【14回の表】友の月間新人王。

5月30日(月)


 今日はアメリカの祝日「メモリアルデー」である。アメリカの独立戦争をはじめとして祖国のために命を懸け捧げた軍人、そしてその家族たちへの感謝の日である。


 日本では「戦争そのものが悪」というもう一方の真理の方が強調されているため馴染みがない記念日ではある。かつて転移世界で「魔族」との戦いを経験した身にとっては親近感は深い。戦争に大義があるかどうかは別として、それに巻き込まれる青年達には選択肢というものが存在しなかったのだ。その時代が少しでもずれれば巻き込まれたのは自分かもしれない。


 ドーム球場のため花火や航空ショーのような派手な演出はできないが(ドーム球場がアメリカで不人気な一つの要因ではある)軍楽隊が演奏し、軍人さんが歌い上げる(歌うのがくっそ難しい)国歌には心にしみるものがある。


 ちなみにアメリカ人にとっては「夏の到来」を告げる日という位置づけの人が多い。


 昨年とはまた違う「ミリタリーカラー」のキャップとユニフォームを着ての試合だ。今日から昨季ワールドシリーズ覇者テキサス・レイナーズ(ア・リーグ西地区首位)を迎えての3連戦だ。


 「よお健、元気でやってたか?まあ相変わらずえぐい成績だから問題はないか。お前が二刀流でホントに助かるよ。」

 昨季ほどではないがジョシュ(・ミルトン)は良い成績を続けている。


 今日は7番指名打者。相手先発ロランドが左腕だから、ということと明日は俺が先発投手の予定だからだ。


 確かにMLBは左腕投手サウスポーが少ないから必然的に右打席は少ないのであまり右打席に立つことが少ないせいなのか、右は打てないとベンチに思われているのかもしれない。


 ロランドはシンカー(というか左腕なので日本では「スクリューボール」と呼ばれる)を多投してくる。同じ軌道の曲がり方ではないのでいくつかの種類をもっているのだろう。ただ2巡目の打席で2ラン本塁打の18号。(右は3本目だ)。


 ただ先発のウェズが思ったより打たれてチームは4対10で敗戦。やはりチャンピオンチームは侮りがたい。バチスカーフ(20本)とグレンダーソン(16本)に本塁打はなかったがヤーナーズのテシェイラが16号本塁打を放って本塁打王争いに参入の構えだ。


 5月31日(火)


 1回先発を飛ばされたのでひさしぶりの先発投手(右)。休養十分のためか肩が思いのほか軽かった。


 今日は力任せの速球勝負は避けて、速度を155km/h前後に抑えてしっかりと回転をかけての投球。


 ただ2回表、ジョシュに球筋を見極められて四球になり、ゴロアウト2つで1失点と嫌な点の取られ方をしたものの、その後は落ち着いて投げられたのが功を奏して7回1失点でレイナーズ打線をしのぎきっての勝ち星。やっと3勝3敗。5月最後の日に5月の初勝利を挙げた。連日「右」の俺が活躍したことになる。


 ちなみにヤーナーズのグレンダーソンが17号本塁打。


 レイザースは5月に14勝13敗で、トータルでは29勝25敗となり、地区首位ヤーナーズとは1.5ゲーム差の3位となった。


 6月1日(水)


 休養のため先発落ち。代打で呼ばれるのを待っていたが、さしたるチャンスもなくチームが0敗。そのままチームは遠征先のシアトルへ。


6月2日(木)


 MLBが5月の月間MVP(投手/野手)と月間最優秀新人賞を発表。なんとヘル吉がア・リーグの「月間MVP(投手)」と「月間新人王」のダブル受賞に。彼の5月の成績は4勝1敗、33イニングを投げて自責点5(防御率1.36)、そして23奪三振。対戦打率.168に抑えた。ホームに帰ったら表彰式ということになった。


 「お祝いはお寿司でいいよ。」

ヘル吉よ、この前プロ初完封のお祝いをしたばかりやないか。シアトルなら日本の寿司職人もいるやろ。シアトルと言えば日本球界のレジェンド、ヰチローさんである。ヰチローさんに良いところがないか教えてもらおう。


 ただかなり大勢の日本人の報道陣でなかなか話しにくい。恒例の「ストレッチ会談」で話を聞くことに。

「健、お前そんなに筋肉つけて身体曲がるんか?」

ヰチローさんと俺のやり取りに報道陣も興味津々である。

「ご心配には及びませんよ。十分に曲がりますよー。ほらほら報道陣のみなさんもご一緒にいかがですか?痛くしませんよー。……そんなには。」

俺が「笑顔」で巻き込もうとすると大抵「包囲網」が緩むので、そこでやっと相談できるのだ。日本人が営む老舗のお寿司屋さん(ご夫婦行きつけ)をご紹介いただきました。


 今日はフィールズとフェリクス・フェルナンデス(昨季サイ・ヤング賞)の「エース対決」。俺は6番左翼手での先発。ただ先発投手のフィールズがぱっとせず序盤で4本塁打を浴び7失点と乱調ですでにベンチはあきらめムード。6回表にフェルナンデスの150km/hのシンカーを右翼席へ19号3ラン本塁打を俺が放ったものの時すでに遅く、8対4で緒戦を落とした。


 ただ、日本人職人が握る寿司はとにかく美味しかった。試合後で遅い時間だったのに予約に応じたお店には感謝だ。


 

今季の沢村健の成績


打撃

(左)打席106 打数85 安打40 単打10 二塁打9 三塁打4 本塁打17 打点40 四球21(敬遠6)

(右)打席24 打数20 安打9 単打5 二塁打1 三塁打1 本塁打2 打点7 四球4(死球1)


合計 打席130 打数105 安打49 単打15 二塁打10 三塁打5 本塁打19 打点47 四球25(死球1敬遠6)盗塁5

打率.467 出塁率.569 長打率1.200 OPS1.769


投手

(左)試合4(先発4)28回 自責点6 防御率1.93 2勝0敗 QS4 被安打18 四球7 三振24 WHIP 0.8929(とても良い)

(右)試合4(先発4)25回 自責点11 防御率3.96 1勝3敗 QS3 被安打23 四球4 三振18 WHIP0.8800(とても良い) 


 



 

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