第15話 冒険が始まって、アンドレー劇場始まる!

 店を出るとエミーリアが言った。


「いよいよ冒険者としての旅が始まるんですね。


 アンドレーさまとご一緒できるなんて、わたし光栄です」 


 彼女がアンドレーに抱きつくと、他の女も一斉に彼に抱きついた。


 一本の雄しべに3本の雌しべが寄りかかっている。


 極楽浄土の花景色。


 彼らの目的地はハンディストー村だ。


 現在地から600キロバートルの距離がある。


 休みなく歩けば丸一日の距離だ。


 現在地と目的地とのちょうど中間の場所に、メイルストーというこの国の首都がある。


 大都市だ。


 今はもうお昼をまわっているので、とりあえず今日はメイルストーまで行くことにした。

 

 一行は張り切って出発した。


 町を出ると、果てしない草原が広がっていた。ところどころに黄色やピンクの花が群生している。蝶も飛んでいる。


 のんびりゆらゆらと続く道の向こうに山が見えた。


 その山を越えたらメイルストーだ。


 彼らが進む道の両脇には、腰の高さほどの草がおいしげっていた。


 アンドレーは、草村から、いつ魔獣が飛びかかってくるかわからないから、つねに戦闘隊形をとるように3人娘に命じていた。


 ウィザード3人が、横一列に並んで、アンドレーの盾になるような恰好で歩いている。


 防御力最低の少女が前衛ポジションに構えているのだ。


 アンドレーは、か弱い女を盾にして、自分だけ安全な場所に身をおいている。


 クズ男の鏡だ。


 アンドレーが言った。


「可愛いウィザードたちよ、我を信じよ。


 我は涅槃を得たフェミニストじゃ」


 彼が言ったその時である。


 草村から、ギラリと光る何かが飛び出してきた。


 そして、エミーリアに襲いかかった。


 魔獣・マゾヒスネークだ。マゾ気質の蛇型モンスター。


 特殊スキルは「まきつき」  


 かの魔獣はさっそく特殊スキルでエミーリアを攻めた。


「きゃあ!」 


 蛇は、ちょうど一本の縄のようになって、彼女の両足を締め上げた。


 彼女は尻餅をついてしまった。


 必死に引き剥がそうとするが、うまくいかない。


 蛇の表面を覆う粘液のせいで手が滑るのだ。


 エミーリアは、装備していた木の杖で、魔獣をブってみたが、ポン、と間抜けな音がするばかりで、相手は知らぬ顔をしていた。


 アンドレーは、うろたえる少女を見ながら思っていた。


(ウム。この感じ、嫌いじゃない)


 彼は、エミーリアを助けようともせず、なぜか草むらの中に入っていってしまった。


 彼は一体、何をしようというのか……。

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