第33話 夜明けて事が始まる

 アンドレーたちは、地上に戻る出口を探して地下ダンジョンを歩き続けた。


 すると、都市の下水動に出た。


 地下ダンジョンは下水と繋がっていたようだ。


 レンガで固めたトンネルは、腐った匂いがひどかった。


 壁も、ゾンビの吐息をあびたみたいに、得体の知れない色に変色している。


 ずいぶんと歴史のある下水動のようだ。


 しばらく歩くと、下水のトンネルを抜けて、大きな人工河川に出た。


 ようやく外の空気が吸えた。

 

 空はもう明るくなりかけていた。


 エディタは一睡もしていないから、眠そうな顔をしていた。


 地下を彷徨ったせいで、服はドロドロ。


 体は臭かった。


「ソープスプラッシュ」 


 アンドレーがエディタに向かって水の魔法スキルを発動した。


 アンドレーがかざした手から、ものすごい勢いで泡ぶくが出てきて、エディタに吹きつけられた。


 彼女は、雪だるまならぬ、泡だるまになった。


 泡の一粒一粒が、彼女の肌の汚れを吸い取っていった。


「ウィンディーブロー」


 今度は風の魔法スキルだ。


 小さな竜巻が、エディタの体を覆う泡を巻き上げて、空高くへ消えていった。


 泡と風に揉まれた彼女は、あっというまにピカピカの女になった。


 アンドレーがエディタを抱き寄せ、うなじの匂いを嗅いだ。


 不潔な匂いはなくなっていた。


 ほのかに甘い肌の香りがした。


「うむ。女は清潔に限る」 


 アンドレーが言うと、エディタの顔が赤くなった。


 2人はそのまま宿へ向かった。


 宿をとると、アンドレーはエディタをベッドに寝かせた。


「いますぐおぬしを食べたいが、その前にやらねばならぬことがある」


「昨日から一睡もされていませんよね?


 寝なくても大丈夫なのですか?」


「我は不眠なり。


 睡眠は不要」


 彼はそういって、部屋を出ていった。


 彼は、宿屋を出ると、エミーリアたち3人と合流した。


 あまり人気のない場所だった。


 その頃にはもう夜があけて、月が薄くなり、空が青くなりはじめていた。


 エミーリアが言った。


「アンドレーさま、エロイーズさんに風伝をおくりました」


「ご苦労じゃ。


 これで速やかに街の掃除ができる」


 オリーヴィアが心配そうにいった。


「昨夜の保安局襲撃事件のことは、街中に知れ渡っております。


 くれぐれも無茶なさらないでください」


「心配無用じゃ」


 アンドレーが、心配そうにしている3人娘に順々にくちづけていった。


 彼はいまから、何を始めるつもりなのだろうか。

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