「夏休み」
夏休み
ルンルンルーン♪ ルンルンルーン♪
「上機嫌だな」
「あったり前だよ! 夏休みだもん」
補習の翌日、僕とカケルはイオリの家を目指して歩いていた。今更だけど今は真夏なんだよね。だから僕は麦わら帽子を被り、タンクトップにショートパンツっていう夏らしい格好。
「俺も今更なんだが、その服ほんとに男用か?」
……さてと、イオリの家までもう少しだし頑張らないと!
「おい。話を逸らすな」
アハハ、何の事だろう。ちなみにこの服は店員さんに見繕ってもらったんだ。あの時の店員さん、僕を見て「え、男の子……」とか言ってたけど。意味が分からないよね!
「ナル様ー!」
そんな声が聞こえたのはイオリ宅が見えてきた頃だった。
◇ ◇ ◇
「歓迎するぞ、ナル」
そんな風に部屋に通され、いつも通りイオリがベッドに座り僕とカケルが床に座る──はずだったんだけど今回は乱入者がいるせいでイオリも床に座ってる。
「乱入者……酷くないですか?」
「あぁ。珍客と呼ぼう」
なんか萌葱兄妹の間で火花が散ってるような。まぁ仲の良くていいね♪
とまぁ、そういうことで今回は僕、イオリ、カケル、月海ちゃんの順に円形テーブルを囲むように座ってる。
「ナル様。夏休みは海にでも行きませんか? そこの金持ちならビーチの一つや二つ貸し切りに出来ますよ」
月海ちゃんはそういうが……そこの金持ちって、イオリのことだよね。もはや視線を向けてもなかったからね……はぁ、カケルはどんな教育をしてるんだよ。
「俺の責任じゃなくね?!」
「うるさいぞ、萌葱」
「なんで伊織まで俺に冷たいんだよ?!」
最近はカケルがいじられキャラで固定されつつあるね。っと、そんな話はどうでも良くて……
「お──」
カケルは「俺は良くない」とか言ってくるだろうけど放っておいて、夏休みどうするかの方が大事だよ。でもまだナナちゃんが補習だしねー。
「俺、邪魔か? 帰ったほうが良いかな……」
「冗談だよ、カケルー。落ち込まないでー」
ふぅ、今回はいじり過ぎちゃったみたい。反省反省っと♪ あ、ちゃんと反省してるからね? カケルは友達だから。ここにいてくれなきゃ困る。
「菜奈がどんな感じかも分からぬからの。予定に組み込むのは難しいじゃろう」
「あー、菜奈のチームは一回だけ遭ったけどなんかギクシャクしてたぜ。菜奈は五割以下のコンディションだろうな」
ナナちゃんのチーム……あのナナちゃんを中型ダンジョンに送り込んだ人たちだよね。うぅ、心配だな。酷いことされてないかなぁ。
「今の菜々なら大丈夫じゃろうよ。あの性格ならば」
確かに。トラウマを乗り越えてかなり変わったもんね、ナナちゃん。じゃあ心配はしなくていいとして、夏休みどーしよー。
「海と水族館と動物園と映画館と、えーっと」
「月海ちゃん、落ち着いてー」
行きたいところを次々言っていく月海ちゃんを落ち着かせる。落ち着いてーっていえば落ち着いてくれるからね。
「ナルよ。その女とくっつき過ぎではないか?」
「え、あ、うん。そうだね」
まずい、イオリも本格的に月海ちゃんに食いつき始めた。カケルは自分が関係ないからかニコニコ笑ってるし……助けてー、だれか。
「何やってるのよ……」
僕の願いが天に届いたのか救世主が現れる。それはさっきまで話題になっていた人物──ナナちゃんだった。やった、これで何とか……
「まぁ私はこっちで見てるから。暴れすぎないようにしなさいよ」
って、なんでぇぇえ?!
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