【16回の裏】父の日にて。

 6月15日(水)【小原由香ダルトン】


 オールスターゲームの投票でついに沢村が部門トップに立った。もちろん最終的な結果はもう少し先の話になる。もちろん2位でも出場はできる。「2位じゃダメなんですか?」と尋ねる方もおられるかもしれないが、勝負の世界では大きな違いがあるのだ。


 沢村は3番左翼手での先発出場。相手先発はベテラン右腕のバゲット。ただベテランらしからぬ荒々しい投球に翻弄される。沢村に関しては最初の打席で外に外れた4シームをストライクに取られて三振。この球審のとる広めのゾーンにも翻弄された形だ。ようやく8回の4巡目の打席で23号ソロ本塁打を放って意地を見せたが、チームが2安打で抑えられて1対3で敗戦を喫した。「2位」だと審判からも扱いが雑になるというわけだ。ちなみに「打点王」を獲っているが日本とは違い「運が良い打者」というイメージの方が先行するのだ。


 テイシエラ(NYY)が2本塁打を放ち、バチスカーフや僚友のグレンダーソンと並んで2位の21本塁打。


6月16日(木)


 今ア・リーグ東地区首位はボストンで昨日の敗戦で4ゲーム差の3位のレイザースはなんとか食いついていきたいところ。相手投手は昨年17勝を挙げて大ブレイクを果たした右腕バックホー。今季も5勝3敗となかなかの出来。


 その勢いに押されたかレイザースは2対4で敗北し5ゲーム差まで後退。まだ前半戦ではあるがテコ入れは必要だろう。


6月17日(金)


 交流戦インターリーグは同じフロリダ州に本拠地を持つマイアミ・ミーティオスとのカード。前回はアウェイだったが今回はホームに迎えての3連戦だ。ただどちらも人気球団とは言えず「フロリダ・シリーズ」なんて言われ方もしない。


 ジャンカルロ・スタンソンはマイナーリーグ時代から沢村と親交がある。スタンソンの方が一方的にライバル視しているきらいはあるが、それでもメジャー昇格1年目(21歳)で22本塁打は十分に立派である。


 「彼はまぎれもない天才ですよ。」

 沢村のスタンソン評である。彼はは他者に賛辞を惜しまないタイプだが、若さに似合わぬ実績(50本塁打で新人王)が時として「嫌味」を感じさせることがないとは言えない。残念なことではあるが。


 沢村は3番指名打者での先発。相手先発はブラッド・ハード。沢村とドラフト同期で高卒の左腕だ。沢村とは2回対戦していずれも外野フライに仕留められたが5回裏一死二塁一塁の場面での3回目の対戦の直前に引っ込められてしまった。代わったバーデンロップから24号3ラン本塁打。試合も6対1と快勝。


6月18日(土)


  沢村の先発(左投げ)。今季の沢村の「左投げ」は好調のため期待できそう。その「予感」は裏切られることはなく、マックス158km/hの4シームとサークルチェンジ、2シーム、落差40cm超の縦スラを駆使しての凡打ショー。力任せに見える4シームすら4隅をきっちりと突いてくる精度で誰とは言わぬが差別主義者レイシストさえいなければ完全試合だっただろう。今季2度目の完封勝利で5勝目をマーク。


6月19日(日)


 今日は「父の日」。「母の日」のピンク基調のユニフォームに対して水色ペールブルー基調の「変わり」ユニフォームで試合に臨む。すでに父親であるベテラン選手(多くはブルペン投手だが)が自分の子どもたちとのイベントに。クラブハウスでロッカールームやカフェテリアで子どもたちが走り回るのは見慣れない光景でもある。


 抑え投手クローザーのワーズワースやチーム最年長のデモンズなど。またコーチ陣の子どもたちもいる。ただ子どもたちの興味は父親というよりもチームでも一番人気の沢村に。特に女の子たち(と母親たち)は「お目当ての」沢村と会えてご満悦のご様子。

「まあ家族サービスになるのならそれでもいいさ。」

苦笑を浮かべる方も。


 沢村は最年少なので逆に父親との思い出エピソードをアメリカの記者たちからの話を聞かれる。

「父とは短い間でしたが、同じチームでプレーしたことがあります。野球を楽しむことは父の背中を見て学びましたね。」


  沢村は3番指名打者での先発。試合は7回まで両先発の好投で膠着状態だったが8回。先発ウォルスタッドから交代したばかりの右腕のウイーバーの4シームを沢村が右中間への25号ソロ本塁打。それが決勝点になり2対1での勝利。


 ただ翌日から遠征のため、子どもたちとはここでお別れ。


ア・リーグ本塁打(19日現在)


沢村(TB) 25

バチスカーフ(TOR) 21

グレンダーソン(NYY) 21

テイシエラ(NYY) 21


今季の沢村健の成績


打撃

(左)打席143 打数118 安打49 単打11 二塁打13 三塁打4 本塁打21 

打点52 四球23(敬遠6)犠打1(犠飛1)

(右)打席37 打数33 安打12 単打6 二塁打1 三塁打1 本塁打4 打点12 四球4(死球1)


合計 打席180 打数151 安打61 単打17 二塁打14 三塁打5 本塁打25 

打点64 四球28(死球1敬遠6)犠打1(犠飛1)盗塁5

打率.404 出塁率.496 長打率1.06 OPS1.554


投手

(左)試合6(先発6)45回 自責点7 防御率1.40 4勝0敗 QS6 被安打25 四球9 三振37 WHIP 0.7556(とても良い)

(右)試合5(先発5)33回 自責点12 防御率3.27 1勝3敗 QS4 被安打30 四球6 三振26 WHIP1.091(良い) 

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