第40話 女神よりも性癖!

 アンドレーが、去りゆく2人を呼び止めて、アクスバードの買い手についてたずねた。


 2人は、買い手の名と住所を教えてくれた。


 アンドレーは、さっそく、その買い手の家に向かうことにした。


 街道を抜けて、メイルストーの門に差し掛かったときである。


 彼を待ち伏せしていたある人物と鉢合わせになった。


 クリステルだ。


 女神らしい華やかなドレスを着ていて美しかった。


 アンドレーがあいさつした。


「久しぶりじゃのう。


 クエストは順調に進めておるぞ。


 なかなか、よい修行になっておる」


 クリステルは腕を組んで、プンプン起こっている。


 女の怖い目をしている。


「アンドレーさん、ご機嫌よう」 


 クリステルはニコリとしたが、目の奥は笑っていない。


「そんな笑顔でどうしたんじゃ?


 なにかいいことでもあったのか?」

 

 女神のこめかみに血管が浮き出した。


(いいことでもあったのかだと? 


 こいつ、本当に涅槃を得たのか?


 超鈍感なんだけど)


「アンドレーさん、森の中で何をされていらっしゃいました?」 


 クリステルは、アンドレーを探して森の中を探索していた。


 そして、アクスバードに食い殺されそうになっている者たちや、土のピラミッドに閉じ込められて窒息死しそうになっているものたちに出くわして、助けてあげた。


 そしたら、アンドレーの暴挙であるとこが判明した。


 クリステルはそれを知って激怒して、この場で待ち伏せしていたのだ。


「クエストの一環として、森のそうじをしていた」


 アンドレーが晴れやかにいった。


(そうじ? お前がソードマジカの一番のゴミじゃ) 


「アンドレーさん、今日一日お付き合いしていただきたいんですが」 


「それは難しいな。


 これからがクエストのクライマックスじゃから」 


「あはは、クエストなんか後回しで構いません。


 転生者にとっては、女神の用事が一番なのですから」


「断る」


 アンドレーがきっぱりと言った。 


 クリステルは、女神スマイルを崩さないように必死だが、こめかみの血管がはちきれそうになっていた。


「転生者は女神のいうことを聞く決まりに……」


「断る。


 クエストが終わり、エディタとワンナイトフィーバーしてからなら構わんが」


「女神のお願いよりも、性癖が優先ですか?」  


「当然じゃ」


(ですよねー。あなたってそういう煩悩まみれの凡俗ですよねー)


「ですが、どうしてもあなたに聞いて頂かないといけないお話があるので、いったんクエストは中断していただきます」 


「なんじゃ、話を聞くだけでいいのか。


 それならそうと最初からいえばよかったのじゃ。


 同時進行でいこう」


 アンドレーがそう言うと、勝手に歩き始めてしまった。


 クリステルが慌てる。


「同時進行ってどういうことですか?」


「おぬしが我についてきて話をすればよい。


 我はクエストを進行させながら話を聞く」

 

「いや、それだとちょっと困るんです。


 大事な話なので、じっくり腰を据えて聞いてもらわないと」


「心配するな。


 金剛心の精神で両立させて見せる」


(あぁもう金剛心とか涅槃とか聞いたらアレルギー起こしそう!) 


 話していると、魔獣の買い手の家の前まできた。


 さっきの夫婦に教えてもらった場所だ。


「あの、アンドレーさん。


 さきにこっちの話を聞いてもらいたいんですけど」


 バコンッ! 女神が言い終わるかいなかのうちの出来事。アンドレーが、いきなり玄関扉を蹴破った。


(何やってんだコイツッ!)


 女神がびっくりするのも無理はない。

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