万年補欠の下克上！（第4期）はずれスキル「支援魔法（対単体）」しか持たない低辺勇者は野球少年に転生してメジャーリーグで無双する。

6月は躍進の匂い。

【14回の裏】コーヒーとドーナツの街で。

　６月３日（金）【小原由香ダルトン】

　MLBでの日本人対決。日本の在米マスコミとしてはこれがいちばん盛り上がるコンテンツの一つである。しかも日本が誇る天才打者ヰチローと二刀流の新星沢村だ。

「昨日は行けたのか？良い寿司屋だったろ？」

「はい、ご紹介ありがとうございました。僕も回ってない寿司は久しぶりで。」

「お前北陸とか北海道の地場チェーンの回転寿司のうまさを知らんだろ。そういえばこのカードの先発はないの？」

ヰチローと沢村の「ストレッチ会談」は割と名物化している。　

「ないですよ。しかも今日は新人（若い子）が投げるんで（次の登板予定は）伸びるかもです。」

「『若い子』て。言うてお前がいちばん若いだろうに。」

「そこは芸能界と一緒でデビューが早い方が若くても『兄さん』ですし。やっと卒業したんですよ、『ドリンク当番』。うちは先発投手陣のヤング二人の仕事なんで。」

「そりゃおめでとう。ってヤングって『昭和』かよ。」

「……それがですね。今度は野手組から呼ばれまして。お前は野手組のヤングだから次はこっちの当番を手伝えって。」

　二人を取り囲む報道陣も「ヤング」に「ツボった」ようで笑いが広がる。ヰチローが単独で愛想よく報道陣にサービスするのは得てして珍しいが、若い選手と対した時は和やかな雰囲気を醸（かも）すことが多い。

　今日はヰチローが１番右翼手、沢村が４番左翼手でそれぞれ先発出場。ただ両者ともに無安打でぱっとせず。試合はシアトルが７対0で完勝。

６月4日（土）

　シアトルはアメリカでもカナダにほど近い北部にあるため夏に入っても日中20℃を少し上回る程度。陽射しもあるにもかかわらずだ。なのでなるべくデーゲームでということになる。

　沢村への囲み取材。

　「今日はカフェテリアに行きました？無料でドーナツがサービスらしいです。さすがに本場のドーナツは美味しそうでしたね。昨日（6月第1金曜日）が『ドーナツの日』だったそうです。理由は知らんけど。」

　シアトルは某有名コーヒーショップチェーンの本拠地なのだが、アメリカ国内で有名なドーナツショップのチェーンもある。「美味しそう」ってことは食べてはいないのか？

「あまりアスリートの身体には良くない食品なのですが、見た目の誘惑に負けたのとせっかくのご厚意を無下にするのも嫌なので、一つだけいただきました。ただめっちゃ美味しくて二つ目を我慢するのが大変でした。ドーナツ屋さんのお姉さんもきれいな人でしたよ。報道陣の方も提供元を記事や放送で紹介してくれるなら無料みたいですよ。」

　店の名前も聞いたがシアトルに本拠地を置く地元の有名チェーンのドーナツ屋さん。後でもらいに行こう。

　試合はヰチローが１番右翼手、沢村が3番左翼手での先発出場。「ドーナツ効果」なのか沢村は2回表の2巡目の打席、3点先制してなお一塁から追加点をさらに加える20号2ラン本塁打。2対5でのチームの勝利に貢献した。

6月5日（日）

　シアトル最終戦。夏休みに入った子どもたちの姿が目立つ。敵地（アウェイ）にも拘らず沢村の子どもたちからの人気は高い。現地の日本人の子どもたちはもちろん人種を問わない人気だ。

　本塁打王争いに絡む成績もさることながら、「日本的イケメン」である彼はアメリカでは「童顔（ベビーフェイス）」に当たるので子どもたちは圧倒的に親近感を感じるようである。

　練習前の時間を使ってサインをする姿もなかなか堂に入ってきた。

　試合は昨日と同じく3番左翼手での先発出場。両チームの先発投手が共に乱調で乱打戦に。9対6でシアトルが打ち勝った。レイザースはこのカードを1勝3敗と負け越し。

　沢村も打線の中軸を任されながらも結果が出せず。「一旦休憩（コーヒーブレイク）」となってしまった。

次の遠征先であるカリフォルニア州アナハイムへと向かった。

　今季の沢村健の成績

打撃

（左）打席111　打数90　安打42　単打10　二塁打10　三塁打4　本塁打18　打点43　四球21（敬遠6）

（右）打席31　打数27　安打9　単打5　二塁打1　三塁打1　本塁打2　打点7　四球4（死球1）

合計　打席142　打数117　安打51　単打15　二塁打11　三塁打5　本塁打20　打点50　四球25（死球1敬遠6）盗塁5

打率.436 出塁率.535　長打率1.128　OPS1.663

投手

（左）試合4（先発4）28回　自責点6　防御率1.93　2勝0敗　QS4　被安打18　四球7　三振24　WHIP 0.8929（とても良い）

(右）試合4（先発4）25回　自責点11　防御率3.96　1勝3敗　QS3　被安打23　四球4 三振18　WHIP0.8800(とても良い）