夢ログ 3
「いっせーのっせ、4」
「はい、いっせーのっせ、5」
─なぜこんなことをやっているのだろうか。
いま僕は魔女の塔の中にいる。友達と・・そして妹らと。ここ数ヶ月ずっと魔女とその子供の遊び相手をしていた。
僕は竜族の息子で父はその一体を納めている長でもあった。親が権力があったので大抵の事は思い通りに・・ それにはぶりをきかせてあばれまわったりもしていたけど。
─今はある意味『監獄』の中・・
妹と友達でいたずら本意で近くの魔女の塔に遊びにいったらこの様である。人間族の何十倍の力を振るえる体ではあったが、魔女の前では赤子そのもの。その膨大な魔力の前ではなにもできなった。
で、こうして魔女の子供と些細な遊びを永遠とさせられている・・飲まず喰わずで・・
妹や友達にも体力の限界が見え始めている。僕自身も飲まず喰わずではさすがの竜族でももたない。
「あの・・魔女様・・?そろそろ僕たちを解放してほしいのですが・・。」
自分の子供が遊んでいるのを眺めていた魔女に開放して欲しいと願う。
どう考えても人間族・・そのものなのに・・ 黒い髪・・黒い瞳・・ 年齢も人間族だと20歳程度のものすごく若いメスだろう・・・ その子供も・・そっくりな顔立ちで・・年齢もそうないはず。 こんなやつらに力負けするのが信じられない。
「うーん?そうだねー。正直お前らに噛みつかれたのが結構頭にきていたからね、本当は殺そうかとおもったんだけどさ。」
「・・ちょっとしたいたずらじゃないですか・・ 命を奪うだなんて・・頼みます・・そろそろ解放してください・・ 妹も限界なんです・・。」
唯一の妹も顔を真っ青にして息切れをしている。長である父親はたくさんの種族を嫁にとっていたため、多種多様な子供が生まれた。今この場に一緒にいる妹は人間族との子。角とかがあるが人間そのものの外見だ。また人間の血が強いため体力もそれほどないのだろう。
「そうだねー。じゃあこうしよう!次のゲームで一発お前達でそろったら解放してあげようじゃないか!・・ただし・・そろわなかったらあと数ヶ月はゲーム継続だね。」
「そんな・・この人数じゃ確立的にむりじゃないですか・・」
「そうかい?確実にゼロじゃないんだし。まぁ、いやならいいんだけど。それならゲームはつづけるさ。」
「・・・わかりました・・・。」
僕は妹と友達で魔女には多分たからないだろうと思われる、種族独自の合図をする。数をそろえるためだ。妹・友人ともにかすかに頷いたのを確認した。これでこちらの数はそろえられる。問題は魔女の娘が何をだすか・・0か・・1か・・2か・・ 確立は3分1・・ 掛けにしてはかなりの高確率だ・・これにかけるしかない。幸いに次の番は僕。いままで娘がだしていた数を思いだし、確立を想定した。大体の人間には癖がつきもの。大体同じしぐさをするからだ。間違いなく次は1だ。
「じゃ、いくよ!いっせーのせ!4!」
案の定魔女の娘は1をだした。やった!勝った!
