カケルの過去 其の弐(←…………え?
部屋の中には布団に転んだ女の人がいた。多分カケルのお母さん、なのかな? 寝転んで目を閉じているけど、なんというか殺気、みたいなのをひしひしと感じる。
「母さん……」
やっぱりカケルのお母さんみたい。それにしてはカケルがめっちゃ怯えてるような……手も声も、震えてるし。
「それで、バカ息子よ。お前は未来から来た、違いないか?」
「はい……」
お母さん、すっごい変な口調だなぁ。それにカケルはカケルで覇気なさ過ぎでしょ。そんなに怖いか、この人。でも、怖いからこそトラウマになってるんだよね。んー、僕にはさっぱり分からないや。
「私は、生きておるか?」
「……っ!」
隣でカケルが短く息を吸った。部外者の僕には今の質問がどんなものなのか全く分からないけど、もしかしたらお母さんは病気なのかな? 病気で、将来生きてるのが不安、とか? カケルはお母さんが死んだ瞬間がトラウマ? だったらもうすぐ死ぬんじゃ……
「死んでる、か……お前が殺したのか?」
は?
「……そうです」
は? え? ん?
「そうか……私はお前を愛すことが出来なかったからな、それは恥じるような事ではないぞ」
僕には二人の会話が全く理解できなかった。え、カケルがこの人を、実の母親を殺したの? だとしたら何でお母さんは平然としてるの。当たり前のように感じて……
「いつ?」
「この後です……」
は?
「爺は止めなかったのか?」
「クソジジイは、止めなかった。やりたいならやれって。それが俺の意志なら止めることは出来んとかなんとか言って……」
えーと……二人、とんでもない会話してるよね。僕の感覚がおかしいんじゃないよね。え、親殺しって当たり前だっけ。え、僕の家がおかしいの。え?
「そうか……まぁ良い。萌葱家は親殺しの家系だからな。お前にも私の血が流れてるってことだ」
親、殺しの家系。え、何そのパワーワード。怖い。この家、めっちゃ怖いよ! 何で僕はカケルのトラウマに入ったんだろ。柊樹さんがこっち来てれば……あ、でも、ナナちゃんのトラウマとか僕に出来ることないしなぁ。
「友達は、できたのか?」
「はい。三人くらいは……」
友達、三人……もしかして、僕と柊樹さんとナナちゃんのことかな? まぁ、それ以外カケルと仲良い人いないしね。
「ボッチか……言われてるぞ、バカ息子」
「あれぇ、僕の声聞こえてますぅ?」
なんか二人だけの世界が作られてたからてっきり僕の声は聞こえないのかと思ってたけど……
「最初から気づいておったぞ。男児の気配、だけど女の匂いがする。不思議な奴だ」
「あ?」
「落ち着くんだ、ナル。母さんは目が見えない代わりに人の気配に敏感なんだ。あと鼻が良い」
だから男の気配だけど、女の匂いって言ったのか……いや、どーゆーこと?! 女の匂いってなに。男の気配はなんとなく分かるとして、女の匂いって何なの?!
「元気だな。元気なのは良いことだ」
「そ、それでカケルのトラウマって……」
とりあえず話を進めようと切り出したわけだけど、言ってから気づいた。ちょっと無神経だったかなって。誰が好き好んで自分のトラウマを掘り返すんだろう……と思って隣のカケルをチラ見したんだけど──
「笑ってるの?」
カケルは笑っていた。笑う、というか微笑むというか……ほんの僅かに口角を上げている。いや怖いよ。何があったの!
「いや……さっきまで母さんが怖かったはずなのに、今は全然怖くねぇなって」
「それはお前に友が出来たからだろう。友ってのは心強いもんだ」
ふむふむ、カケルのお母さんの言葉を信じると僕がいるからカケルはトラウマを克服できたのかな? じゃあ僕はめちゃめちゃ重要じゃん。キーパーソン♪
「調子乗るなって言いたいが、今回は事実だな」
「フッ……とはいえバカ息子よ。お前のトラウマとやらは私自身じゃないだろう?」
お母さんの一言にカケルの表情が強張る。
「来るぞ、
お母さんがそう言った時、後ろのふすまが開いた。僕らが入ってきたふすまだ。僕とカケルは揃って後ろを振り返った。そこには──
「母さん、殺させて頂きます……」
震えながらも刀を握った幼いカケルがいた。
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