第41話:大森林狩り

神歴1817年皇歴213年5月2日バカン辺境伯家領都大森林:ロジャー皇子視点


「今から大森林で狩りを行うが、決して無理はしないように。

 ゴブリンダンジョンや旅の途中で行った実戦訓練と同じように、生き残る事を最優先にする事、良いな?!」


「「「「「はっ!」」」」」


 表に出してはいけないモンスター肉を領民に食べさせるにはどうするべきか?

 簡単な話である、堂々と狩って見せればいい。

 それも俺ではなく配下の騎士や徒士が狩ってくれれば最高だ。


 俺は索敵魔術を使ってバンテン牛の群れを探す。

 2頭や3頭の群れでは意味がない、もっと多くの群れを探す。

 いた、36頭の群れを見つけたので索敵魔術を応用してこちらに追い込む!


「「「「「ブッモォオ~」」」」」


 こちらが待ち構えている所にバンテン牛の群れが猛突進してくる!


「エリア・スリープ」


 バンテン牛たちが一斉にその場で眠る。

 倒れてケガをしたバンテン牛がいないか確かめさせる。


「エリア・パラライズ」


 麻痺魔術をかけて痛みが分からないようにする。

 昨日鍛冶屋に命じて急いで作らせた、鼻輪をつけさせる。

 これで野生のバンテン牛も家畜にできると言ってあるが……


(ファサネイト、チャーム、エンチャンテッド、アトラクション)


 本当は魅了魔術のフルコースで従順にさせている。

 領内には農耕牛や農耕馬を手放してしまった農家が多い。

 野生の牛を家畜化して貸し与えたら、農耕が楽になるし乳製品も作れる。


 索敵魔術を使って効率的に狩れる獲物を探す。

 デュロック豚を見つけたが、豚系は母親と子供の群れしか作らない。

 多くても10頭以下で成獣は1頭しかいない。


 他の獲物が見つからなければ追い込むが、ひとまず見逃しておく。

 視野を高くして広範囲に見て探すだけでなく、レーダーのように群れがいるかいないか大雑把に探す。


 50頭近い生き物がレーダー索敵に引っかかった!

 ディスタント・ビュウで確実に見て確かめるとエピオルニスの群れだった。

 体重750kg級の走鳥は美味しい獲物だ!


「エピオルニスだ、油断するな!」


 スレッガー叔父上が配下の騎士や徒士に注意する。

 鳥形とはいえ750kgのモンスターに体当たりされたら、普通は即死する。

 実戦訓練を積み重ねてレベルアップしていても油断してはいけない。


 飼う気がないから問答無用で狩る、脚を狙って斬り、走れなくする。

 血抜きもかねて生きたまま首を刎ね飛ばす。


 血が利用できるモンスターなら別だが、そうでなければ肉食モンスターの誘い出すまき餌だ。


 俺の騎士と徒士は、皇国騎士や徒士とは比べ物にならないくらい強い。

 100人で助け合える連携も完璧にできている。

 中には魔術が使える者がいて、同数の貴族家が相手ならどこにも負けないはずだ!


「デュロック豚だ、こいつも問答無用で狩るぞ!」


 めぼしい群が見つからないので、放置していた豚の母子を追い込む。

 量的には効率が悪いが、味的には美味しい獲物だ。


「フォリスト・ウルフだ、獲物を奪われるなよ!」


 草食モンスターが途切れるタイミングで、森林狼フォリスト・ウルフを出す。

 索敵魔術の応用で操っているのだが、魅了魔術で配下にするよりは、家臣たちの経験値にした方が良い。


「カリブーだ、カリブーの大群だ、殿下、どうなされますか?!」


 俺の索敵には穴があると噂が流れるように、わざと俺より先に配下に気付かせる。


「エリア・スリープ、エリア・スリープ、エリア・スリープ、エリア・スリープ……

 カリブーは人に懐きやすい草食モンスターだ。

 食用肉は十分確保できたから、生きたまま連れて帰るぞ」


「「「「「はっ!」」」」」


「カリブーには担当を決めろ、直ぐに塩を与えろ、塩を与えてくれた者に懐くぞ」


(ファサネイト、チャーム、エンチャンテッド、アトラクション……)


 ウソではないが、完全な正解でもない。

 地球では、塩分が不足する冬場に、雪の上に小便をしてカリブーを手懐ける。

 今回は大量の岩塩を渡してあるから、表向きはそれで手懐けた事にする。


 実際には俺の魅了魔術で従わせている。

 大量のカリブーを家畜にできたら、冬には雪ぞりで移動が可能になる。

 最後に農耕牛に転用できる牛系モンスターを魅了して終わりにしよう。

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