裏話?(←今回は俺──カケルがお送りします
ナルが帰ってから俺は伊織と対峙していた。対峙というほどのものでもないが……ただ、伊織はベッドに俺は椅子に座って話しているだけだ。
「それにしてもお前があっさりチームを組むなんてなぁ。もうちょっと渋るかと思ってたわ」
俺は思ったことを伊織に伝える。これは本当に思った。伊織はもっとプライドなり何なりがあると思っていたんだけどな。
「まぁ、より面白いものを求めるのが柊樹家ってもんでしょ。私もその血を引いてるだけ」
そう言って、微笑む伊織は先程とは段違いだ。口調も『妾』から『私』に変わっている。初めの頃こそ気持ち悪いだの何だの言っていたが今では慣れたもんだ。
「いつかナル君にも素で話したいなぁ」
「ナルなら大丈夫だろ」
内心、君呼びに大爆笑中の俺です。いやマジで面白い。エンターテイナー並だぜ。エンターテイナーあんまり知らんけど。
「まぁ、妾とお主が同じチームになったんじゃ。例え三年生でも勝てはしないと思うぞ?」
「まぁな。世界ランク上位の伊織様がいますもんね」
俺は伊織を茶化す。茶化すが、それは決して嘘ではない。伊織は世界ランク千位くらいの実力者である。ちなみに世界にいる冒険者全体の中でのランクなので数億分の千である。やべーよね。
「世界ランク百位以内のくせに何を言っておる」
「アハハ……何のことやら」
学校の異端児である俺だが世界でも異端児扱いされてる。そもそも刀でモンスターと戦うやつなんて世界を見渡しても俺くらいだ……死にやすいから。近接戦はモンスターの方が強いから。
「お主の師匠とお主はその例外ということよ」
「…………まぁ、いいや。俺は帰るわ」
俺は苦手な人の話になりそうだったので逃げることにした。賢明な判断だと思いたい。
「そっか。なら、また明日」
何気なく投げかけられた言葉。普通なら何もおかしくない言葉……だが、伊織は普通じゃないのだ。学校入学から一週間で不登校、昨日の課外授業も欠席の伊織なんだ。
「失礼だね。まぁ、私が家から出るのも久しぶりだけど……」
「え、明日来るのかよ……本気で?」
「あったり前だよ〜。良かったね、萌葱。こんな美少女が学校に来て」
「いや、俺は女に興味ねぇから。まずお前を美少女だと思ってねぇ」
「ひどーい」
軽口を叩き合いながらも内心は穏やかではない。コイツが学校に来るとどうなるか……というか、コイツが不登校になって先生も歓喜したレベルなのに。はぁ、考えただけでも頭が……
「何とかなるでしょ」
「はぁ……まぁ、ナルは驚くだろうなぁ」
何とかならねぇから、不登校っていう応急処置したんじゃねぇのかよ──と思いながら、俺は柊樹家を後にした。
◇ ◇ ◇
夜、家族も寝静まった頃、私──柊樹伊織──は一人で今日の事を思い出していた。
昼頃まではいつも通りの生活だった。ご飯食べて暇だから氷結魔法で氷像作って遊ぶだけ……暇だな、でも学校行ったら迷惑だしなぁ、って考えてたと思う。
そんないつもの生活に変化が訪れたのは部屋にメイドが入ってきた時だ。メイドたちは私を恐れてなのかよっぽど伝えねばならない事がある時しか部屋に入ってこない。そんなメイドが入ってきたのだ。私はちょっと頬を強張らした。
「萌葱様が放課後こちらに来るそうです。友達が伊織様に会いたがっているとか」
メイドから予想外の言葉が漏れる。どうやら萌葱が来るみたい。それにしても友達……萌葱に友達なんていたかな。いや、記憶上はいないはず。強いて言うならナナちゃんだけど……多分関係に発展はないだろうから別の人かな。
「それでは」
「うむ」
私が返事する前にメイドは退室した。多分私の『妾口調』が怖いし変だとでも思っているんだろうけど……私にも私なりの信念がある。一回お父さんにも叱られたけど止める気はない。
っと、まぁこんな感じで萌葱が来ることを聞いたのだが……私はすごくウキウキで待っていた。本当に私に会いに来てくれる人なんて萌葱とナナちゃんくらいなのだ。え、友達がいないのかって? ふざけんなですわよ。
コホン、失礼しました。とにかく萌葱が来るのをウキウキで待っていた私の下へ遂に萌葱とナル君がやってきました。最初はナル君を見て女の子だと思っちゃったけども、男の子だと分かるとそれはそれは愛らしくて……思わず抱きしめそうになった。
私を人数合わせに誘うなんて度胸があるのもビックリしたけど、あの萌葱がナル君と親しそうにしていたのが一番ビックリだった。だって、ナナちゃんにもぶっきらぼうな萌葱なのよ。誰かと親しくするなんて天地がひっくり返っても有りえないと思っていた。
まぁそんなこんなで驚きで満ちた一日だった。それと明日からは学校にも行こうと思う。先生方には申し訳ないけど、ナル君に会いたいから。多分大変なことになるけど。とりあえず今日一番思ったことは──
「ナル君、可愛すぎるよぉぉぉーー!!!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます