カケルの過去 其の参(←もう、何を言っていいのか……

 ショタカケルが僕たちを無視してお母さんに近づく。というか、僕たちは見えてないのかな? お母さんは気配で感じ取ってる、ってことかな。そのへんはよくわかんないや。


「フッ。バカ息子よ。心臓を外すなんて、鬼畜だなぁ」

「ヒッ……」


 お母さんは胸の辺りを刺されたにも関わらず、笑っていた。それを見たショタカケルは走って出ていってしまったけど。多分、この出来事がトラウマに……って、そういえばショタカケルに気を取られてたけど、普通のカケルは──


「あ、あ……母さん……」


 隣を見るとカケルはめっちゃ怯えていた。腰に力が入らないのか尻もちついたまま震えている……


「情けねぇな、バカ息子は」


 カケルのお母さんはそう言うが、カケルの反応は普通だと思う。少なくとも僕は目の前で知り合いが死んでたら腰を抜かすね。まぁ、萌葱家は親殺しの家系っていう話もあるから特殊なんだろうけど……


「母さん……すぐに手当を……」

「必要ないし、お前らはこの世界に干渉できないんじゃないか?」

「っ!!」


 カケルの表情がより悲惨なものになってしまう。何かしてあげたいのに何も出来ない。うんうん、そのもどかしさは分かる。


「バカ息子。お前には友がいるんだろう? なら何故一人で悩む」


 っと、いきなりヘイトがこっちに向きましたよ。もう傍観者的な立ち位置にいたのに……てか、僕がカケルの役に立つとは全然思えないけど。


「バカ息子、お前のトラウマってのはなんだ? どうすればソレを克服できる? 考えな。考えて考えて考え尽くした先に答えはある」


 意味深なことを言っている。けど、どことなく柊樹さんに似てるって思った。柊樹さんと話すときもそれなりに考えさせられるからね。


「母さん……」

「早くしてくれよ。私には時間がないんだからな」


 お母さんは今も血が流れ続けている。刀が刺さったままだから逆に血は少ないけど……それも時間の問題じゃないかな。うぅ、こういうシチュエーションは初めてだからどーすれば良いのか分かんないよ〜。


「俺のトラウマ……」


 えぇ、これ僕が手伝う必要あるのかな。カケル一人でも大丈夫じゃない?


「なぁ、ナル」

「な、なに?」


 はぁ……なんでこういう時だけ僕を頼るんだよ、このイケメンは。普段、僕から絡んでるじゃん。カケルから話しかけて来ることもあるけど、基本僕じゃん。まぁ、会ってすぐ僕が喋るからカケルが喋れないだけかもだけど。


「俺は、何が怖いんだと思う?」


 カケルの瞳が珍しくも揺れていた。いつもはシャキッとした感じの芯のある感じな感じなのに。僕は語彙力をどこに置いてきたんだろ……とにかく、珍しくカケルは不安定みたい。


「俺は、あのとき……母さんを殺すのに躊躇いはなかった。母さんが笑ったとき、逃げたけど……それは殺し損ねたと思って、逆に殺されるって……」


 いや、そんなことあるかな? と僕は思った。まず僕からしたら親殺しだなんだのところから若干頭が追いついてないのに、殺し損ねたとか逆に殺されるとか言われても、ね。理解できないかなぁ。


「でも、その後母さんが死んでるのを確認したとき怖さは霧散してさ……」


 霧散とか難しい言葉使っちゃって〜、厨二病なの?と反射的に言いかけたけど、ぐっと呑み込む。流石にこの場でふざけるほど空気読めない奴じゃないんだよ。むしろ空気読めるタイプだよ〜♪ って話が逸れちゃってるや。


「俺のトラウマはなんだ……?」


 カケルは僕を見続けたままそこで口を閉じた。これは僕が言わなきゃ始まらないやつかな? むむむ、でも今のカケルに僕が言えることなんて……


「殺すときの快感……?」


 ふと僕の頭に降りてきたこと。「殺すときの快感」なんて僕は知らないけど、最近トレーニング中に柊樹さんが隣で優雅に喋っていた中にその話もあったのだ。確か──


「殺人鬼にはな、殺すときの快感というものがじゃな、クセになってしもうとるのじゃ。一度人を殺せばその時の背徳感、達成感、自尊心などが心を満たす。違法薬物のようにな。それの虜となったのが殺人鬼じゃ。だから、人は一度の過ちでも重罪となるのじゃ」


 その後柊樹さんは、踏みとどまった者はまだ更生の機会があるが、その者たちも結局は心は奪われたままじゃ。とも言ったっけ。柊樹さんはカケルのこと知ってるのだろうか。


「快感…………んなもんなかったさ」


 そう言ったカケルの顔はやっぱりどこか悲しくて辛そうだった。


 ──────────────────────


 ちょっとシリアスな展開……? です!

 カケルのトラウマは明らかにこのシーンが関係してますが、一体……?!


お星様、フォローくれたら嬉しいなぁ、なんて……///

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