ダンジョンボス:妖夢(←一応言いますがパクリじゃないよ。全然別の存在だよ!!

 結局、あーだこーだ話しながらボス部屋の前まで来た。上層、中層にはモンスターはほぼいなかったが下層では何体かいた。カケルに瞬殺されてたけど……


「よーし、行っちゃおー。ナナちゃんはとりあえず僕と一緒に観戦でいいよね。いきなり連携組める?」


 最終確認を念の為する。ナナちゃんの存在はイレギュラーだからね。万が一カケルと柊樹さんで瞬殺できない相手だと連携とか必要になってくるかもだし。


「多分いける。最悪俺は合わせるから、二人の魔法次第だな」

「妾は問題ないぞ。魔法は得意中の得意じゃからの」

「私も多分いける、と思う」


 おっと、僕の心配は杞憂だったみたい。よしなら行こうか。僕はボス部屋の重たい扉を押した。ふぅ、筋トレしてて良かったぁ。


 ボス部屋にいたのは、白い卵型の物体……ってもしやアレは……だとしたらマズイ。


「皆、耳を塞いで!」


 僕は先に部屋に入って行った三人に声をかける。けど、皆「え?」って感じに反応できてない。


「キェェェェーーーー!!!!」


 部屋中に、その甲高く鼓膜を破ろうとしてくる声が響く。耳を抑えてはいるがほぼ意味ない気がしてきた。無防備な状態で食らった三人は……


「柊樹さん?!」


 僕は叫んだ……けど声が届いたのか分からない。でも柊樹さんはこっちを向いてなにかに気づいたのか歩いてくる。


「もう大丈夫じゃよ」


 柊樹さんはそう言って僕の手を耳から外す。一瞬あの声がダイレクトにくる、と思って身構えたけど何もない……あれ、確かにさっきまで。って、耳鳴りがすごい。


「大丈夫かの?」

「う、うん。何とか……」

「それよりお主、何故あの攻撃が分かった? 萌葱たちの状態も分からん。とにかく手短に話すのじゃ」


 柊樹さんの圧がヤバい。今までに無いくらい焦っている。まぁ、それは僕も何だけど……


「あれはね、妖夢だと思う」

「ヨウム?」

「そう。父さんから聞いたんだけど、情報の少ないモンスターでね、対象にその者のトラウマを見せてくるらしいんだ。声を聞かなければいいんらしいんだけど……」

「妾は確かに声を聞いたはず……そうか、トラウマがないからか」


 今さらっと、とんでもないこと言ったなぁこの人。


「お主もそうじゃろう。トラウマと呼べるほどのものがあるか?」


 僕はあんまり昔のこと気にしないタイプかなぁ。疲れるだけだし……


「ほらな。トラウマが無いものには効かぬということじゃ。となると二人は今……」

「夢の中でトラウマと奮闘中、だと思う。安心していいのは妖夢自体は攻撃してこない。トラウマを見させて終わり。目覚めると消えてるらしいってこと」

「ダンジョンからも出れるのか?」

 

 う〜ん、多分。ただ問題はトラウマを克服するまでは起きれないことだね。それと多分その克服するときの感情が妖夢の養分になるんじゃないかな。


「ふむ……しかし困ったの。おそらく此奴等こやつらは暫く起きんぞ。二人のトラウマは相当なもんじゃからな」


 おっと、柊樹さんは二人のトラウマの内容を知っているみたいだ。流石幼なじみ、やるね。ってそうじゃなくて……嘘でしょ、起きてこないの?


「おそらくな……手伝う術はないのか?」

「ないこともないけど……僕らも眠ることになっちゃう」

「よい。背に腹は代えられぬ。どちらにせよ、いづれ餓死するぞ」


 ダンジョン内だろうとも通常の世界と変わるところはモンスターが出るかどうかくらいのものだ。当然お腹も空く。水は魔法で出せるけど食料は無理。


「眠っている人に触れればその夢の中に入れるらしいよ。父さんも昔誰かの夢に入ったらしい」

「そうか……ならば妾はナナをどうにかする。萌葱は頼んだぞ」

「分かったよ。それじゃ、頑張ってね」

「勿論じゃ。互いの健闘を祈る」


 僕はカケルに、柊樹さんはナナちゃんに触れた。その瞬間力が抜け、意識は深い深い闇の中へと…………


 ◇ ◇ ◇


「グハッ」

「弱いのぉ。そんなんじゃあ、死んでしまうぞ」


 意識が戻ると僕は宙に浮かんでいて……その丁度真下で小学生くらいの男の子と白髪をオールバックにした背筋の伸びた老人が木刀を交えていた。


「クソ、ジジイがぁ!」

「ホッホッホッ」


 なんでだろう、男の子にすごく見覚えがある気がする。もしかして──

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