【15回の表】西海岸は気候が良い。

6月6日(月)


 昨日のうちにアナハイムの宿舎ホテルについて驚いたのはとにかく暖かいこと。平均気温は5℃くらいの差はやはり大きい。同じ時間帯タイムゾーンの地域なのだがワシントン州とカリフォルニア州では全然違う。確かに距離的には札幌と鹿児島くらい離れているわけで当然と言えば当然だ。


 球拾い要員(先発投手陣)のため、俺の打撃練習の順番は早め(大抵ジョニーの次くらい)。打ち終えて球拾いに回ると向こうから報道陣が。だいたいこのタイミングでの取材も多い。


「おーい健ちゃん。先輩のところにはちゃんと挨拶に来なくちゃ。」

元東京Gの左腕投手、高梁さんである。今季アンカーズとは8試合が組まれており、今回がその最終なのだ。ただ報道陣がみな首を傾げる。


「えと、MLBここでは僕の方が先輩なんですけど。」(俺21年9月、高梁さん22年4月デビュー)

「あれ?そうだっけ?」

 お茶目な反応に報道陣が笑いに包まれ和やかな雰囲気に。ヰチローさんの時にはここまで空気が緩むことはない。


 もっとも日本の野球界では先輩後輩は「年齢」主義なことも多い。アメリカではあくまでも「メジャー在籍期間」なのでアメリカとのギャップが面白いのだ。まあこういう「日本的」な絡みはたまには悪くない。それこそ人種や国籍や成績でマウント取ってくる世界では可愛げがあると言っていい。


 試合はこちらがブライス、あちらが新人右腕のチャタレーが先発登板。チャタレーは俺と同じ年のアンカーズのドラ2だ。しかも高卒なので同級生である。


 俺は明日先発投手の予定なので3番指名打者。チャタレーは緊張なのか不調なのかボールとストライクがはっきりする。ただ若さゆえのちょうど良い「荒れ具合」。


 初回は一死三塁から。外にはずれていくシンカーに軽く合わせたつもりがポールから切れるかと思いきや右飛に。ただ犠飛には十分。先制点に。


 ただこちらも攻めきれず、7回5失点と新人先発投手としては十分にイニング稼ぎイーターとしての役割を果たす。高梁さんも8回から登板し2回を無失点で抑える。さすがに荒れ球投手の後にしっかりとしたコントロール投手が出てきたら打てませんね。試合はこちらが1対5で快勝。俺は高梁さんとの対戦は無かった。


 ちなみに今日からドラフト会議。全30球団でのべ1000人以上の選手が指名されるので3日間かかるのだ。


 6月7日(火)


 本日は「左投げ」の日。ちなみに俺は「左右投げ」であって「両投げ」ではない。要は両腕で投げられるよう準備することはない、という意味だ。年間で公式戦が20試合程度の高校野球ならいざ知らず、年間160試合超のMLBで同じ対応はできないのだ。


 相手先発は球宴に2度出場した右腕ダン・ハーレー。

今日は登板間隔が空いたおかげか球の走りがよかった。特に2シームの横変化と縦スラの落ちは十分。


 ただ6回に2番ヘンドリックにインハイの155km/hの4シームを痛打されて2塁打。あのコース打てるのがメジャーでも上位打順の選手なのだ。いや、胸元にあの速度で来た球を打てるか?


 そして進塁打となるゴロを打たれあと4番トーリ・ハント。初球の外角低めに30cmは落ちる縦スラをすくいあげられて左前へ。俺がインハイ打たれたのを気にしてアウトローに落としてくることを完全に読まれていた。あれが打てるなんて相手が悪かったとしか言いようがない。


 ただ、失点はこれだけで8回1失点で4勝目を挙げる。


6月8日(水)


 最終日だがナイトゲーム。それは明日が「移動日」(休日)のためだ。もちろん試合が終わったらすぐにセントピートに戻るんだけどね。夜中の移動とナイトゲームの後のデーゲーム、どちらがつらいかと問われたら間違いなく後者なのだ。


 先発投手はこちらがフィールズ、あちらが昨年球宴初出場を果たしたビーバー(右腕)である。俺は3番指名打者での先発出場。残念ながらビーバーから安打は打てなかったが、チームが8回に3点を取り、なお二死三塁、次の打者が俺というところで投手交代。左投手のドーソンに。そういや今季は対左投手の右打席の成績はあまりよくなかったっけ。(でも3割は打っている)。


 ちょっとイラっときたので魔法を重ね掛けして臨む。ここで打たないと両打ちスイッチヒッターやめて左一本で行けとか言われそうだし。ただ相手もストライクとボールがはっきりわかるレベル。3球目のスライダーが真ん中に入ってきたところをセンターへと打ち返す。それがフェンスを越えての21号2ラン本塁打。


 5点差になり、フィールズを引っ込めたその裏に3点返されていたので打って正解の本塁打。3対5で3勝利し、3タテスイープで長期遠征を終えることができた。明日は休日。プールでゆったり泳いで疲れを抜いたらなにしよう?


 とりあえず亜美と会話しておこう。


 

 今季の沢村健の成績


打撃

(左)打席118 打数95 安打43 単打10 二塁打11 三塁打4 本塁打18 打点46 四球21(敬遠6)犠打1(犠飛1)

(右)打席32 打数28 安打10 単打5 二塁打1 三塁打1 本塁打3 打点9 四球4(死球1)


合計 打席150 打数123 安打53 単打15 二塁打12 三塁打5 本塁打21 打点50 四球26(死球1敬遠6)犠打1(犠飛1)盗塁5

打率.431 出塁率.527 長打率1.122 OPS1.649


投手

(左)試合5(先発5)36回 自責点7 防御率1.75 3勝0敗 QS5 被安打23 四球7 三振30 WHIP 0.8333(とても良い)

(右)試合4(先発4)25回 自責点11 防御率3.96 1勝3敗 QS3 被安打23 四球4 三振18 WHIP0.8800(とても良い) 

 


 

 

 


 


 


 

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