【17回の裏】追い上げるライバル。

6月23日(木)【小原由香ダルトン】


 アメリカ社会は「朝型」である。治安が悪い地域が多く、夜の屋外は危険極まりないため日常の起点が早い時間にシフトしているのだ。そして夏時間サマータイムがあるのもあるだろう。


 沢村の取材を午後からアポイントを取っていたのだが「ゴルフ」ということで取材陣もかけつけることになった。沢村にとってのサプライズはゲストにレイナーズのジョシュ・ミルトンがいたことだろう。彼は同じテキサスに本拠地を持つレイナーズに所属し明日もホームゲームだったのでもとから一緒にプレーする予定だったとのこと。

 

 沢村はあまりゴルフに興味がないとのことだが腕前は確かで、きっちりとフェアウエーをキープできるしロングパットも確実に沈める。正直言って野球を引退したらそちらに行けるんじゃないかと思う。しかもグループで2位で終えた。優勝したのはBJ・アップルトンだったが、最後のパットを沢村がわずかに外しての優勝だった。

あれは明らかにわざと外したよね。


 6月24日(金)


 ヒューストン・アストロノーツは現在ナ・リーグ中地区最下位にあえいでいる。中心選手ペンズ、ポーンが打率や盗塁などで上位にいるが大砲不在と言えるチーム。


 真夏のテキサスは過酷な暑さで知られているが本拠地のメヌエット・メイドパークは開閉式ドームのため屋根を閉めての空調つき。


 沢村は1番左翼手で先発出場。見せ場は3回2巡目の打席で二死無走者から左前安打で出ると今季7つ目の盗塁。まるで「一番打者リードオフマン」のような活躍。5回3巡目でも内野安打で出塁して8つ目の盗塁、得点につながる。しかも左投手相手に2盗塁。完全にモーションを盗んでいた。


 バチスカーフが23号本塁打。


6月25日(土)


 沢村は5番右翼手での先発出場。足の張りを訴えて休養していたデモンズが先発復帰したためだ。(先日のゴルフには参加していたのだが。)ただ沢村は明日が投手としての先発予定のため試合の趨勢すうせいが決まったところで引っ込められる予定。


 初回1点先制した後の二死二塁の場面でいきなりの「申告敬遠」。3回の2巡目では無死二塁一塁。さすがに勝負の模様。フルカウントからの6球目、アウトハイへのスライダーを完璧に捉えた打球は右翼席へ。26号3ラン本塁打。沢村は敵地ファンへ配慮して下を向いたままダイアモンドを一周。


 7回に左前に適時打を打った時点で予定通りに交代。2対9で圧勝を果たす。他試合ではNYYのテシェイラが22号本塁打を放つ。


6月26日(日)


 沢村は9番投手(右投げ)での先発、「リアル二刀流」である。天気は曇りのためデイゲームでも屋根はオープンである。少し気温は高いが湿度がまるで低いので気にはならない。試合は初回からBJアップルトンの11号3ラン本塁打で沢村にとっては楽な展開。とは言え連日の守備の疲れからか沢村もピリッとせず6回4失点。


 ただそれ以上にチームの援護があった。さらには5回の3巡目の打席では自ら27号3ラン本塁打を放って自己援護。6回までに10点の大量得点で勝利の権利を確保。チームんの7対17の大勝に貢献し。自らも6勝目をマーク。チームは4連勝。


他試合ではNYYのテシェイラが昨日に引き続き23号本塁打を放つ。


6月27日(月)


 MLBは移動が過酷だと言われるが、それはチームを追う報道陣も同じ。むしろチャーター機ではなく自分で手配する分より過酷である。


 チームはホームタウンのセントピートに戻りナ・リーグ中地区3位のシンシナティ・ラッズを迎える交流戦インターリーグである。


 ラッズはいまだに日本人選手を獲得したことのないMLB球団の一つである。ただNPBの広島がラッズを彷彿ほうふつとさせるユニフォームを採用しているためか、なんとなく馴染み深さを感じてしまう球団でもある。


 沢村は休養のためベンチスタート。チームも0対5で敗れ出番もなかった。


6月28日(火)


 4番左翼での先発復帰。ただあまり目立った活躍はなかったがチームは5対4で勝利。バチスカーフとテシェイラがともに24号本塁打を放つ。


6月29日(水)


 今日も4番左翼手での先発出場。オールスターゲームの出場者決定を7月3日に控え、2位オルディスとの得票差が100万票以上つき、得票率トップをひた走っている。沢村が球宴出場にこだわるのは「差別対策」でもあるのだ。球審からボールをストライクに取られたり、GMから謎のマイナー行きを宣告されないためでもある。


 沢村は3打数1安打。敬遠が1。チームは3対4で僅差で敗れた。

NYYのテシェイラが25号。歴戦の強打者がじりじりと沢村を追い上げる。


ア・リーグ本塁打

 

沢村(TB) 27

テシェイラ(NYY) 25

バチスカーフ(TOR) 24

グレンダーソン(NYY) 21



今季の沢村健の成績


打撃

(左)打席164 打数132 安打54 単打14 二塁打14 三塁打4 本塁打22 

打点55 四球29(敬遠8死球2)犠打1(犠飛1)敵失1

(右)打席47 打数43 安打17 単打9 二塁打3 三塁打1 本塁打5 打点18 四球4(死球1)


合計 打席211 打数175 安打71 単打23 二塁打17 三塁打5 本塁打27 

打点73 四球33(死球3敬遠8)犠打1(犠飛1)盗塁8 敵失1

打率.419 出塁率.501 長打率1.047 OPS1.556


投手

(左)試合6(先発6)45回 自責点7 防御率1.40 4勝0敗 QS6 被安打25 四球9 三振37 WHIP 0.7556(とても良い)

(右)試合6(先発6)39回 自責点16 防御率3.69 2勝3敗 QS4 被安打37 四球6 三振31 WHIP1.103(良い) 


 


 

 


 

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