことにより生まれるそれは計り知れないものだった。
ただこれもまた不思議なことに、報告のあった日を境に故精鋭部隊を必要とする魔族はいなくなった。
そうして、時は経ち十年後。
久しく訪れた平穏に戸惑いもなくなり、何ひとつ異常のない日常を送る世界で今日も一人の男は職場に向かっている。
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