「勝ちました!!! 約束ですよね!! 返してくれるんですよね!!!」
妹や友達も安堵の表情を浮かべている。
「だめだ!」
魔女が声を荒らげる。
「え!なぜですか!!かったじゃないですか!!約束・・」
「私は『お前達』がそろえたらっていったじゃないかぁ~。私の娘はいれてではないんだよね~。」
「そんな!でも・・」
「でもも糞もないよ。てゆーか、あんたらずるしたでしょ!魔女が心が読めないとでも・・?」
満面な笑顔で魔女は笑う。そしてなにかを詠唱し、右手にスライムを召還した。
「ずるした子にはお仕置きだねぇ。生きたままとかしてこやしにしてやってもいいんだけど。」
非常にまずい状況に陥ってしまった。共謀したのがばれている。本当に心がよめてたのかわからない、たんなるふっかけかもしれない。しかしじっさいに共謀したのは事実・・否定はできない。
「・・ごめんなさい! でも、妹は・・もう限界なんです。」
「そんなことしっちゃこっちゃないよ。・・・んー、でもまぁ・・ 竜の肉は色々と魔法薬の材料になるのさ・・。」
そういうと、魔女は胸元からナイフをほうりだし、僕の目の前に投げる。
「あんたの、尻尾・・そして、指・・ 切り落として私に提供しなさい?そしたら、この場から解放してあげる。」
魔女の目は本気の目だ・・ナイフを手に取り、妹らに目をやる。不安げな表情。またいいようにいいくるめて僕の体の一部だけ奪われるのかもしれないが・・ 力ある者の前で僕らに選択の余地などありはしない。
自分の尻尾を掴むと意を込めて切断する。冷や汗が止まらない。自分の体の一部・・痛くないわけがない。
「・・お・・おにいちゃん・・ やめて・・」
妹が涙目になりながら僕を止めようとする。しかし、妹らを助けるため。みなの命とくらべれば僕の体の一部なんて安いもの・・竜族なんでいずれ再生するかもだしな。
「あぁぁー!!」
さらにいをこめ、テーブルにおいた左手の指を切断・・が、躊躇したのか骨でとまってしまう・・
「あぁ・・ああああああああああ!」
中途半端にのこった指が自分に恐怖をあたえる。
「おやー。きれてないじゃない。」
魔女が左手に食い込んだナイフにむかって靴で思いっきり踏みつける。
「あああああああああ!!!」
その勢いで指三本は切断され、テーブルにころがった。僕は左手を押さえて痛みを堪える。
「ぐす・・ おにぃちゃん・・・」
おおべそを書いている妹に笑顔を見せ、安心させると魔女に再度うったえた。
「や・・約束どおり・・ 僕の・・ 体の・・ 一部・・です・・ 」
「んーそうだね。ありがと♪じゃ、この場から解放してあげるね。」
魔女は指を鳴らすと、いままで開いたことのない部屋の扉がゆっくりと開いた。
「あそんでくれてありがとー。途中までついてってあげるね。」
魔女の娘が前にたつと扉の前まで案内してくれた。後ろをふとみると魔女が笑顔で手を降っている。その笑顔は不気味でならなかった。
***
部屋をでると自然に扉が閉まる。ようやく外へとでられると安堵した・・・
・・・が・・ 魔女の娘がくすくすと笑う。
「・・・そ・・外に・・案内してくれるんですよね。」
「んーママは解放するって約束だったしねー」
娘が振り返り、後ろの方を指を指す。僕はつられて後ろをみた・・
「!!」
妹が・・ そいて友達がスライムに飲み込まれ。肉が・・骨がどんどん溶かされている。
焦った僕は手を向けようとしたが、既に遅かった。二人は完全に消化されてしまう。
唖然とするしかなかった。しかし、怒りがこみ上げ、振り向くやいなや渾身の力で娘の首を締め上げる。
「・・お前・・ 約束が違うじゃないか!こんなことを・・ こんな・・!」
「ぷぷ! んとね。ママのいいつけ通り解放してあげたよー?」
「『生きる』という地獄からね!」
「な!」
娘が指で上をさす。・・てに液体が垂れてくる。垂れるやいなや皮膚が浸食される。
おそるおそる上をみるとそこには大量のスライムが天井にはりついていた。息をのむがすでに遅くスライムが大量に落ちてきて僕も飲み込まれてしまう。
焼ける痛みに悶える中、娘は笑顔で僕に語りかける。
「じゃ、妹ちゃんとお幸せにね・・・!
─ 来世でね。 くすくす! 」
無邪気に笑う娘の顔が脳裏から離れない。溶かされ死にゆく僕を・・妹を・・・みて何がおかしいのだろう。 疑問に思う間もなく痛みと意識は闇に消える。
夢ログ 笹原 篝火 @kagarisasahara
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