第26話 血まみれの牢屋とキッスとバトル
一分後のこと。
別の見張りの男が、口から血を流し、顔を壁に押し付けられていた。
彼をひどい目に合わせているのは、もちろん我らがヒーロー・アンドレーだ。
見張りの男の顔は、今にも押しつぶされそうになっていた。
「さっきここへ投獄された紫髪の若い女がいたじゃろ?」
「ああ」
「どこにいる?」
「手前から三番目の牢屋だ」
二人のいる場所から、奥に向かって牢屋がずっと続いているのが見える。
アンドレーは、見張りの顔を渾身の力で壁にぶつけた。
彼は、気絶して崩れ落ちた。
アンドレーは、三番目の牢の前にたち、鉄格子の隙間から中を覗いた。
エディタがいた。
娼婦らしい煌びやかな恰好の少女が、牢の隅で膝を抱えて座り、メソメソと泣いていた。
アンドレーが、見張りから奪った鍵を使って中にはいった。
「あなたは?」とエディタ。
アンドレーは、彼女の質問を無視して、こんな言葉をつぶやいた。
「我の想像は、やはり正しかった」
エディタは、目の前の男が敵なのか味方なのか判断できなかった。
ただ、その異様なまでのたくましいオーラに、なんとなく魅了されていた。
アンドレーが言う。
「ハンディストー村で、おぬしの母に会った。
彼女の容姿は、我の性癖のど真ん中であった。
だから我はこう想像した。
娘もきっと母の容姿を受け継いでいて、我の性癖をよろこばせてくれると」
アンドレーは跪き、彼女に顔をよせ、まじまじとその可愛らしい顔を愛でた。
彼は彼女の頬をやさしく撫でながら言う。
「おぬしも我のハーレムに入れ。そして、ともに涅槃の世界に入ろう」
アンドレーが唇を寄せた。
エディタは、氷漬けにされたみたいに身動きができなかった。
二人は、唇と唇で繋がった。
と、バタバタバタと忙しない足音が聞こえてきた。
侵入者に気づいた保安官たちがやってきたのだ。3人いた。
牢の前にたち、アンドレーに気づくと、
「
タイムストップの時空魔法が使えればよいが、結界の中では無理だ。
いかなる妨害も、体当たりで突破しなければならない。
「エディタ。外に出るぞ」
アンドレーの言葉に、少しためらったが、彼女はこう思うことにした。
(たぶんこの人は味方だ)
保安官Aが扉を閉めようとした。
閉じ込める気だ。それを察したアンドレーは風と化した。
ビュンと走り込み、扉の間に警棒を突っ込んで扉が閉まるのを阻止した。
彼は、鉄格子の間から手を突っ込んで、保安官Aの隣にいたBの髪の毛を掴んで、思いっきり引っ張った。
Bの頭蓋が鉄格子と激しくぶつかり、脳震盪をひき起こしす。
Bがふらつく。
すると、アンドレーがBを後ろに突き飛ばした。
Bの真後ろには、保安官Cが立っていて、BはCを巻き込んで一緒に床に倒れ込んだ。
アンドレーは保安官Aと、扉の開閉をめぐって争った。
扉をしめようとするAと、開けようとするアンドレーの力比べだ。
力の差は明らかであった。
「ヌォッ!」
アンドレーが唸ると、扉はこじ開けられた。
彼は、そのまま保安官の顔面に頭突きを食らわせた。
のけぞった保安官の顔から血潮が吹き出した。
アンドレーがトドメの蹴りで彼を突き飛ばした。
アンドレーはそれで安心せずに、すぐに保安官Cを睨んだ。
Cは、Bの巻き沿いを喰らって倒れたが、大したダメージはなかった。
すぐに起き上がって、所持していた拳銃を構え、アンドレーのこめかみを狙っていた。
保安局襲撃はテロ行為だ。
保安官にはテロリスト殺害の許可が常時おりている。
だから、彼に躊躇する動機はなかった。
狙いを定め、トリガーの指に力をかけた。
が、引き金が引かれるよりも前に、アンドレーが投げつけた警棒が、彼の喉笛を直撃した。
殺し屋の投げナイフのように、アンドレーの手から放たれた警棒のきっさきが、保安官の呼吸を止めた。
息が止まり、喘いでいる保安官に、アンドレーの容赦ない延髄切りが浴びせられた。
3人の保安官は、あっという間に戦闘不能に陥った。
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