遭遇
「暇だね〜」
「妾にはそこそこ満喫しているように見えるが?」
僕の呟きに返事を返すのは勿論イオリ。回復魔法の光を動物に変えて戯れている僕をちょっと呆れたような目で見てきている。だって暇だったんだもん。
「まぁ、確かにすることはなくなってはおるが」
無駄な食料調達をしていた僕達。けど、食料にも限界があるのかこの辺り一帯は既に食べられる植物が無くなっていた。食料調達だけが唯一のやることだった僕達。もちろん、暇になってしまうのだ。
「あーあ、暇だなぁ……って、ぐぇえ」
僕は突然きた衝撃に思わず踏み潰されたカエルみたいな声を出してしまう。
「お主、カエルが潰されたときの声を知っておるのか?」
ドン引きしないでよ〜。小学生の頃、気づかずに長靴で踏んじゃったことがあるんだよね。あのとき、悲鳴を上げちゃって近所の人までフライパンやら箒をもって飛び出してくるっていう珍事に発展したのも良い思い出だなぁ。
「そ、そうか……それより、どうしたんじゃ?」
「えっとね、なんかいきなりガクンッて衝撃が……なんか体の中の何かが消える感じ」
そう、まるで魔力切れになった時みたいな……
「「ハリボテの白龍!」」
僕とイオリが同時に結論に至る。ハリボテの白龍が消えたから、その白龍を作っていた分の魔力が消えてそれがさっきの衝撃になった。んーで、ハリボテの白龍が消えたってことは……
「誰かが白龍に触れたということじゃな」
白龍は結局、回復魔法の光だから触れたら触れた者の傷を癒やして消えてしまう。カケルにした自動回復永続バフだって、無数の回復魔法の光を纏わせているだけでいずれ底尽きる。永続ってのは嘘なんだ♪
って今はそうじゃないや。
「ハァア!」
と背後から声が聞こえた。僕はすぐさま振り返って防御の体勢を……なんて良い動きが出来るわけがなく僕に出来たのはその場に頭を抱えてしゃがみ込むだけ。まぁ、広範囲魔法だったら意味ないけど。
「任せるが良い」
その声が聞こえてチラッと見てみるとイオリが巨大な火炎玉に向かって両手を広げていた。火炎玉の大きさ的にもかなりのやり手……イオリが使う氷は火に弱い。溶けてしまうから。
「イオリ!」
「任せるが良いと言っておろう」
僕の悲惨な叫びに軽く笑うイオリ。なんてかっこいいんだ! って感動している場合じゃない。だってピンチなのに変わりは──
「うむ。やはり
イオリがそう呟いたと思ったら火炎玉が霧散した。本当に霧になって消えちゃった。まるで魔力の残滓になったみたい……
「魔力干渉が魔法にも可能なのか確かめたかったんじゃ。どうやら魔力を媒体とするもの全てに干渉できるらしいな」
へ、へ〜、それはすごい。つまりイオリはどんな魔法でもさっきみたいに消せちゃうわけだ……いやいや冷静に処理しようとしたけど無理だよ! 何そのチート能力。
「それよりも
イオリの言葉にしゃがんだままだった僕は立ち上がり火炎玉が飛んできた方向を見る。森の中に三人くらいいる……あれ? アレって──
「三年生、だよね」
森の中は暗くて見えなかったが背の高さ的に三年生……少なくとも上級生なのは間違いない。だって一年生の人にあんなに背高い人はあんまりいない。しかもその人たちは同じチームじゃなかったし……
「なんでそんなに覚えておるんじゃ……」
背高い人は憧れであり憎むべき存在だからね。一度見たら忘れないよ。
「そこまでか……同級生のチームまで把握しておるのは期末試験の時に覚えたんじゃな」
「正解♪」
兎に角、戦闘だね。僕は回復しか出来ないから後ろで見てる。怪我したら治すから言ってね〜♪
「うむ」
こうして僕達と三年生(推定)との戦いが──
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